ナタリー PowerPush - SALU
謎多き新世代ラッパーの素顔に迫る
「IN MY SHOES」は23歳のSALUから見た世界
──今回リリースされたアルバム「IN MY SHOES」は、「Before I Signed」よりも大人びた視点で歌われた曲が多いですね。
そうですね。正直めっちゃ背伸びしました(笑)。
──確かに壮大な世界観のリリックが多いんですが、23歳の言葉とは思えない不思議な説得力があります。
本当ですか? 恐縮です。さっきも言ったけどリリックは基本的に実体験がベースになってるんで、説得力がなかったら逆につらいです(笑)。
──「IN MY SHOES」のリリックは、ひとつのテーマを多角的な視点で描いているのが印象的でした。
そうですね。どんな物事でも人によっていろんな見方や捉え方があるじゃないですか。僕はいろんな環境で暮らして、いろんな人たちと出会ってきたから、余計にそういう考え方があって。だから自然とリリックもいろんな角度からひとつのトピックを書くようなスタイルになるんだと思います。
──ちなみにアルバムタイトルはどういう意味なんですか?
“In My Shoes”というのは英語の慣用句で、「私の立場では」という意味なんです。このアルバムは今23歳の僕から見た世界について歌った作品なんで、このタイトルにしました。あくまで「僕はこう思ってるんですけど、あなたはどうですか?」という感じで。押し付けがましいのは苦手なので。
──うわさ話や陰口について歌った「JUST A CONVERSATION」について教えてください。
人って、物事の良し悪しを自分の中で勝手に決めるものじゃないですか。勝手に評価されて、勝手に悪口言われて。でもそれって、僕も含めてみんな当たり前にやってることだから「他人の評価をいちいち気にしてても仕方なくない?」みたいな感じです。
──「起きろ Poker Face 日本」というパンチラインは鮮烈ですね。
ありがとうございます(笑)。LADY GAGAの「Poker Face」という曲のガガの声だけを使った、カニエ・ウェストがプロデュースしてるキッド・カディの「Make Her Say」という曲があって、それを僕がビートジャックしてる曲がYouTubeにあるんですよ。フリースタイルなんですが。そのフリースタイルをしたころ、僕は仮面を被っているような状態で、表情のない閉鎖的な人間だったんです。でもこの「JUST A CONVERSATION」を書いたころはもう少しだけ成長していて、「起きろ Poker Face 日本」と言ってるんです。「そんな仮面取っちゃったほうが人生面白いよ!」って。
──これには多くの人がハッとさせられるんじゃないかと思います。
まあ、僕自身も今でも他人の目を気にして、いろいろと心配になってしまうタイプなんですが(笑)。だから自分に向けて言っているというのもあります。というかアルバムの曲、ほとんどが自問自答です。
いずれは全部英語でラップしてみたい
──日本の音楽シーンで面白いと思っているアーティストはいますか?
MAN WITH A MISSION。超カッコいいと思います。僕、スーパー銭湯が好きでよく行くんですけど、そこのサウナのテレビで偶然観たんです。最初聴いた瞬間海外のアーティストだと思いました(笑)。一緒に行った友達は全然反応してなかったんだけど、僕にとっては中2のときに出会ってラップを始めるきっかけになったKICK THE CAN CREWの「カンケリ01」と同じくらいの衝撃でしたよ!
──ロックが今のSALUさんのモードなんですか?
いえ、MAN WITH A MISSIONは特別です。むしろ最近は静かな曲を聴くことが多いです。ショパンの「夜想曲」とかボブ・マーリーとか。
──最後にSALUという名前の意味を教えてください。
日本人って世界ではイエローモンキーって揶揄されてるじゃないですか。でも、もし日本人が世界に出たとき、自分で「黄色い猿ですが何か?」って言ってたら、それってすごい痛快だろうな、と思って(笑)。
──もしかしてSALUさんは、すごい皮肉屋なんですか?
そうですね。結構ひねくれてるかも。「STAND HARD(Remix)」に参加してもらったNORIKIYOさんにもよく言われます(笑)。
──海外で活躍したいという意識は最初からあったんですか?
いずれは全部英語でラップしてみたいですね。でも、まだ僕は海外で戦う土俵にすら立ててないので。まずはその土俵に立てるまで努力して、自分のやりたいことはそこからやっていきたい。全てはこれから。スタート地点に立ってもいない。
CD収録曲
- BALANCE(Pro.by BACHLOGIC)
- BURN IT(Pro.by OHLD)
- STAND HARD(Pro.by BACHLOGIC)
- JUST A CONVERSATION(Pro.by BACHLOGIC)
- DAREDEVIL(Pro.by OHLD)
- ITS YA BOY..(Pro.by OHLD)
- THE WATCHER ON WOODS(Pro.by BACHLOGIC)
- KAZE(Pro.by BACHLOGIC)
- TAKING A NAP(Pro.by BACHLOGIC)
- BUTTERFLY EFFECT(Pro.by OHLD)
- THE GIRL ON A BOARD feat.鋼田テフロン(Pro.by BACHLOGIC)
- IN YOUR SHOES(Pro.by OHLD)
- 夢から醒めた夢(Pro.by OHLD)
- TO COME INTO THIS WORLD feat.鋼田テフロン(Pro.by BACHLOGIC)
SALU(さる)
1988年、北海道生まれのラッパー。2010年に当時はまだ無名の存在だったにもかかわらず、SEEDAが所属するSCARSの「CASH & THE CASHER」という楽曲で客演ラッパーとしてフィーチャーされる。翌2011年にはSEEDA「黙る時代は終わり」、JAY'ED「ブレイブ・ハート」、SIMON「Change My Life」といった楽曲に次々とフィーチャーされ、話題の存在となった。さらに同年末には、SALU名義での初音源「Before I Signed」をフリーダウンロードという形で発表。そして2012年3月、BACHLOGICが立ち上げたレーベル「ONE YEAR WAR MUSIC」から1stアルバム「IN MY SHOES」をリリースした。