音楽ナタリー Power Push - 「SATANIC CARNIVAL'16」特集
難波章浩(NAMBA69 / Hi-STANDARD) × 猪狩秀平(HEY-SMITH) × GEN(04 Limited Sazabys)
受け継がれるフェス主催の遺伝子
イベントを作るのが好き
GEN 「AIR JAM」を開催するにあたって一番の困難はなんですか?
難波 場所と日程かな。実は「AIR JAM」って毎回会場が違うんだよね。
猪狩 そうっすよね。俺、フェスやるのに場所探しが一番大変だと思ってるからすごいなあって思ってます。
難波 しかもみんながフェスを始めちゃったから全然場所がない(笑)。あとハイスタの場合は3人が別のバンドをやってるから、3人の予定が合って初めて動ける感じだからね。日程の調整も難しいよ。
猪狩 「AIR JAM」の当日、難波さん、めっちゃ走り回ってますよね。観に行ったときビックリしました。
GEN 僕も2011年の横浜のときに観に行ったんですけど、ゲートをくぐった瞬間「AIR JAMだ!」って感激して。で、ちょっと進んだら難波さんが客席にいて驚いた記憶があります。
難波 入場がうまくいってるか見に行ったり、スケーターの飲料水が足りてなかったから補充してくださいって言いに行ったりしてたときかな。やっぱね、好きなんだよ。
猪狩 そうなんですね。動くのが? 企画するのが?
難波 どっちもだね。イベントを作るってことが好き。なんなら出なくていいもん。「AIR JAM」にハイスタ出ないっていうのもいいと思うんだよ。
猪狩 難波さん、それはね、ダメですね(笑)。
フェス主催の現実
難波 フェスの出演者とか構想って1人で考えてる? バンドメンバーみんなで?
猪狩 俺はメンバーにまったく相談しないです。1mmも相談しないですね。ほかのメンバーはお客さんと一緒で、発表の段階で出演者を知る感じやと思います。会場にも俺は下見で何度も行くけど、ほかのメンバーは当日初めて来ますからね。
GEN うちはみんなで決めます。最終的な決定権は僕が一番持ってる感じですが、出演アーティストはみんなで決めます。
難波 お金のこととかも自分でやってる?
猪狩・GEN はい。
難波 俺ら2011年からスポンサーを入れてやるようになったんだけど、それまではスポンサーを受けないっていうのがポリシーだったんだよね。動いてる金額とかも知ると責任感がより増すよね。
猪狩 最初「だいたいこれくらいの金額になります」っていう表を見たとき「え……」って。
難波 唖然とするよね。そういうリスクも背負ってやるっていうのはすごいことだよ。
猪狩 ぞっとしました。「もし台風が来たら、この金額の負担がバンドに来るってこと?」って考えたら……。もう孫の代まで無理やなと。
GEN 僕もビックリしましたね。チケット売り切れないと確実にやばいなと。
猪狩 売り切れても……やんな?
GEN はい。だからグッズとかでがんばんなきゃなって。
難波 普段はお金のこととか公にしないけど、せっかくだから今日みたいなこういう場では伝えていけるといいよね。そんなところまでメンバーががんばってるんだぞっていうことを。
猪狩 そうですね。とはいえお客さんにはただ単に来て、ただ単に楽しんでもらえればいいとも思います。例えば最近のフェスではゴミを拾って帰るとかも当たり前になってるけど、自分がお客さんとしてライブを観に行ってた高校生とか大学生のときはそんなこと考えられなかったですからね。
GEN うん。僕もトイレ並んでて我慢できなかったら、その辺でしちゃってたと思います。
猪狩 してるしてる。俺は本当にみんなのやりたいようにやってほしくて。もしポイ捨てしたいとか、空き缶放って帰りたいんやったら放って帰ったらいいと思うんですよね。それは片付けるし。俺はそれくらい自由にやって帰れば?って思うところもある。もちろんマナーは絶対に必要なんですけど、もっと制限のない感じでいてほしいなってずっと考えてます。とはいえゴミ問題とか騒音問題で全部おじゃんになることもありますからね……。
難波 もちろん楽しんでもらいたいけど、そういうところも意識してもらえたらうれしいよね。猪狩ちゃんが言ってるのは、ポイ捨てしていいぞってことじゃなくて、「ルールだから捨てちゃダメっていうことじゃなくて、自発的にゴミを拾ってくれたらうれしい」ってことだよね?
