言葉の響きがよければOK
──新録曲で言うと、5曲目の「Club KI3ε」がすごくよくて。ガッツリ踊れるサウンド感はタイトル通り、クラブでも流されそうですよね。
これはよりデジタルなサウンドを意識して作ってった感じでしたね。ボーカリストのアプローチに関しても、わりと自分が洋楽から影響を受けている、好みの感じに仕上がったなと思っていて。それはもちろんボーカルのGemieさんの力あってこそのことだとは思うんですけど。
──リリックはすべて英語で、Benjaminさんとmpiさんによるものです。内容的にもクラブライクなものになっているんでしょうか?
ベン(Benjamin)がなんか言ってたな。クラブで女の子がどうしたこうした、みたいな。そりゃそうですよね、タイトルに“Club”って書いてありますから(笑)。キスはしてんのかな、してないのかな……ってくらい僕の中ではふわっとしてますね。あははは(笑)。
──え、そんな感じですか?(笑) 作詞家の方に内容のオーダーをしたりは?
僕は基本的に歌詞もサウンドとして捉えてるので、言葉の響きがよければOKなんですよ。要望を出すにしても内容ではなく、「メロディのこの部分にはアクセントの強い言葉を持ってきてほしい」みたいな感じなので。だから内容はあとで知る、みたいなことも多いんですよね。ちゃんと把握しとけよって感じですけど(笑)。もちろんタイアップ曲に関しては、その作品の世界観から外れないようにっていう伝え方をするので、ふわっとしてていいのはアルバム曲だけです。
──歌詞もサウンドの一部として、意味よりは響きを重視するところもまた洋楽っぽい雰囲気もありますよね。
そうそう。洋楽って、歌詞をよく見てみたらすげえくだらないこと言ってたりするじゃないですか(笑)。でも音としてはすごくカッコいいから自然と聴けちゃうっていう。自分の曲に関してもそういう点を重要視してるところはあるのかもしれないですね。
──じゃあ同じくアルバム曲の「VV-ALK」はどうですか? これは澤野さんの日本語詞とcAnONさんによる英語詞が共存しているタイプですけど。
あ、「VV-ALK」に関しては、自分が先に日本語の部分を書いていたので、そこに込めた思いとかはちゃんと説明したうえで、それを膨らませて書いてくださいっていうお願いはしてます。僕がほかの作詞家の方と共作するときはそういう流れですね。
ぶらぶら歩いて目的地に到達したい
──表記は若干異なりますけど、この曲はアルバムのタイトルナンバーという位置付けだと思います。冒頭で「アルバムタイトルには自分なりの意味付けがある」とおっしゃっていたので、そこについて伺えればと思うのですが。
僕は邦楽アーティストで言うと、CHAGE and ASKAさんにすごく影響を受けているんですけど、彼らには「WALK」という曲があるんですよ。これはちゃんと合っているかわからないんですけど、チャゲアスは「万里の河」などのヒットがありましたが、その後、ライブやテレビでの活躍がある中でもあまりヒット曲に恵まれていない時代もあり、いろんな試行錯誤をしていたらしいんですよね。世の中のヒット曲に寄せたような曲を作ってみたりとか。でも途中で、やはりリリースするんだったら自分たちの信じる音楽を作ったほうがいいんじゃないかって思ったそうなんですよ。で、その頃にできたのが「WALK」という曲だったみたいなんです。
──はい。
結果的にはその曲も発売時はすごくヒットしたわけではなかったんですけど、でも自分たちを信じて活動し続けたことで後の「SAY YES」につながっていったんですよ。しかもそこで多くの人に注目されたことで、再リリースした「WALK」もまたすごく評価される曲になったっていう。ASKAさんの信念や姿勢に、僕はものすごく勇気付けられたし、ハッとしたんですよね。チャゲアスとは全然立場は違うけれども、同じ音楽をやっている身としては「そうあるべきだな」って。
──その思いの象徴としてタイトルを引用したと。
そうなんですよね。あとは、夢に向かっていくときって“歩く”よりは“走る”って言葉を使いがちじゃないですか。確かに走ったほうがそこにたどり着くのは早いかもしれないですけど、走っていたら過程の景色があまり見えないイメージもある。だったら僕は景色を見ながらぶらぶら歩いて目的地に到達したいなと思ったんですよね。日々の生活でもそうだし、音楽活動においてもそっちのほうが僕には合ってるなって。だから「2V-ALK」ってタイトルにしたところもありました。アルバム曲の「VV-ALK」では、今お話ししたようなことをcAnONさんに伝えて英語詞を書いてもらったりもしたんですよね。当然、日本語のところには僕の思いが入ってますし。相変わらず何言ってるかわかんない歌詞かもしれないですけど(笑)。
──すごくいいお話だと思います。ただ、澤野さんは今年の活動だけみても猛烈な仕事量なのでぶらぶら歩いてるようには見えなかったりもするんですけどね(笑)。むしろ走ってるんじゃないか、くらいな。
そう見えるかもしれませんねえ(笑)。それも別に意図してそうなったわけじゃないんですよ。「CD出したくてどうしようもないんだ!」みたいなことではないんですけど(笑)、たまたま幸いなことにいろいろなお話をいただけているので。ありがたいことなんですよ。
──要は人生という長いスパンで見たときに、じっくり地に足を付けて活動できるかってことですよね。
そうですそうです。それもね、ものすごくスローってわけじゃなく、あくまでも自分のペースでっていうことが大事。それを“ウォーク”と表現するならば、今の僕はしっかり歩けているなって思います。
