SCANDAL インタビュアー:ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)|絶対的ヒーローをやめた4人が手に入れたもの

アコースティックへの挑戦と引き算の美学

──このアルバムで皆さんそれぞれが一番がんばったところや思い入れのあるところ、苦労したところなどがあれば聞かせてください。きっとファンの人も聞きたいと思うので。

TOMOMI 私はやっぱり「ランドリーランドリー」かな。SCANDALでアコースティックをずっとやりたかったんですけど、なんかどういうふうに表現したらいいのか、何を求められているのかがわからなかったんです。でもSCANDALを長く続けていくうえで、今後いつかそういうサウンドが必要になるときがあるだろうなと確信めいた思いがあって。「ランドリーランドリー」という曲ができて、武田(祐介)さんにアレンジをお願いしたんですけど、そのときに「アコースティックに興味があるけど今はまだそのタイミングじゃないかもしれない」みたいなことを世間話程度に話していたんですよ。そしたらこのアレンジが返ってきて、すっごいうれしかったし、武田さんが「今やるべきでしょ」と背中を押してくれたんだろうなと思って。この先のバンド生活を考えたのは今回の制作が初めてだったかなと思います。

──そういう経緯があったんですね。

SCANDAL

HARUNA その流れでいうと私は「ランドリーランドリー」「NEON TOWN ESCAPE」「月」で初めてアコギに挑戦したんです。今までアコースティックに対する苦手意識があったんですよね。自分がアコギを弾けたら楽曲の制作もそうだし、ライブの演出面でも幅が広がるのはわかっていたけどなかなか踏み出せなくて。でもアコギの音が似合う曲が自然と上がってきて「今やるべきだ」と挑戦しました。もちろん難しさもあったけど、できたことへの達成感もめちゃくちゃあって、何より楽しかったし、自分の自信にもつながりましたね。

──その苦手意識って何が大きかったんでしょうね? 技術的なことですか?

HARUNA うーん、技術的なところが一番大きいと思う。でもTOMOMIと同じように、30歳を越えたSCANDALがどういうふうに活動していくのかを考えたときに絶対に必要なことだと考えて、このタイミングしかないと思って挑戦しました。

──アコースティックの要素を手に入れて、ある種バンドマンとして2WAYを得たということですよね。MAMIさんはどうですか?

MAMI 「ランドリーランドリー」ではアコースティックの中にいるエレキの役割を考えましたね。みんなと同じように私もあまりアコースティックに触れてこなかったのでイメージが湧かなくて。武田さんのアレンジを聴いて「なるほど、この曲に対してはこれが正しいのか」とすごく新鮮だったし、なかなかうまくいかなくて苦労もしたし、思い入れがありますね。「NEON TOWN ESCAPE」は我慢するときと最後のみんなでワチャワチャしているソロ回しのテンションの違いというか、その塩梅をすごく考えました。

──僕は今回の取材のためにアルバム1曲ずつ感想程度のメモを取ってきたんですけど、「NEON TOWN ESCAPE」のところには「全然ギターが鳴ってなくて最高。こういう曲をもっとやってほしい」って書いてあります(笑)。

MAMI (笑)。4人で作ったデモの時点で全然ギターが鳴ってなかったんだよね。

ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)

──それがね、このアルバムにすごくいいコントラストを生み出しているんですよ。こういう足し引きみたいなものがSCANDALはこれからきっとどんどんうまくなっていくと思う。モータウンビートみたいな「記念日」もあるけれど、そうじゃない大人っぽさとか、テンション的にムーディな感じみたいなものをきっと出せるようにもなるし、そういうものが4人に合うようになっていくんだと思いましたね。

MAMI デモでは1人じゃ弾けないぐらい盛っちゃうところがあるんですけど、今回は引き算についてアルバムを通してすごく考えましたね。

──おっしゃる通り引き算の美学をすごく感じましたよ。特にギターから。RINAさんはどうですか?

RINA ドラムに対してすごく伸び悩んでいたんです。この数年ずっと。それでプレイに向かうことへのしんどさみたいなものがありましたね。

──それは演奏や自分の出来高に対して?

RINA そう。そこを乗り越えるレコーディング期間でもあったなとすごく思う。ドラムがもっとうまくなりたいとずっと思ってたなって。

──それはミュージシャンとしては楽しいけどしんどいやつですね。もちろん瞬間的には解決しないじゃないですか。でも今回の制作を通して自分のプレイに対してちょっとでもいいなと思えるところはありましたか?

RINA 意外とカッコいいなと思えた部分もあったし、ここがもうちょっとこうできたらよかったなみたいな欲も増えたと思う。それに自分がもっといいプレイができたらバンド全体がさらによくなるんだろうなと感じて悔しい気持ちにもなりました。

──それは今後ずっとあるけど、うまく転換していかないとやりたくないで終わって潰れちゃうじゃない。だから次がある感想で安心しました。

RINA このアルバムを作ってドラムへのモチベーションが上がりましたね。あと今回は作詞の面でも成長した自負があって。一番時間がかかったのが「マスターピース」。デモではストリングスが入ったキレイなアレンジで、言葉をはめるのにすごく苦戦したんですよね。SCANDALは全員が曲を作るし歌詞も書くけど、今は自分がいっぱい歌詞を書く時期だと思っているのでやりとげました。それで、MAMIからどんな曲が送られてきても絶対に言葉を付けようと決めた。

