音楽ナタリー Power Push - 「SATANIC CARNIVAL'16」特集

難波章浩(NAMBA69 / Hi-STANDARD) × 猪狩秀平(HEY-SMITH) × GEN(04 Limited Sazabys)

受け継がれるフェス主催の遺伝子

Hi-STANDARDのライブを観たい人たちをつなぐ「AIR JAM」

──先ほど、少し話に上がりましたが「AIR JAM」の説明もお願いします。

難波章浩(NAMBA69 / Hi-STANDARD)

難波 「AIR JAM」を始めたきっかけから話すと、一番大きかったのは、Hi-STANDARDのライブのチケットが取りづらくなってしまったこと。ハイスタのライブを観たいのに観れないっていう子の数が半端なくなっちゃったんだよね。だから観たい子たちに観せたいっていう考えから大きな会場でライブをやることに決めて。で、せっかく多くの人たちが集まってくれるなら、自分たちだけじゃなくて、普段ライブハウスで一緒に活動してるバンドも観てもらいたいなって思ったんだよね。

猪狩 「AIR JAM」の名前の由来ってなんなんですか? 俺、名前がめちゃくちゃ好きなんですよ。楽しそうすぎる。

GEN わかる! 僕も名前好きです!

難波 みんなで集まってワイワイやるっていうところから「JAM」。「AIR」は外でやるっていうことを意味してて。でも「AIR」には外だけじゃなくて、会場に来れない子たちにも伝わってるイメージっていうか……空間をつないでる感じも含んでる。

猪狩 カッコいい!!

──04 Limited Sazabysのように「AIR JAM」に憧れてフェスを立ち上げたバンドがたくさんいると思うんですけど、それについて難波さんはどう思っていますか?

難波 もし僕たちHi-STANDARDがやってきたことからアイデアを得てみんなが動いてくれてるならうれしいですね。「AIR JAM」も、Hi-STANDARDで「Warped Tour」に参加して「この感じ、日本にないな」って思ったところから始まってるから。それが「ハジマザ」や「YON FES」につながってるなら、僕らがアメリカからアイデアを持ってきたのは間違ってなかったなって思えるな。

猪狩 そうなんですね。

難波 当時はフェスというものがそれほど浸透していなかったから、「AIR JAM」をやることで自分たちがいい影響を与えてるのか、もしくはやらかしちゃってるだけなのか、それがわからなくなってしまったこともあったんですよ。あれから十数年経って、いい影響が与えられているならやってよかったなって思いますね。

音楽フェスに意味を持たせるということ

──難波さんは今、Hi-STANDARDとして「AIR JAM」を主催する以外にも個人やNAMBA69として「NO MORE FUCKIN' NUKES」や「東北ジャム」などさまざまなフェスやイベントを主催しています。フェスやイベントの必要性についてはどう考えていますか?

難波章浩(NAMBA69 / Hi-STANDARD)

難波 バンドが集まって、音楽を鳴らして、そこに人が集まるとすごいエネルギーになるというのは「AIR JAM」で体感してるし、その影響も時間が経ってわかった。だから例えば「NO MORE FUCKIN' NUKES」だったらそのエネルギーを利用して……っていうとちょっと違うけど、原発についてみんなで考えていこうよっていうきっかけにできる。いろんなことに気付いてもらいたいなっていう意味を込めてやってるんだよね。「東北ジャム」については「AIR JAM」が開催できない期間も気持ちは東北に向けておきたいなと思って始めて。フェスやイベントにはそういうパワーがあると思ってますね。

──音楽イベントに意味を持たせることに抵抗はありませんでした?

難波 それはありました。「AIR JAM」を1997年、98年、2000年とやったけど、当時はただみんなで集まりたいって気持ちだけで、意味を持たせようなんてことは思ってなかった。でも2011年に東日本大震災があって。そこで「AIR JAM」をやるということにものすごい意味が生まれちゃったんだよね。のちのち(横山)健くんも言ってるけど、「AIR JAM」の開催やHi-STANDARDというバンドが活動すること自体が意味を持ってしまうことが本当にいいことなのか、よくないことなのかっていうのは僕もすごく悩んだ。

猪狩 そうなんですね。

難波 もちろんHi-STANDARDの音楽を聴いて元気になってくれる人がたくさんいるのはわかってたけど、もともと日本を盛り上げてやるみたいな気持ちでバンドをやってたわけでは全然ないからさ。それよりも自分たちが楽しみたい、仲間で集まりたいっていう気持ち、さらにぶっちゃけて言えば仲間さえよければいいんだっていうところから始まったものだったから。でも震災が起こってその考えは変わって……。ここでHi-STANDARDの3人が握手して、Hi-STANDARDの持ってるパワーをステージで表現できないのは、俺の信じてきたパンクロックじゃないと思った。

