音楽ナタリー PowerPush - 笹倉慎介

時の流れを抽出するコンセプトアルバム4作品

笹倉慎介が5月27日にニューアルバム「TIME STREAM season1」をリリースした。

本作を皮切りに、四季をテーマにした弾き語りアルバムを約1年で4作品発表することをアナウンスした笹倉。この第1弾となる「TIME STREAM season1」には、冬をテーマにした楽曲が計7曲収録される。音楽ナタリー初登場となる今回のインタビューは彼が運営するレコーディングスタジオ兼カフェ・guzuri recording houseで実施し、埼玉・入間のジョンソンタウンで独自のスタンスで続ける音楽活動から、「TIME STREAM」シリーズの制作についてまでを聞いた。

取材・文 / 加藤一陽 撮影 / 雨宮透貴

ニール・ヤング、サニーデイ、中村一義、くるり

──笹倉さん、アーティスト活動は何年目になりますか?

笹倉慎介

うーん、どこからをアーティスト活動と呼ぶか迷いますね。初めて曲を作った17歳の頃から気分的にはあまり変わらないんですけど……1stアルバムは2008年リリースなので、そういう意味では7年ですかね。

──笹倉さんからは、オールドスクールというか、“古きよきシンガーソングライター”的な佇まいを感じます。どんな音楽に影響を受けてきたのですか?

まずはニール・ヤングですね。スペースシャワーTVでニール・ヤングの「After The Gold Rush」を聴いたときすごいなあと思って。それからどハマりしていきました。

──ニール・ヤングのどの辺りが気に入ったのですか?

なんだろうな、聴いた感じとしか言いようがないんですけど……最初、高校生の僕の耳では、ニール・ヤングの声を聴いて男なのか女なのか判別できなかったんです。でも楽曲全体の雰囲気というか、パッと聴いたときの印象がすごくよくて。曲を作り始めたのもその頃ですね。ほかに高校生の頃は中村一義さんが「金字塔」をリリースして、好きでよく聴いていましたね。あとはサニーデイ・サービスやくるり。

──やはりシンガーソングライター的な音楽に惹かれていたということですね。

そうかもしれませんね。あとはちょこちょこと古い洋楽のCDを買ってはいました。Buffalo Springfieldとか。

──10年くらい前にライブを観たときは、ものすごくはっぴいえんどの影響を受けている人だなって思いました。ボーカルスタイルは“フォロワー”と言っても過言ではないほどに大滝詠一さんにそっくりだったし、歌詞は松本隆さん的で。

うん。もちろん影響を受けていますね。はっぴいえんどは2000年過ぎくらいに知ったんです。大学の頃に居酒屋でバイトをしていたんだけど、その店では仕込みのときに好きな音楽をかけてよかったんですね。そこで友達がはっぴいえんどの「風街ろまん」をかけていたんだけど、「空いろのくれよん」のイントロのペダルスティールを聴いて、自分の知らないBuffalo Springfieldの曲かと思ったんです。

──はい。

そうしたら、日本語で歌い出すから(笑)。それで友達に「はっぴいえんどだよ」って教えてもらって。いろいろ調べていったら、サニーデイもくるりも中村一義さんもはっぴいえんどに影響を受けているって知って、ニール・ヤング、サニーデイ、中村一義、くるり、ってリンクして。

──自分の中でいろいろつながった感じがしたんですね。

うん。あと、歌詞についてはサラリーマン時代に読んだ三島由紀夫の影響が大きいと思います。不動産関係の仕事に就いていて、週末にオープンハウスで接客をしていたんです。そこでお客さんが来ないと暇だから、ひたすら本を読んでいて。そんな中で三島由紀夫の言葉の使い方や情景の表現の仕方にどハマりして、自分で曲を作るなら、もっと知りたいなと思って読み漁ったんです。今でもその頃に自分に蓄えられた言葉を使っていますね。

物を書いていいという自意識

──初めて曲を作ったのは高校生の頃とおっしゃっていましたが、その頃からギターで曲を作っていたんですか?

はい。弾き語りで。でもね、最初は曲を作るっていうより、歌詞ばかり書いていました。音楽を作る前から歌詞を作っていて。

──それは詩ではなく、あくまで歌詞ということですか? 音楽にすることを想定しているもの?

はい。でも自分に曲を作るスペックがなくて。ギターを弾けるようになってから、歌詞に曲をつけていくような感じでしたね。

──曲を作れないのに、先に歌詞を書いていたんですね。そういうふうに言葉に惹かれるのって、お父様が作家であることも関係していたんでしょうか。プロフィールにはお父様が直木賞作家だと書かれていますが。

うん。そのことは自分の中の拠り所ではあったと思います。物を書いていいというか……別に誰に許してもらうというわけでもないんだけど(笑)、なんか父がそういう仕事をしているってことで、僕も書いていいのかな、みたいな感覚があって。

──「物を書いていい人間」であるいう自意識があった。

うん……でも僕、活字が苦手で(笑)。クリスマスプレゼントで枕元に本が置かれていても全然うれしくなかった。読まないから(笑)。ずっと体育会系だったし。小学生の頃は野球をやっていて、高校生のときはずっとプロテニスプレイヤーになりたかった。そのくらいストイックにやってました。

──意外と文学青年っていう感じではなかったんですね。

そうなんですよ。理系ですしね(笑)。理屈がないと前に進めないタイプで。でも最近思うのが、文章の組み立て方って、かなり理系的な頭を使うなあって。文学って感覚的なものだと思っているんですけど、それを構築しようとすると理系的な頭を使うなって感じています。

ニューアルバム「TIME STREAM season1」 / 2015年5月27日発売 / PUFFIN RECORDS / 都雲音工 1620円 / TOCL-0001
ニューアルバム「TIME STREAM season1」
収録曲
  1. 冬が
  2. 隠れたまなざし
  3. 雪が舞う
  4. はなれてゆく
  5. 湖畔の人
  6. 外は雨
  7. 僕らが旅に出る夜
TIME STREAM TOUR 2015
2015年7月11日(土)千葉県 cafe STAND
2015年7月14日(火)愛知県 Tokuzo
2015年7月15日(水)京都府 拾得
2015年7月16日(木)大阪府 digmeout ART & DINER
2015年7月17日(金)広島県 SHAMROCK
2015年7月18日(土)福岡県 LIV LABO
2015年7月20日(月・祝)東京都 青山CAY
笹倉慎介(ササクラシンスケ)

笹倉慎介

1981年生まれのシンガーソングライター。大学中退後、サラリーマンやカフェ店員をしながらライブ活動を続け、2006年、埼玉県入間市にある米軍ハウス村、ジョンソンタウンに移住。2008年に鈴木惣一朗プロデュースの1stアルバム「Rocking Chair Girl」でデビュー。その後自身が内装を手がけたスタジオ兼カフェguzuri recording houseを運営しながら、2枚のオリジナルアルバムや、John John Festival、森は生きているといったアーティストとのコラボ曲を発表している。2015年5月に、四季をコンセプトにした弾き語りアルバム「TIME STREAM」シリーズの第1弾作品「TIME STREAM season1」をリリース。以降3作品の発売を控えている。