振り入れのときにブチ切れました
──では新作の収録曲のうち、ちょうど今話が出た、ヤマモトショウさん作詞、ちばけんいちさん作編曲の新曲「レビュープレビュー」について伺いたいと思います。今回、ダンスの見どころはどこでしょうか?
いどみん 「レビュープレビュー」は女の子がおしゃれな格好をしてレイトショーに行くイメージで。みんな一緒に盛り上がろうという今までの元気なスタイルではなく、1つのシーンを切り取って、いかに自分たちを曲の主人公に落とし込めるかっていう、ちょっと演技のような要素もあるのかなと思います。細かい振り付けが山ほどあって、例えばチケットを手の形で表現するところなど、2人ないしは3人が組み合わさって表現する振りに挑戦しました。なので、それぞれが楽しく踊ってるという今までのやり方じゃダメで、3人が同じ速度でフォーメーションを作らないとそのシーンを再現できない。今はそろうようになったんですけど、最初はできなくてみんなでケンカをしてました。「速いってば!」「違う、チケットのサイズが大きい!」みたいな(笑)。体より頭が疲れるんですよね。1人間違えるとお互いにぶつかるし、ステップも多いし。ホントに苦労をかけました(笑)。
夏芽 急に難しくなったなーと思いました(笑)。今まではステージを広く使ってたから立ち位置も覚えやすかったんです。前か後ろのどちらかっていう。でも新曲は「次、どこだったっけ?」って混乱しちゃう。振り自体よりも、私は立ち位置が難しかったです。
小町 振り入れのとき、先生に1度踊ってもらったんですけど、私はそれを見てブチ切れました(笑)。「こんなのできない!」って。でも、動きをそろえることを意識する一方で体は疲れないので、1回踊れるようになったあとはそれほど難しくは感じなかったです。
藤井 私も最初は絶対にできないと思ってたんですけど、今はライブで普通にドヤ顔で踊っていて。自分たちのレベルが上がったのかな、今までと違う私たちを見せることができているのかなと実感しています。あと、私はないんですけど、ほかの2人は1文字で移動する振りがあるんですよ。
──たった1文字の歌詞を歌う間に移動するということですか?
いどみん そうです。1文字歌うたびに移動していくっていう。
夏芽 これも今の私たちだからこそできることですね。
いどみん この曲では引き算をしているんです。今まで全力で踊っていたのに対し、今回は弾けずに歩く感じ。でも、お尻を振りながら歩かないと女性らしさが出ないっていう、細かい演技指導をプロデューサー(井本泰稀氏)と一緒にやりました。初披露の日はリハから観に行ったんですけど、そんなにうまくできてなくて、その時点でも揉めて(笑)。でもお披露目公演を終えたら解放された気持ちになったのか、まいちゃんが「あのときはホントにすみませんでした」と謝ってきて(笑)、そこでもう一段階、絆が強くなりました。
夏芽 私もお披露目のとき、それまでの準備期間を振り返って「いどみん先生に迷惑をかけてしまったな」と思って、謝罪の気持ちを込めた手紙を書きました(笑)。
いどみん 「リミックスの曲を含めると、20曲近くになってしまいました。私たちはこんなにたくさんの曲を先生に……」みたいな(笑)。
夏芽 先生に見放されないように、「これからもお願いします」って。
普通のダンス教室で修行
いどみん 実は3人体制になるにあたって、プロデューサーに「3人をダンス教室にぶち込みたいです」と相談したんです。メンバーだけで基礎レッスンをするよりは、一般の方がいる普通のダンス教室に3人を別々にぶち込んだほうがいい。メンバー同士お互いの顔を気にせず、滝に打たれることができるんじゃないかって。それぞれジャンルも指定して、メンバーの家の近くのスタジオに実際に4カ月、計90時間通わせました。その期間もメンバーと会っていたんですけど、「なんてひどいことをするんだ!」と言われました(笑)。
小町 その4カ月はホントにつらかったです。自分ができないということを思い知らされて。
いどみん まいちゃんはファンの方にもグループの中で踊れるほうだと思われてたからね。
藤井 教室でのレッスンのあとにその風景を撮影した動画を観ると、自分だけついていけてなくてつらかったです。
夏芽 今までの曲の立ち位置を覚え直すレッスンもその合間に入っていたから、スケジュールがパンパンで。みんないどみん先生への文句を溜め込んで、会ったときにぶつけてました。そしたら、「ごめんねー」って謝ってくれました(笑)。
いどみん 「いつか絶対にこれが役に立つから!」って。ほかにも3人は「いきなり難しいダンスで無理だった」「自分より若い子がすごい踊れていてショックだった」とか言ってたんですけど、あの90時間があったおかげで「レビュープレビュー」の振り付けはわりとスムーズにいきました。
小町 確かに、この期間がなかったら「レビュープレビュー」の振り入れはもっとヤバかったと思います。
いどみん さらっと簡単にやっているように見えるのは、基礎が身に付いたからだなって。
夏芽 やっぱりステージに立ってパフォーマンスしたあと、ファンの方や先生が褒めてくれたときに変化を実感しますね。自分で自覚するより、人に言われて気付くんです。ダンスの専門用語もわかるようになったので、先生の言ってることも理解しやすくなりました。
藤井 今までメンバーとしか関わりがなかったから、新しい世界を知ることができました。私はジャズダンスのレッスンを受けたんですけど、裸足で踊るということを知らなくて、自分だけ靴を履いていたのもすごく嫌でした(笑)。
──ダンス教室作戦が功を奏したようですが、振り付けの先生がここまでグループやメンバーの活動に踏み込むのは異例じゃないですか?
