ナタリー PowerPush - Salley
大きな期待と少しの不安 エバーグリーンな王道ポップ
うららの歌声に鳥肌が立った自分の感性を大事にしたい
──では続いてSalley結成までの経緯を教えてください。
上口 上京していろいろな人に相談をする中で女性ボーカルと組んでやってみたいと思っていたんですね。それである日知り合いが「いい娘がいるから遊びにおいで」って誘ってくれたライブを観に行ったんですけど、そこで弾き語りをしていたのがうららだったんです。
──うららさんのライブを観て、この子しかいないという感じだったんですか?
上口 この子しかいないっていうよりは……この子しかいないという感じですね(笑)。
うらら どっちですか(笑)。
上口 僕が聴いたのは静かな楽曲だったんですけど、その中でも抑揚をつけて自分の感情の起伏を表現していたんです。静かなんだけど熱いものがあって、思わず鳥肌が立ちまして。それが一番大きかったかもしれないです。彼女の歌声を聴いて鳥肌が立った。自分のその感性を大事にしようと思って。
うらら ちょうどその頃、私はとにかく悩んでいたんですね。勢いで東京に出てきたのはいいけれど、自分がやりたいポップスのシンガーなんてたくさんいる中で私なんかが必要とされるのかなって。そんなときに上口くんが声をかけてくれたので、自分の声を誰かが必要としてくれているということがすごく心強くて。その時点である程度心は決まっていたんですけど、後日上口くんに送ってもらった曲を聴いて、自分が歌っている姿が想像できたんです。それでこの人とやれば間違いないという確信を持つことができて、すぐにコンビを組むことに決めました。
──Salleyという名前はアイルランド民謡の「Down by the Salley Gardens」に由来するんですよね。
うらら はい。私が自分の声で悩んでいるときに、上口くんが「うららの声は透明感があって、アイリッシュの質感がある」って言ってくれたんですね。それが私たちのすべての始まりだから、2人でやるんだったら私に光を射してくれた「アイリッシュ」っていう言葉をキーワードにできないかなと思って。それで私が好きなアイルランド民謡をいくつか並べてこの曲に決めました。
──いくつかある中でこの曲を選んだ理由は?
うらら この曲の世界観がすごく好きなんです。人はみないろいろな過去を抱えているけれど、後悔するんじゃなくてサラッと振り返るっていう感じが、私の生き方とリンクするなと思って。
──うららさんは過ぎ去った出来事は気にしない性格ですか?
うらら 気にはしないんだけど、ずっと心のどこかには残っていますね。忘れたくはないです。
──上口さんはこの名前に関していかがですか?
上口 言いやすいし字面もかわいいので、「じゃあそれで」って感じでした。
うらら そうそう、「Salley」なら噛みやすい上口くんでも言いやすいんじゃないかと思って。でもこの間、ついにSalleyも噛んでましたけど(笑)。
Salleyのうららとして、どんな楽曲でもさわやかに聴かせたい
──今回の「green」は非常にポップでさわやかな楽曲ですね。この曲はどういうところから着想していったんですか?
上口 Salleyの場合、まず僕が曲を作ってそれにうららが歌詞をつける形なんですけど、この曲の前に作った「赤い靴」が暗すぎるっていう理由でお蔵入りになってしまっていたんです。
うらら 確かに「赤い靴」は最初デモで聴いたときはすごく暗い印象だったんですよね。
上口 なので、この曲は「疾走感」をテーマにしました。僕は8ビートの速いテンポよりもシャッフルのほうがうららに合うと勝手に思っているんですけど、この曲はうららが草原をキャッキャ言いながら駆け抜けているイメージですね。
うらら キャッキャなんて言いません(笑)。でも私も少女が明るい緑の中にいるイメージが浮かんで、すぐに「green」っていうワードが出てきました。桜の木が葉桜になって、急に全部緑になって街が緑色に染まっていく感じや、青々しい緑に包まれている感じを歌いたいなと思って。
──歌詞の内容としては恋愛ソングですよね。
うらら そうですね。あまりこういうことは言いたくはないですけど、恋って始まりがあれば終わりがありますよね? 期待と同様に不安もあると思うんですけど、この曲では不安よりも楽しい今を大事にしようっていう前向きな気持ちを優先させました。この曲の「green」には「まだ青い」「まだまだ始まったばかりだぞ」っていう意味も込められているんです。
──なるほど。今作ではいしわたり淳治さんと歌詞を共作されていますがいかがでした?
