ナタリー PowerPush - Salley
音楽で生きていく決意表明 新作「その先の景色を」
5月にシングル「赤い靴」でデビューし、7月にタワーレコード限定シングル「green」を発表したSalleyが、10月2日にニューシングル「その先の景色を」をリリースする。ほぼ2カ月というスパンで届けられた新作は2人がSalleyとして初めて制作したもので、音楽に対する強い決意が感じられる楽曲に仕上がっている。デビューイヤーを全力疾走中の2人に、シングルのことや現在の心境を語ってもらった。
取材・文 / 丸澤嘉明 撮影 / 上山陽介
現状打破するための楽曲
──前作「green」から2カ月、デビューシングル「赤い靴」からも4カ月と、かなり短いスパンでリリースが続きますね。
うらら(Vo) 普通がどのくらいなのかわかりませんが、ちょうどいいペースでやらせていただいてます。早すぎてついていけないということもないし、もちろん遅いとも思わないですし。
上口浩平(G) 僕はペースは確かに早いなって思うんですけど、CDを出せること自体がありがたいですね。
──「その先の景色を」は2人がSalleyとして初めて制作した楽曲なんですよね?
うらら まさに1作目だったので、Salleyとしてどうやって曲作りするのかっていう方向性がまだ決まってない状態でした。最初は上口くんの歌詞がついた状態でデモが送られてきたんです。でも上口くんに「書き替えていいよ」って言われたので、「じゃあ遠慮なく」と思って全部替えて(笑)。それが、上口くんが作曲して私が作詞するっていう今の制作スタイルにつながりました。
──ちなみにどんな歌詞でした?
うらら なんか、謎の……(笑)。
上口 音に日本語を当てはめて楽曲の雰囲気が出せればいいなっていうくらいのものですね。ただ言葉を置いているだけの感じの。
──初めてうららさんに渡す楽曲として、どういう意識で作曲しました?
上口 僕はそれまで自分の音楽生活にあまり満足していなかったんですね。バンドは解散するし、サポートギターをやったりしたんですけど、自分の音楽ができていないもどかしさがずっと心の片隅にあって。それがすごくつらかったんですけど、そんなときにうららというボーカリストと出会って少し光が見えてきた状態だったので、現状を打破したいという思いで作りました。それまで自分の頭上にあったどんよりとした雲をなくしたいというか。
──バンド時代に作曲していた頃は満足する作品ができていなかった?
上口 正直、満足することは少なかったですね。今思うと全部自分でやりすぎていたというか。どんな曲もボーカルの声と楽曲がマッチして初めて完成すると思うんですけど、当時はボーカルのことを理解しようとしていなかったんですよね。俺はこれがカッコいいと思う、俺の言う通りにやったら間違いない!というスタンスで音楽をやっていたので。そうするとボーカルも不満が溜まりますし、結果的に仕上がる作品はグッドサウンドではないものになってしまって。
──では今作はうららさんの声といかに合うかを意識した?
上口 そうですね。そのときはまだ知り合って間もなかったので、あくまでイメージで。作曲の段階ではなんとなく想像で作ってみて、そこにうららのボーカルを実際に乗せて、それからアレンジで自分なりに調節していきました。最初なのでもちろん手探り感はありましたね。
うらら 私は上口くんに曲を渡されて、単純に歌いやすいなって思ったのを覚えてます。それまで自分の声に自信が持てなかったんですが、楽曲と自分の声が合ってると思ったし、「見つけた!」っていう感じでした。
自分に言い訳をしないための記録
──うららさんは上口さんから受け取った歌詞を「この声を 届けるため 繋いでいくわ」というふうに、音楽に対する自らの決意表明的な内容に変えていますけど、こういう歌詞にしようと思った理由は?