猪狩秀平(HEY-SMITH)

猪狩 俺も活動休止してる間、俺らの音楽を聴いてくれてる人へ感謝する気持ちはあったけど、活動を再開した今はやっぱり自分のためにやるのがベストやなって再確認してる最中で。もちろん聴いてくれる人がいないとバンドをやる意味はないんですけど、その人たちのためだけにやるっていうのは違う。自分のほうが大事。難波さんが言ってたみたいに仲間だけよければいいやっていう気持ちはめちゃくちゃあります。

難波 俺らの場合は、震災後、その“仲間”っていう枠がバンドだけじゃなくて、震災で被害を受けて悲しい気持ちになってる人たちや元気をなくしてしまった人たちまで広がったっていう感覚かな。俺ら3人が手を組んでるよっていうことだけでも伝えて、元気になる人がいるならいいなって。そういう意味では図らずともHi-STANDARDの活動再開は日本のためになってるのかもしれないですね。

猪狩 俺、「AIR JAM 2011」が決定したとき、Hi-STANDARDの3人が手をつないでるあの写真を見て、涙しました。眠かったのにギター弾いちゃうみたいな、そういうパワーになりましたね。

GEN 僕もあれはマジで泣いたっすね。家で「やべえ!」って言いましたもん。

難波 実際、東北から喜びのメッセージをたくさんもらったんですよ。俺、それだけですげえうれしかった。いろいろ葛藤したけど、やってよかったなって思いましたね。

──猪狩さんとGENさんはフェスに意味を持たせるということについてどう考えていますか?

猪狩 俺は意味を持たせたくない派で。「ハジマザ」で伝えたいことなんて「バンド楽しいよ! みんなバンドやろー!」っていうくらい。出演者もそんなに毎年変わるわけじゃないし、この1年みんながどうやって活動してきたかっていうのをお披露目し合って、カッコいいものの再確認をしたい。それくらいなんですよね。

GEN(04 Limited Sazabys)

GEN 僕はフェスを主催するには何かしらの意味がないといけないと思っていて。僕らは2年前に出させていただいた「SATANIC CARNIVAL’14」が、初めて数千人単位の人の前でライブをする機会だったんですよ。で、それに出てからバンドの状況がよくなっていったんですね。「SATANIC CARNIVAL」に僕たちはきっかけをもらった感じがしてるので、僕らのフェスもそうやって誰かのきっかけになったらいいなあって思ってます。チャンスにしてほしいというか。

難波 フェスという1つのエンタテインメントをバンドがオーガナイズするってすごいエネルギーのいることだよね。俺は今、これからは新しい「AIR JAM」を作っていかなきゃいけないんだなって思ってて。

GEN 新しい「AIR JAM」ですか?

難波 さっきGENが「世代」って言ってたじゃん。その概念って俺らにはなかったんだけど、そういうのも含めて、新しい「AIR JAM」を作りたいっていうのは思ってるかな。2011年、12年は東日本大震災があったから集まれたんだけど、2016年は何かのためにっていうよりは純粋にエンタテインメントを作ろうと思ってた。本当は今年から新しい「AIR JAM」を、と思ってたんだけど、今回また熊本で震災があって。だから今は、九州の人たちに元気になってもらいたいし、まずは純粋に音楽を届けないとなと思ってるけどね。

SATANIC CARNIVAL'16
2016年6月4日(土)
千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
出演者
04 Limited Sazabys / 10-FEET / AA= / ATATA / The BONEZ / Crossfaith / Crystal Lake / Dizzy Sunfist / dustbox / G-FREAK FACTORY / HEY-SMITH / ジャパハリネット / Ken Yokoyama / MAN WITH A MISSION / MONOEYES / NAMBA69 / SHANK / SiM / TOTALFAT / WANIMA / bacho(オープニングアクト)
NAMBA69(ナンバシックスティナイン)

NAMBA69

2010年3月からソロアーティストとして活動を続けてきたHi-STANDARDの難波章浩(Vo, B)が、2013年3月にK5(G, Cho)、SAMBU(Dr, Cho)と共に結成した3ピースバンド。「FUJI ROCK FESTIVAL」「京都大作戦」「PUNKSPRING」などをはじめさまざまなイベントに出演する傍ら、「東北ジャム」や「NO MORE FUCKIN' NUKES」などのフェスをオーガナイズしている。2014年12月に1stアルバム「21st CENTURY DREAMS」を、2015年9月にミニアルバム「LET IT ROCK」をリリースした。