うらら 私、スーパーカーが大好きだったので、いしわたりさんが一緒に作っていただけるなんて、こんなに幸せなことがあっていいのかって思いました(笑)。私が作詞したものをいしわたりさんが調整するという形だったんですけど、私のイメージを非常によく汲み取ってくださって想像以上のものが返ってきましたね。恋っていいよね、というだけでは終わらないところまで表現してくださって本当に感謝しています。
──確かにSalleyの楽曲はいわゆる元気ソングではないですよね。「赤い靴」でも相反する2つの感情を描いて痛みやもどかしい気持ちを歌っていましたし。でも、そういうモヤモヤした感情もうららさんの透き通った声で歌われるとスッと心に入ってくると感じました。
うらら すごくうれしいです。それが私がSalleyのうららとして歌っていく上で一番大事にしたいことなんです。たとえ歌詞がドロドロしたことを言っていたとしても、さわやかに聴かせることが自分の中のテーマなんです。私が歌うことで「Salleyの楽曲だね」って言われる感じになったらいいなって。
──歌詞を書く上で意識していることはありますか?
うらら 言葉の響きですね。例えば濁点が入りすぎると、言葉の音が強すぎて声やメロディに勝ってしまうと思うので、ちょうど中間をとりたいというのは常に意識しています。
──上口さんは曲を作る上で意識していることはありますか?
上口 僕が曲を作る場合、うららの声を想像しながら作るのとあえて意識しないっていう2パターンあるんですけど、「green」に関しては前者ですね。それと自分もギターを弾くので、うららの声だけでまとめずに要所要所でギターのリフも散りばめたいという気持ちはありますね。Salleyをやる中でうららの声をベースにしつつ、マイルドになりすぎないように自分のギターを出し入れしてとがったものにしたいと思っています。
──楽曲について2人で話し合うことはあるんですか?
うらら それはほとんどないですね。上口くんのことを信頼しているので、いい意味で曲に関しては丸投げしています。アレンジの段階でどう変わったのか知らないんですよ。最初にデモを聴いて、自分のレコーディングのときになって「なんかすごいことになってる!」って(笑)。それをちょっと楽しみにしている部分もありますね。
収録曲
- green
- 愛の言葉
- 赤い靴(acoustic studio session)
「Salley×TOWER RECORDS」
FREE LIVE TOUR
- 2013年7月31日(水)東京都 タワーレコード新宿店
- 2013年8月3日(土)愛知県 タワーレコード名古屋近鉄パッセ店
- 2013年8月4日(日)福岡県 タワーレコード福岡店
- 2013年8月6日(火)北海道 タワーレコード札幌ピヴォ店
- 2013年8月10日(土)大阪府 タワーレコード梅田NU 茶屋町店
Salley(さりー)
大阪出身のうらら(Vo)と福井出身の上口浩平(G)により2012年に結成された男女デュオ。2013年5月にフジテレビ系アニメ「トリコ」のエンディングテーマ「赤い靴」でデビュー。透き通るようなうららの歌声と哀愁を帯びたロックサウンドで描くオリジナルの世界観が話題になり、同作は「2013上半期USEN HITランキング」のJ-POP部門で1位に輝いた。7月31日にニューシングル「green」をタワーレコード限定でリリース。同7月31日より、全国のタワーレコード5店舗にてミニライブ&サイン会を実施する。