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こんなすごい人たちと一緒に音楽ができてるんだな
- SawanoHiroyuki[nZk]「2V-ALK」
- 2017年9月20日発売 / SACRA MUSIC
-
初回限定盤 [CD+Blu-ray]
4536円 / VVCL-1098~9 -
通常盤 [CD]
3240円 / VVCL-1100
- CD収録曲
-
- 1ntr0duct10n
- Amazing Trees / by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
- gravityWall / by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle & Gemie
- e of s / by SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki
- Club Ki3ε / by SawanoHiroyuki[nZk]:Gemie
- VV-ALK / by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
- rabBIThole / by SawanoHiroyuki[nZk]:Yosh
- ninelie / by SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer
- sh0ut / by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle & Gemie
- ViEW / by SawanoHiroyuki[nZk]:mizuki
- mio MARE <2v-alk_v> / by SawanoHiroyuki[nZk]:Yosh
- CRYst-Alise / by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
- Next 2 U -eUC- / by SawanoHiroyuki[nZk]:naNami
- HERE I AM <2v-alk_v> / by SawanoHiroyuki[nZk]:Gemie
- Into the sky / by SawanoHiroyuki[nZk]:Tielle
- pian0s0l0
- ëmot1on ※BONUS TRACK
- 初回限定盤Blu-ray収録内容
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Slave of Love TOUR 2017 at Shibuya WWW
- 「Into the Sky」MUSIC VIDEO
- 「gravityWall」MUSIC VIDEO
- 「sh0ut」MUSIC VIDEO
- 「e of s(game edit)」MUSIC VIDEO
- 「澤野弘之 LIVE[nZk]004(2016/11/03@TOKYO DOME CITY HALL)」ライブ映像
SawanoHiroyuki[nZk] LIVE「2V-ALK」
- walk the A line
- 2018年2月5日(月)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- walk the B line
- 2018年2月6日(火)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- 澤野弘之(サワノヒロユキ)
- 1980年生まれ、東京都出身の作曲家、編曲家。「医龍」シリーズやNHK連続テレビ小説「まれ」、「アルドノア・ゼロ」「進撃の巨人」「キルラキル」「機動戦士ガンダムUC」シリーズなど、ドラマ、アニメ、映画など映像作品のサウンドトラックを中心に、楽曲提供や編曲をするなど精力的に音楽活動を展開している。2014年春からはボーカル楽曲に重点を置いたプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]を始動。その第1弾作品として「機動戦士ガンダムUC」シリーズの楽曲も共作したAimerと、SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer名義のアルバム「UnChild」を発表した。2015年2月にはSawanoHiroyuki[nZk]の新作「&Z」と、自身の手がけたアニメーションのサウンドトラックの中からボーカル曲のみをセレクトしたベストアルバム「BEST OF VOCAL WORKS [nZk]」をリリースしている。同年9月にSawanoHiroyuki[nZk]の1stアルバム「o1」と、澤野名義のサウンドトラックベスト「BEST OF SOUNDTRACK【emU】」を発表した。2017年6月には劇伴を手がけたアニメ「Re:CREATORS」のサウンドトラックと、同アニメの第1期および第2期のオープニングテーマを収録したシングル「gravityWall / sh0ut」を発表。9月にSawanoHiroyuki[nZk]として2作目のアルバム「2V-ALK」をリリースした。