ネガティブを肯定した上でのポジティブな歌

──通常盤のカップリング「fragile」は冷たい質感が印象的でした。

うらら　最初に送られてきたデモを聴いたとき、薄いガラスのような何か張りつめたものとか、脆いものを想像したんですね。きっと世の中には強がって張りつめて、でも実はすごく脆いっていう生き方をしている人ってたくさんいると思うんです。そういう人の生き方を肯定する歌があってもいいかなと思って。

──単純な元気ソングではなく。

うらら　「前向きにがんばろうよ」とか「素直になろうよ」とか明るく前向きな歌は多いと思うんですけど、ネガティブを肯定した上でポジティブな歌があってもいいと思ったんですよね。

──上口さんはこの曲に関してはいかがでした？

上口　作曲のときはあまり悩まずにできていたのに、いざアレンジの段階になったら全然着地点が見つからなくて。作っては壊しての繰り返しだったんですけど、妥協せずに最後まで諦めずにやれたのですごく達成感がありますね。うららのボーカルにも助けられて、思わずうららに「ありがとうございます」ってメールを送りました（笑）。

うらら　はい、来ました。

──（笑）。もう1曲は「green」のアコースティックバージョンですね。「赤い靴」のアコースティックバージョンのときは、アコギとうららさんの声のみでしたが、今回はアコーディオンの音色がトラッドな雰囲気を醸し出しています。

うらら　そうですね。マンドリンやウッドベース、カホンも入れました。お祭り感を出そうと思ったので、みんなでひとつの部屋で「せーの！」で録っています。

私はまだまだ3曲の人間

──前回のインタビュー（参照：Salley「green」インタビュー）から2カ月が経ちましたが、何か変化はありました？

うらら　8月に広島で行われた「SOUND MARINA'13」に出演させていただいたのは大きかったですね。私たちはオープニングアクトで3曲だけの予定だったので、リハーサルのときは調子乗って「もっとやりたいです」って言ってたんです。でも本番前になったら緊張で立てなくなっちゃって……。

──それまでインストアイベントなどでやってきたのが、いきなり7、8000人の前で歌うわけですもんね。

うらら　はい。お客さんの表情が柔らかくて、手を叩いてくれたのでだいぶ緊張はほぐれて気持ちよく歌えたんですけど、終わったあとの疲労感がすごくて、私はまだ3曲の人間だったって実感しました。

──それは大きな経験ですね。

うらら　自分の向上心がどんどん強くなっているのを感じています。最初は歌が好きっていうだけでこの世界に入ったけど、つまずいたり周りの人に助けてもらったりしながらひとつずつなんとかクリアしてきて。今はたくさんの人がSalleyに関わってくれているし、応援してくれる人も増えたので、すべてにおいて上を目指してがんばろうと思っています。22歳まではスーパー怠け者で生きてきたので、自分にもこんなにやる気があったんだってビックリするくらい。

──上口さんはいかがですか？

上口　僕はいろんな曲を書きたいなっていう思いが強くなりました。自分の頭の中にあるイメージを早く形にしたいなって。

──それでいうと今回の作品は初回限定盤と通常盤で表題曲以外の収録曲が異なるから、いろいろなタイプの楽曲を届けられますね。

上口　そうですね。初回限定盤と通常盤でそれぞれの色があるので楽しんでもらえると思います。これからももっと曲を作って、たくさんの人に聴いてほしいですね。