三日月から満月に

──デビュー曲「ミカヅキ」のミュージックビデオには3人のさユりさんが交互に登場します。もともとこの曲はどういった思いから生まれたものでしょうか。

さユり　これは、自分が抱えている劣等感や不完全な部分があっても、進んでいきたい、自分を信じたいと思った気持ちが歌になったものです。例えば人が「月がきれい」って思うときの「月」はたいてい満月で、三日月は欠けてる存在で満月のように完全ではないけど、あるとき「三日月はいずれ満月になる存在じゃないか！」ってハッと気付いて。それからなかなか曲が進まなかったんですけど、今年の初めに「それでも」って言葉がやっとでてきて、一気に書き上げました。

YKBX　MVの映像はたぶんさユりちゃんがイメージしてたものや見ていた風景とはちょっと違うシナリオになってます。さユりちゃんが持ってる世界観を表現しているという点ではリンクしているんですけど。

──MVはどういうふうに作られたんでしょうか？

YKBX　キャラクターを描いてるときに楽曲が送られてきて、そこから考え始めました。曲によるんですが、僕は映像を作るにあたってまず音をすごく聴いて、歌詞は読みすぎないようにすることがあって。イメージが引っ張られるのを避けるというか、歌詞をなぞるように作っちゃうと表現の幅が狭まってしまうんですよね。だから今回もなるべく自分の中でストーリーを1回構築し直して、大きい流れを作るっていう……過大解釈みたいな感じですかね。

さユり　自分の内面を映像にしていただけたってところでもうとにかくうれしいです。メジャーデビューシングルの映像作品として本当にバッチリでした！

さユりのビジュアル

──実際にどんな流れでキャラクターや設定を完成させていったんでしょうか？

YKBX　さユりちゃんと話しながらセッションするような感じですね。彼女だけじゃなくて僕も僕で意見を出すから、アイデアを投げ合ってるみたいな。そのとき投げたのはもしかしたら違う玉かもしれないけど、多少のズレは楽しめるくらいになってればいいなっていうのもあったかもしれないですね。

──YKBXさんのスタイルとしてその進め方はわりとスタンダードなものでしょうか？

YKBX　どうなんでしょう。例えばamazarashiの場合は秋田（ひろむ［Vo］）さんが青森に住んでるってのもあって、体感的には文通のような感覚でメッセージをやりとりしてイメージを膨らませていくっていう進め方なんですけど、さユりちゃんの場合はプロジェクトの序盤からこちらも意見を出して直接ひんぱんにやり取りするので少し性質が違って、より近い関係性が築かれているかもしれません。

──衣装もYKBXさんがプロデュースしているんですか？

さユり　そうなんです。ポンチョ自体はもともと私が雨が好きっていう理由で本物のレインコートを着てたんですが、今着ているもののデザインはYKBXさんにしていただきました。

YKBX　ポンチョはポンチョなんですけど、このヒビ割れパターンっていうのはアスファルトをイメージしてて。さユりちゃんはそのアスファルトに立ってるというイメージで作っているんです。もうちょっと深い意味があるんですけど、そこは……。

──のちのち明かされていく？

YKBX　はい。

──楽しみです。黄色いギターもYKBXさんがデザインを？

YKBX　はい。黄色っていうのは、わりと生命力っていうか、あと光とか、そういうイメージがあって。

さユり　「わ、黄色だ」って思いました。黄色のものを身に付けることがなかったんですが調べたら「一番注意を引く色」って書いてあって「路上ライブにピッタリじゃん！」って。ありがとうございます（笑）。