──ほう。それは強い意志ですね。

RINA 弾き語りが送られてきても、「この雨音に歌詞を付けて」って言われても付けるぐらいの気合いがある(笑)。何が来ても絶対に返そうとホンマに決めた。

──ドラマーとしての葛藤よりも、歌詞の面のほうがリスナーには伝わりやすいじゃないですか。そういう二面を背負っている方はあまりいないでしょうし、かたやちょっと言葉を借りれば伸び悩んでいて根本的には解決していないのと、かたや何が来ても付けてやろうと思えたというある意味プラスなものがどちらもあって。どっちもいいとか、どっちもよくないだったらモチベーションを保つのが難しいと思うんですけど、今回はどちらもあってよかったですね。

RINA そうですね。

これからも勝手に見ていようと思います

──締めになりますけど、僕はSCANDALの今までの活動を見たり今回のアルバムを聴いたりしていて、これまで葛藤もあったんだろうなと思ったんです。それは安易に汲み取ったのではなく、やっぱり同じような経験を自分もしているからで、そんなシンパシーを感じてうれしかったです。客観性を手に入れたSCANDALは、バンドとして歯車が増えた状態だと思うんですよ。駆動部分が増えて強くなったんじゃないかなと。レーベルの立ち上げにはきっと僕らに計り知れない努力もあっただろうしね。SCANDALには引き合いに出すようなバンドはいないし、その必要もない。SCANDALは4人がそのジャンルだと思う。だから自由にやれる場ができたのは本当によかったですよね。ここからのSCANDALは何をやってもカッコよくしかならないと思う。だからとても楽しみですね。

TOMOMI ありがとう。

──このアルバムはもちろんカッコよかったし、SCANDALにとって革命的だと思います。リリース後にはツアーがありますが……あれ、この感じ、すごくライターさんっぽくないですか?(笑)

SCANDAL (笑)。

──ライブではきっと全然違うものになっていくと思いますよ。今後、SCANDALがどういう出で立ちになっていくのかこれからも勝手に見ていようと思います。

RINA 最後にめっちゃ突き放されたなあ(笑)。でもこんなにじっくりアルバムを聴いて感想を持ってくれて本当にうれしかったです。私にとってハマくんは高校の先輩でもあって、学校で楽器を弾いているのも観ていたから、そういう人が同じ音楽シーンでやってきて、こうやってまた話せる機会があってうれしい。あと、OKAMOTO'SってSCANDALの音楽は聴いてないと思ってた(笑)。

──あはは(笑)。新譜が出るたびに聴いてるんですよ。意外と。

SCANDAL ツアー情報

「SCANDAL WORLD TOUR 2020 "Kiss from the darkness"」
  • 2020年3月7日(土)神奈川県 厚木市文化会館
  • 2020年3月14日(土)北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)
  • 2020年3月21日(土)福島県 いわき芸術文化交流館アリオス 大ホール
  • 2020年3月22日(日)宮城県 トークネットホール仙台 大ホール
  • 2020年3月28日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2020年3月29日(日)愛知県 江南市民文化会館
  • 2020年4月4日(土)石川県 本多の森ホール
  • 2020年4月5日(日)新潟県 新潟テルサ
  • 2020年4月10日(金)京都府 ロームシアター京都 メインホール
  • 2020年4月11日(土)広島県 上野学園ホール
  • 2020年4月17日(金)福岡県 福岡市民会館
  • 2020年4月18日(土)熊本県 熊本県立劇場 演劇ホール
  • 2020年4月25日(土)東京都 NHKホール
  • 2020年4月26日(日)東京都 NHKホール
  • 2020年4月29日(水・祝)群馬県 ベイシア文化ホール 大ホール
  • 2020年5月2日(土・祝)鳥取県 米子市公会堂
  • 2020年5月3日(日・祝)岡山県 岡山市民会館
  • 2020年5月5日(火・祝)大阪府 オリックス劇場
  • 2020年5月6日(水・振休)大阪府 オリックス劇場
  • 2020年5月23日(土)韓国 ソウル WEST BRIDGE LIVEHALL
  • 2020年5月30日(土)シンガポール The Coliseum™, Hard Rock Hotel Singapore, Resorts World™Sentosa
  • 2020年6月6日(土)フィリピン マニラ New Frontier Theater
  • 2020年6月13日(土)タイ バンコク Lido Connect (Hall 2)
  • 2020年6月21日(日)香港 MacPherson Stadium
  • 2020年9月4日(金)フランス パリ YOYO - Palais de Tokyo
  • 2020年9月6日(日)イギリス ロンドン O2 Academy Islington
  • 2020年9月9日(水)ドイツ ベルリン Musik & Frieden
  • 2020年9月17日(木)アメリカ カリフォルニア州 アナハイム HOUSE OF BLUES
  • 2020年9月19日(土)アメリカ テキサス州 ダラス Canton Hall
  • 2020年9月21日(月)アメリカ ジョージア州 アトランタ The Masquerade
  • 2020年9月23日(水)カナダ トロント Queen Elizabeth Theater

OKAMOTO'S ツアー情報

「90'S TOKYO BOYS in HALL "History"」
  • 2020年5月15日(金)東京都 中野サンプラザホール
  • 2020年5月17日(日)兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
  • 2020年5月21日(木)愛知県 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
SCANDALとハマ・オカモト(OKAMOTO'S)。