いどみん そうそうないことだとは思うんですけど、愛があるゆえに崖から突き落としたくなっちゃうんです。「この崖を登ってこい!」って。突き落とすたびにメンバーは「やっぱりできない」ってめげちゃうし、今回も「教室にいる周りの子よりダンス歴は長いのになんでできないんだろう」と落ち込んじゃってたんですけど、教室でレッスンを受けている子とこの3人の違いはステージ経験の量なんですよね。そこについては自信を持って、レッスンで学んだ基礎をステージに持ってきなさいと伝えて。結局、崖の下に突き落としました(笑)。
過去最難関の振り付け
──「レビュープレビュー」のほか、今作にはドラムンベースを取り入れたナンバー「Lightsurfer」も表題曲として収められますが、この曲の振り付けの見どころはどこでしょうか?
いどみん ダンスレッスンに90時間つっこんだ成果がより一層表れてるところですね。過去最難関だよね。
夏芽 テンポが速いので。
いどみん シンセサイザーの音が鳴っている中、それに合わせてずっと音ハメで踊っているっていう。振り入れのとき、みんな最初は「わー、新曲だー」みたいなテンションだったのに、帰りは全員無言でした(笑)。さらにミュージックビデオ撮影の予定があって、それまでわりと時間がなくて。振り入れの次の日は札幌遠征だったんですが、遠征先でもレッスンしました。「ここで詰め込んじゃおう!」って提案したら、3人も嫌がらずに賛成してくれて。しゃがむ振り付けがあるんですけど、その日の札幌は地面が凍っているところが多くて……。
夏芽 練習のあと、筋肉痛の状態で滑らないように外を歩くのがつらかったです(笑)。
──確か、その遠征では飛行機の欠航の影響で、予定より長く北海道に滞在したんですよね。
小町 1週間くらいいました(笑)。
夏芽 トラウマの札幌(笑)。
いどみん ちょうどその期間にすごく難しい課題をぶち込みました。
藤井 私は「Lightsurfer」のレッスンに関しては無でした(笑)。「終わった……」と思って。できなさすぎて札幌のホテルの部屋で1人病んじゃいました。
夏芽 「とりあえず『Lightsurfer』については頭から消すから」って言ってたよね(笑)。
藤井 で、遠征が終わって家に帰ったあとに、じっくり振りを確認して頭に叩き込んだらなんとかできるようになりました。「レビュープレビュー」は動作さえ覚えちゃえば大丈夫だったんですけど、「Lightsurfer」は体がついていかないんです。
夏芽 ヤバいということは振り入れの初日に感覚でわかったんですけど、それを受け入れちゃうと焦るから「できるできる!」と思い込むようにしてました。「『レビュープレビュー』よりは簡単だよ。がんばって速さに追いつけば大丈夫」って2人を励ましつつ、自分にも言い聞かせてました(笑)。結果として北海道でレッスンできてよかったなとホントに思います。
小町 私は“早取り”の傾向があるので、こういうテンポが速い曲だとどうしても音よりも動きのほうが速くなっちゃうんですよ。鏡を見みながらじゃないとちゃんと踊れなくて、すごく焦りました。
いどみん まいちゃんはこの曲ではダブルでターンするところがあるんですよ。ダブルのターンを振りに取り入れてるグループってそうそういなくて。しかも、回ったあとに歌わなくちゃいけないから「ごめんね」という感じなんですけど、やっぱりスキルが伸びた分、こちらが要求したことをきれいにできるようになりました。
夏芽 2回転、カッコいいよ。
小町 やったー(笑)。
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サビの最初の3秒で仕掛けてる