猪狩 そうですそうです。
GEN 「YON FES」もゴミが全然落ちていなかったんです。それは僕らが「このイベントを続けていきたい」っていうことをすごく言ったので、その気持ちが伝わったんじゃないかなって。うれしいですね。
招かれるフェスから学ぶもの
──自分たちで主催するフェスと、出演者として招かれるフェスで違いはありますか?
猪狩 俺、人のイベント行ったらめっちゃいろんなところ見ちゃうんですよね。「音はこんな感じか」とか「ふーん、ケータリングはこんな感じね」とか。あ、「SATANIC CARNIVAL」はケータリングの種類が増えるとうれしいなあ。よろしくお願いします!(笑)
GEN 僕もいろんなところを見るようになりました。ステージ裏の導線とか気になります。
難波 わかる。俺も。「ハジマザは2ステージか」とか。「Warped Tour」が2ステージだったのよ。だから俺も同じ大きさのステージ2つっていうのをやりたいなと思ってて。
猪狩 やっぱり海外のフェスって先を行ってるんですよね。だから俺、Crossfaithに海外のフェスはどんな感じか聞いたりしてます。
──フェス主催者でもある皆さんから見た「SATANIC CARNIVAL」はどう映りました?
猪狩 幕張メッセって、音が広がっちゃってあんまりビート感が感じられないっていうイメージやったんですけど、一昨年出たときはそれが全然なくて。しっかりパンクの音やったんですよ。だからスピーカーはどこに発注してるのか?とか配線はどうしてるのか?とかピザ(PIZZA OF DEATH RECORDS)の人にめちゃくちゃたくさん聞きました。
難波 うんうん、そういうの聞くよね。
GEN 僕もあるイベントで音圧が感じられなかったということがあって。出ているバンドはカッコいいバンドばっかりだったのに、そのときは正直あまりカッコよさが伝わらなかったんですよね。だから自分が主催するときは出てるアーティストをちゃんとカッコよく見せられるようにしなきゃなって思います。
難波 そうだね。
猪狩 それはめっちゃ思う。大きいステージになればなるほど音が飛ばないし、どうしたらいいかめっちゃ悩む。
難波 近隣との兼ね合いもあるしね。横浜スタジアムで「AIR JAM 2011」をやったとき、めっちゃ気遣ったよ。東北でやった2012年は震災があったばっかりだったし、そのときも気を付けた。
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- 出演者
- 04 Limited Sazabys / 10-FEET / AA= / ATATA / The BONEZ / Crossfaith / Crystal Lake / Dizzy Sunfist / dustbox / G-FREAK FACTORY / HEY-SMITH / ジャパハリネット / Ken Yokoyama / MAN WITH A MISSION / MONOEYES / NAMBA69 / SHANK / SiM / TOTALFAT / WANIMA / bacho(オープニングアクト)
NAMBA69(ナンバシックスティナイン)
2010年3月からソロアーティストとして活動を続けてきたHi-STANDARDの難波章浩(Vo, B)が、2013年3月にK5(G, Cho)、SAMBU(Dr, Cho)と共に結成した3ピースバンド。「FUJI ROCK FESTIVAL」「京都大作戦」「PUNKSPRING」などをはじめさまざまなイベントに出演する傍ら、「東北ジャム」や「NO MORE FUCKIN' NUKES」などのフェスをオーガナイズしている。2014年12月に1stアルバム「21st CENTURY DREAMS」を、2015年9月にミニアルバム「LET IT ROCK」をリリースした。
Hi-STANDARD(ハイスタンダード)
難波章浩(Vo, B)、横山健(G, Vo)、恒岡章(Dr)からなるパンクロックバンド。1991年から活動を開始し、都内を中心にライブ活動を展開。1994年にミニアルバム「LAST OF SUNNY DAY」をリリースし知名度を高める。1995年に「GROWING UP」、1997年には「ANGRY FIST」という2枚のフルアルバムをメジャーレーベルから発表。これらの作品は海外でもリリースされ、好セールスを記録した。また、この時期から海外でのライブ活動も開始。1997年には主催フェス「AIR JAM」をスタートさせ、日本のパンクロックシーンに大きな影響を与えた。1999年に自主レーベル「PIZZA OF DEATH RECORDS」がメジャーから独立し、第1弾作品としてアルバム「MAKING THE ROAD」をリリース。本作はインディーズとしては当時異例のミリオンヒットを達成した。その後も国内外で精力的なライブ活動を続けたが、2000年の「AIR JAM 2000」を最後に活動休止。メンバーはそれぞれソロやバンドで音楽活動を続けた。