Hi-STANDARD(ハイスタンダード)

Hi-STANDARD

難波章浩(Vo, B)、横山健(G, Vo)、恒岡章(Dr)からなるパンクロックバンド。1991年から活動を開始し、都内を中心にライブ活動を展開。1994年にミニアルバム「LAST OF SUNNY DAY」をリリースし知名度を高める。1995年に「GROWING UP」、1997年には「ANGRY FIST」という2枚のフルアルバムをメジャーレーベルから発表。これらの作品は海外でもリリースされ、好セールスを記録した。また、この時期から海外でのライブ活動も開始。1997年には主催フェス「AIR JAM」をスタートさせ、日本のパンクロックシーンに大きな影響を与えた。1999年に自主レーベル「PIZZA OF DEATH RECORDS」がメジャーから独立し、第1弾作品としてアルバム「MAKING THE ROAD」をリリース。本作はインディーズとしては当時異例のミリオンヒットを達成した。その後も国内外で精力的なライブ活動を続けたが、2000年の「AIR JAM 2000」を最後に活動休止。メンバーはそれぞれソロやバンドで音楽活動を続けた。

約11年におよぶ空白の時間を経て、2011年4月に難波、横山、恒岡がTwitter上で3人同時に「9.18 ハイ・スタンダード AIR JAM。届け!!!」とツイート。そして翌5月には、9月18日に横浜スタジアムで東日本大震災の復興支援を目的とした「AIR JAM 2011」の開催と、Hi-STANDARDがライブを行うことが明らかになる。国内外15組のアーティストが出演したこのフェスで、ハイスタはヘッドライナーとして11年ぶりにライブを敢行した。2012年2月にはこの日のライブを収めたライブDVD「Live at AIR JAM 2011」を発売。同年9月には宮城・国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区風の草原で「AIR JAM 2012」を2日間にわたり行った。そして2013年9月、「AIR JAM 2012」でのハイスタのライブを完全収録したライブDVD「Live at TOHOKU AIR JAM 2012」をリリース。2016年12月に4年ぶりの「AIR JAM」を福岡・福岡 ヤフオク!ドームにて開催する。

HEY-SMITH(ヘイスミス)

HEY-SMITH

猪狩秀平(G, Vo)を中心に結成されたパンクバンド。2006年に大阪を拠点にライブ活動を開始し、2009年に1stミニアルバム「Proud and Loud」でCDデビュー。2010年の1stフルアルバム「14 -Fourteen-」を経て2011年にリリースした2ndフルアルバム「Free Your Mind」はオリコン週間インディーズランキングで1位を記録する。2012年には「FUJI ROCK FESTIVAL '12」「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012 in EZO」といったフェスに参加したほか、coldrain、SiMとの合同ツアー「TRIPLE AXE TOUR 2012」を開催した。2013年5月、2年ぶりのフルアルバム「Now Album」を発表し47都道府県を回るレコ発ツアーを大成功に収める。2010年より自主企画イベント「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL」を主催しており、2014年9月には大阪・泉大津フェニックスにて初の野外開催を成功させた。2015年1月に同イベントの模様を収録したDVD「Live at OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2014」をリリース。メンバーチェンジを経て、現在は猪狩秀平、YUJI(B, Vo)、満(Sax)、Task-n(Dr)、かなす(Tb)、イイカワケン(Tp)の6人体制で活動を行っている。2016年5月には新体制で初めてレコーディングしたアルバム「STOP THE WAR」を発売した。

04 Limited Sazabys(フォーリミテッドサザビーズ)

04 Limited Sazabys

2008年に愛知県名古屋市にて結成された、GEN(B, Vo)、HIROKAZ(G)、RYU-TA(G, Cho)、KOUHEI(Dr, Cho)によるロックバンド。2013年5月に発表した2ndミニアルバム「sonor」より日本語詞を多く取り入れ、楽曲の幅を広げる。メロディックパンクやギターロック、ラウドロックなど、さまざまなジャンルのバンドと競演を重ね、2014年2月に3rdミニアルバム「monolith」、同年9月に1stシングル「YON」をリリース。2015年4月に1stフルアルバム「CAVU」を日本コロムビアから発売し、メジャーデビューを果たした。同年10月にメジャー1stシングル「TOY」を、2016年3月に1st DVD「MOMENT」を発売。4月には初の主催フェス「YON FES 2016」を大成功に収めた。ニューシングル「AIM」を6月に発表し、同月からレコ発ツアー「AIM tour 2016」、9月から全国ツアー「2016 秋 TOUR(仮)」を実施する。