うらら 上口くんに自分のやる気を見せるっていうのもあるし、大阪で応援してくれている地元の友達へのメッセージでもあるし、何より自分自身に対して今のこの決意をしっかりと書き残しておきたかったので。今後うまくいかなくなったときに私が言い訳をしたり逃げたりしないように、迷いもあるけど音楽で進みたいんだっていう気持ちをSalleyの第1作として記録しておこうと思って。だから恋の歌とか哲学的な歌を書こうとは思わなかったですね。
──なるほど。この曲ってSalley自身のことを歌いつつ夢に向かって踏み出そうとしている人の背中を押してくれる歌ですよね。
うらら 「その先の景色を」で言いたいのは、「夢を絶対に叶えよう!」っていうことじゃなくて、「どうなるかわからないけど一歩踏み出してみたらいいんじゃない?」っていうニュアンスなので、最初の一歩を踏み出せない人、踏み出そうとしている人に聴いてほしいですね。
──実際に大学を中退してまで一歩を踏み出したうららさんの言葉だから説得力があると思いました。
うらら あ、でも責任は持てませんよ!(笑)
──上口さんはうららさんがあげてきた歌詞についてどう思いました?
上口 僕は正直歌詞の内容にこだわるタイプじゃないんです。洋楽とかも歌詞の意味は理解してないけど、楽曲と言葉の持つサウンドがマッチしていてなんかカッコいいなっていう聴き方をするので。うららの歌詞はセンスがすごくいいなあって思いましたね。僕にとって理想の響き方をする言葉を選んでいたので、それだけで満足でした。
うらら この曲、実は初めてレコーディングスタジオというものに入って録った曲なので、今聴くと粗いなって思っちゃうんですよ。「わーすごい、これがレコーディングスタジオなんだ」っていうテンションで歌っているので、本当はこの曲がシングルになるのがちょっと嫌だったんです。でも何度か聴いているうちにデビュー前の気持ちを思い出させてくれて。「赤い靴」のリリースから4カ月しか経っていないけど、私はこんなにワクワクしながら歌ってたんだなって。そのみずみずしさも、歌詞の内容も含めて初心に戻してくれたので、今は曲とちゃんと向き合えるようになりました。
──上口さんは楽曲のアレンジで意識したことは?
上口 ヘッドフォンで聴いていたときに、いろいろな楽器の音が鳴っている中で常にうららの発する声がセンターにある感じがしたんですね。彼女の声にすごくエネルギーがあって、前に向かっていくイメージがあったので、ギターの音はすごく簡単になりました。どんな音を当てても合うし、ドキドキしながらアレンジを考えられましたね。全体的にはヘビーになりすぎないように、ライトでドライブ感のある感じを意識しました。
──どんなシチュエーションで聴いてほしいですか?
上口 仕上がりを聴いたら自分が想像してたよりも壮大な感じになっていたので、スケール感のある映画の主人公の気持ちで渋谷の街を歩きながらとかいいかもですね。
──ニューヨークとかじゃなくて渋谷なんですね(笑)。
うらら どれだけ渋谷を歩くのに壮大なイメージを抱いているの?
上口 えーっと……。
──あ、でも地方から上京する人にとっては渋谷ってハードル高いイメージがあるかも。
うらら あーそれならわかりますね。私も新宿の高層ビル群の中でエレファントカシマシさんの「今宵の月のように」を爆音で聴いたことがあるので(笑)。
上口 そんな感じで決意を持って行く場所で聴いてほしいです。
- ニューシングル「その先の景色を」/ 2013年10月2日発売 / Victor Entertainment
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1500円 / VIZL-589
- 通常盤 [CD] 1050円 / VICL-36834
- 期間限定盤 [CD+グッズ] 800円 / VIZL-597
初回限定盤CD収録曲
- その先の景色を
- きみのヒーロー
- 各駅停車
- その先の景色を(Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
- 「その先の景色を」ミュージックビデオ
通常盤CD収録曲
- その先の景色を
- fragile
- green(acoustic studio session)
- その先の景色を(Instrumental)
期間限定盤CD収録曲
- その先の景色を
- その先の景色を(Instrumental)
期間限定盤封入特典
- タブロイド紙
Salley(さりー)
大阪出身のうらら(Vo)と福井出身の上口浩平(G)により2012年に結成された男女デュオ。2013年5月にフジテレビ系アニメ「トリコ」のエンディングテーマ「赤い靴」でデビュー。透き通るようなうららの歌声と哀愁を帯びたロックサウンドで描くオリジナルの世界観が話題になり、同作は「2013上半期USEN HITランキング」のJ-POP部門で1位に輝いた。7月31日にニューシングル「green」をタワーレコード限定でリリースし、全国のタワーレコード5店舗にてミニライブ&サイン会を実施した。10月2日にニューシングル「その先の景色を」をリリース。