約11年におよぶ空白の時間を経て、2011年4月に難波、横山、恒岡がTwitter上で3人同時に「9.18 ハイ・スタンダード AIR JAM。届け!!!」とツイート。そして翌5月には、9月18日に横浜スタジアムで東日本大震災の復興支援を目的とした「AIR JAM 2011」の開催と、Hi-STANDARDがライブを行うことが明らかになる。国内外15組のアーティストが出演したこのフェスで、ハイスタはヘッドライナーとして11年ぶりにライブを敢行した。2012年2月にはこの日のライブを収めたライブDVD「Live at AIR JAM 2011」を発売。同年9月には宮城・国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区風の草原で「AIR JAM 2012」を2日間にわたり行った。そして2013年9月、「AIR JAM 2012」でのハイスタのライブを完全収録したライブDVD「Live at TOHOKU AIR JAM 2012」をリリース。2016年12月に4年ぶりの「AIR JAM」を福岡・福岡 ヤフオク!ドームにて開催する。
HEY-SMITH(ヘイスミス)
猪狩秀平(G, Vo)を中心に結成されたパンクバンド。2006年に大阪を拠点にライブ活動を開始し、2009年に1stミニアルバム「Proud and Loud」でCDデビュー。2010年の1stフルアルバム「14 -Fourteen-」を経て2011年にリリースした2ndフルアルバム「Free Your Mind」はオリコン週間インディーズランキングで1位を記録する。2012年には「FUJI ROCK FESTIVAL '12」「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012 in EZO」といったフェスに参加したほか、coldrain、SiMとの合同ツアー「TRIPLE AXE TOUR 2012」を開催した。2013年5月、2年ぶりのフルアルバム「Now Album」を発表し47都道府県を回るレコ発ツアーを大成功に収める。2010年より自主企画イベント「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL」を主催しており、2014年9月には大阪・泉大津フェニックスにて初の野外開催を成功させた。2015年1月に同イベントの模様を収録したDVD「Live at OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2014」をリリース。メンバーチェンジを経て、現在は猪狩秀平、YUJI(B, Vo)、満(Sax)、Task-n(Dr)、かなす(Tb)、イイカワケン(Tp)の6人体制で活動を行っている。2016年5月には新体制で初めてレコーディングしたアルバム「STOP THE WAR」を発売した。
04 Limited Sazabys(フォーリミテッドサザビーズ)
2008年に愛知県名古屋市にて結成された、GEN(B, Vo)、HIROKAZ(G)、RYU-TA(G, Cho)、KOUHEI(Dr, Cho)によるロックバンド。2013年5月に発表した2ndミニアルバム「sonor」より日本語詞を多く取り入れ、楽曲の幅を広げる。メロディックパンクやギターロック、ラウドロックなど、さまざまなジャンルのバンドと競演を重ね、2014年2月に3rdミニアルバム「monolith」、同年9月に1stシングル「YON」をリリース。2015年4月に1stフルアルバム「CAVU」を日本コロムビアから発売し、メジャーデビューを果たした。同年10月にメジャー1stシングル「TOY」を、2016年3月に1st DVD「MOMENT」を発売。4月には初の主催フェス「YON FES 2016」を大成功に収めた。ニューシングル「AIM」を6月に発表し、同月からレコ発ツアー「AIM tour 2016」、9月から全国ツアー「2016 秋 TOUR(仮)」を実施する。