一番大事なことは愛
──歌詞は桜田さんと辻村さんの共作ですね。
デモを聴いてから考えたんですけど、今までは自分のことを知ってくれてる人だからこそ届く内容というか、余白みたいなものを残して作詞していたんです。でも今回は全世界に向けてリリースする曲だし、僕のことを知らない人にも聴いてもらえるかもしれない。そう考えたときに、僕の思いを薄めずに広範囲の人たちに届く言葉ってどんなものだろうと悩んで。辻村さんのアイデアを借りて、共作という形で作詞しました。辻村さんは僕よりも音楽や歌詞に対して日々向き合っている人だから、心強かったですね。
──辻村さんとはどんな話し合いを?
「ここの言葉を2、3パターンで迷ってるんですけど、どれだったら伝わりやすいですかね?」とか。戦略を立てるって言ったらあれですけど、世界へ発信するうえでの伝わりやすさを考えていきました。できあがった歌詞は僕の強い思いが、正しい言葉で表現できていると思います。
──2Aの「パレード / カレード」「bot / ぼっと」「ネオン / レモン」など韻を踏んでいるパートが聴いていて気持ちいいですが、ここはどういった形で作っていったんでしょうか?
ラッパーではないので言葉遊びに近い感じですけどね。でも、今までの楽曲でもそういう言葉遊びのような歌詞を考えたことがあったので、それと同じ感じで。あとは構成ですね。僕は2Aを1Aやほかのパートと違う展開にするのが好きで、そういう部分も辻村さんと相談しながら作っていきました。2Aの歌詞はほかの部分と違ってあえて少しだけ現実感を漂わせて、ちょっとネガっぽい要素が入っているのもポイントです。
──確かにほかのパートは未来に向けた明るい内容の歌詞ばかりですよね。
壮大なことばかり言いすぎても刺さらないのかなって。結局は現実の世界がみんなの居場所だと思うので、そういう部分を表現したかったんです。ハッとするというか、よりみんなに届く言葉が欲しいなと思って。今回は全体を通して聞き手のことを考えながら、どんなふうに聴いてほしいかというところを念頭に置いて作りました。今までは自分が何を伝えたいかが先行していたんですけどね。
──なるほど。桜田さんがこの曲を通して特に伝えたいメッセージはなんですか?
愛ですね。僕は世の中に愛と優しさ以外必要ないと思っているので。これから自分がどういう曲を作っていくのかわからないですけど、ちゃんと愛を歌える人になりたいと思ってます。「NOISE」や「FICTION」という曲はフラストレーションが溜まっていた20代後半に作った曲なので歌詞も尖った感じですけど、今は鋭く尖った言葉よりは愛を伝えたいモードなのかなと思います。だから「MIRAI」のような曲ができたのかなと。
──そう思うと「MIRAI」はやはり今の年齢だからこそできあがった曲なんですね。若い頃は反骨精神剥き出しだったけど……という方も多いですし。
反骨精神……逆に今の時代に愛を歌うことほど反骨してることってないと思いますけどね(笑)。愛や優しさを全面に出すと偽善者だとか嘘っぽいって言われるし。自分に正直に生きているのに、この職業なだけで勘違いされやすいんです。「愛しているよ」という言葉が軽く捉えられたり、芸能人ってだけで信じてもらえなかったり。でもちゃんと伝えることをあきらめずにいたいんですよね。ファンの人に音楽を通して「本当にあなたのことを考えてる」と伝えたい。それを誠実に伝えるにはレコーディングする瞬間だけではなくて日々の生き方が大事なのかなと思いますし、「MIRAI」には自分の愛を込めることができたんじゃないかなと思います。
──桜田さんの愛、「MIRAI」を通してリスナーの方に伝わると思います。
だといいんですけどね(笑)。結局自分のエゴで、最後は受け取り側が判断することなので。
世界中の人たちの暗い気持ちを明るく
──さて、5月からはZeppツアーが開催されます。昨年に続いて2度目のZeppツアーになりますが、今回はどんなツアーにしたいですか?
2度目ではあるんですけど、今回はZepp Haneda(TOKYO)に初めて立つので楽しみですね。今までのライブよりもクオリティを上げたいし、僕なりの世界観を表現したいです。ライブを観終わったあとも浸れるような。
──昨年のZeppツアーでは桜田さんがステージの演出面を監修されていましたが、今回のご予定は?
今回も制作スタッフの方々にアドバイスをいただきながら、「この曲ではこういうライティングがいい」と伝えるなど、表現したいことが実現できるように準備しています。
──それと、オフィシャルサイトにはお客さんの声出し解禁を検討していると記載がありましたね。声出しのありなしでは、感覚的に違いますか?
僕はお客さんの声が聞こえなかったことでやりづらさを感じたことはあまりないですね。最初はびっくりしましたけど、無言ということ自体よりも、みんな本当は声を出したいのにルールを守って無言を貫いていることへの熱さを感じてしまって。でもやっぱり声を出したいという意見が多いので、みんなが楽しめるならそうしたいなと思います。
──メジャーデビュー発表時のコメントに「デビューということでひとつ夢が叶ったように思えますが、これはまだ夢の終わりではありません」という1文がありましたが、今後の夢や展望があれば教えてください。
抽象的な答えになりますけど、自分も音楽に救われてきて多くのことを学んだので、音楽を通して僕の価値観や思いを少しでも拾い上げて、その人の人生に生かしてもらえたらと思います。そのためには、今回のメジャーデビューはチャンスだと思ってます。今僕のInstagramのフォロワーの方が140万人いて、140万人の世界の皆さんとつながれている自分をどう利用するかと考えたときに、メジャーデビューして世界へ音楽を届けたいと思ったんですよね。世界中の人たちの暗い気持ちを僕が明るくできるなら、このチャンスを逃すことはできないなと。
──桜田さんがUVERworldさんやじんさんの音楽に救われて誠実に生きられているように。
正直おこがましいと思うし、僕に何ができるんだという思いはずっとあるんですけど、それでも僕の音楽で救われたと言ってくれるファンの皆さんのことは信じられる。その人たちがいなければ自分の性格上、ずっと音楽をやろうとは思えなかった気がします。自分のことを信じて愛してくれている人たちがいるから、音楽ができているし、これからも続けたいなと思います。
ツアー情報
Dori Sakurada Debut Tour 2023 "Retrograde Satellite"
- 2023年5月26日(金)神奈川県 KT Zepp Yokohama
- 2023年6月16日(金)愛知県 Zepp Nagoya
- 2023年6月17日(土)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2023年6月29日(木)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
プロフィール
桜田通(サクラダドオリ)
1991年12月7日生まれ、東京都出身。2005年にドラマ「瑠璃の島」にて映像デビュー。ミュージカル版「テニスの王子様」の主人公に抜擢され、2006年から2007年まで越前リョーマ役を務めた。その後もさまざまな話題作に出演。近年はMBS系ドラマ「コーヒー&バニラ」、世界的に人気を博しているNetflix「今際の国のアリス」シリーズへの出演をきっかけに、グローバルな活動に注力している。 現在テレビ東京で放送中のドラマ「クールドジ男子」では主演を務め、6月23日に公開される「大名倒産」で映画では初となる時代劇に挑戦する。また2023年5月に「MIRAI」を配信リリースし、ポニーキャニオンが運営するデジタルディストリビューションサービス・early Reflectionによる新レーベル・Pandrecよりメジャーデビューを果たした。5月から6月にかけて全国4カ所のZepp会場を回るライブツアー「Dori Sakurada Debut Tour 2023 "Retrograde Satellite"」を行う。
SAKURADA DORI -桜田通- Official Site