桜田通が世界を見据えてメジャーデビュー|「MIRAI」に込めた愛と優しさを語る (2/3)

メジャーデビューの印象が変わった

──少し前だと「メジャーデビュー=すごい!」というようなイメージがありましたけど、今はそういう感覚を持っている人が減った印象もあります。

ですよね。個人でネットに曲を上げてそれがバズる、みたいなことも最近ではよくある話じゃないですか。だからメジャーデビューが正義ではないというか。タイアップがなくても余裕で武道館を埋めちゃう人もいるし。

──とは言えメジャーデビューを果たすことで実現しやすくなることの1つがタイアップなのかなと思いますが、こういうタイアップの曲を作ってみたい、歌ってみたいという思いはありますか?

これは自分の強みの1つだと思うんですけど、何かの世界観に染まることが好きなんです。もちろんこだわりはあるんですけどね。「メジャーデビューして自分の好きな音楽ができなくなっちゃった」という話をよく聞きますけど、なんならそういう経験もしてみたい。ガチガチに世界観や歌詞を指定されて、その中で自分がどんな表現をできるのか試してみたいんです。そう思えるのはたぶん芝居の世界がそうだからなんですよね。役を演じているときは自分の言いたいことを言えないときもあるし、なんなら自分の気持ちと反していることをしなきゃいけないときもある。これまでは自由に音楽をやってきましたけど、自由じゃない楽曲制作にも挑戦してみたいなって。やってみて強いストレスを感じるようならやらなければいいだけなので、まずは一度経験してみたいですね。

桜田通

──ガチガチに条件や世界観が指定された状態で、桜田さんからどんなものが生み出されるのか楽しみです。

僕の勝手なイメージなのでどうなるのかわからないですけどね(笑)。でも関わるスタッフの人数が増える分、もっといろいろな指示や指摘が入ると思っていたけど、今回の製作を通して、本当にメジャーデビューの印象が変わりました。もちろんアドバイスはくださるんですけど、最終的には僕の思いを尊重してくれるので、なんて温かい方々なんだろうと思うし、僕も皆さんの言葉に耳を傾けたくなります。お互いがお互いの意見を聞ける環境で、幸せですね。

UVERworldやじんの価値観に救われてきた

──桜田さんは昨年の12月に31歳の誕生日を迎えられましたが、もし10年前の21歳の頃にメジャーデビューしていたら、周りの環境もご自身の思いもだいぶ違いそうですね。

違いますね。ちょうど21、22歳の頃がイギリス留学から戻ってきたタイミングで、事務所を辞めてバンドだけをやりたいというモードだったんですよ。でも知り合いの音楽家に止められて。芝居で培うことができた経験もあるので、今ならその意味がわかる気がします。じんさんにはメールで「君は歌い続けたほうがいいね」という言葉をもらったことがあって。

──人生のターニングポイントで音楽家の方のアドバイスを受けていたと。

そうですね。信頼してない人から何か言われても「この人に何がわかるんだろう」と思ってしまいますけど、結果を出して、先を歩んでいる人の言葉は、自然に入ってきますね。そのおかげで変に擦れずにここまで来れたと思います。UVERworldさんもじんさんもそうなんですけど、この人たちの音楽を真正面で受け止めてずっと感動できる自分でいたくて。何かに手を抜いて、ずるく生きていたら、きっとこの人たちの美しい音楽や言葉に感動できなくなる瞬間がくるんじゃないかと。それが怖くてここまで誠実に生きてこれたところがあるんですよね。

桜田通
桜田通

──確かに歳を重ねていくごとに変に曲がってしまったり、擦れてしまったりということもあるでしょうしね。

こういう時代だし、こういう業界にいるから余計そう感じるのかもしれないですね。悪い誘いや恐ろしいなと思う瞬間も正直ありましたけど、そういうところに染まらず、くだらないと思えるのは、きっと真面目にクリエイティブしている人たちを見て、その人たちの価値観に救われてきたからだろうなと思います。

──クリエイターの言葉やその方が生み出した作品のおかげで、染まらずにいられたってすごいことですね。

本当にそう思いますね。ありがたいです。

未来を明るく、よりよくしたい

──続いて新曲「MIRAI」について聞かせてください。世界へ発信していくという意気込みを感じられるスケール感のある曲で、サウンドプロデュースはこれまでもタッグを組まれている板井直樹さんが担当されています。桜田さんは作詞に携わっていますが、板井さんに何かリファレンスを渡したり、イメージを伝えたりはしましたか?

今回に関してはジャンルから決めました。今まではバンドサウンドの曲やEDMっぽい曲、ラップを取り入れた曲といろいろやってきたんですけど、今回はフューチャーベースにしたいなと。これまで出した曲だと「限りある日々」がサウンドの感じは近いかな。曲を作り始めるときに「未来を明るくしたい」というプラスの感情しかなくて。ロックは合わない気がして、フューチャーベースなら自分が抱いた感情をうまく乗せられると思ったんです。それで直樹さんに「今回はフューチャーベースで、なおかつ今っぽい流行りの音色を取り入れつつ、自分の思いを乗せたい」と伝えました。

──「MIRAI」の作曲は辻村有記さんが担当されていますが、これはどういう経緯で決まったんでしょう?

直樹さんの中でいろいろ考えてくださって、辻村さんにお願いすることになりました。僕はご一緒するのが初めてだったんですけど、直樹さんが選んだ方なら大丈夫だろうという信頼があったので。

──デモを受け取ったときの印象はいかがでしたか?

率直に言うと「けっこう難しいな」と思いました。デモの段階ではもっとフューチャーベース感が強くて。いい意味でやりたいことを詰め込んだ感じで、僕はいいと思ったんですけど、音楽にあまり触れてこなかった人からすると難解な曲なんじゃないかなと。そのあとみんなで意見を出し合って最終的に今の形になった感じですね。

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