ナタリー PowerPush - サカナクション
初ドラマ主題歌で得た新手法 2012年第1弾シングル「僕と花」
自分の音楽に自信を持ったことはない
──曲調は歌を引き立てるようなものになってますね。
はい。テレビで流れることを考えて、歌を聴かせるものにしたかったんで。それから不特定多数の人が聴くものということを考えました。バンドとしては聴かれないと思ったんですよ。男性ボーカルものと思われるだろうと。そのときに歌として成立していないと、ただ通り過ぎてしまうものになる。もちろん毎回そうですが、歌のメロディとしてちゃんと成立させないといけない。あと懐かしさを感じさせるもの、そして春だけど切なさを感じさせるもの。
──作品で言うと「kikUUiki」を出したあとぐらいから、歌に対する意識が高まっているという印象があるんですが、自覚はありますか。
ああ……意識が高まったというよりは、技術が上がってるのかな。ボーカルというよりは作曲の。歌を引き立たせるようなスキルを身に付けることができたかもしれない。人に曲を提供する機会が増えて、自分の曲を俯瞰で見ることができるようになった。あと、星野源さんとの出会いも大きいですね。あの人は1人でアコギ持って闘ってるから。料理もそうだけど素材、具体的には曲と歌が良いものは素晴らしいんですよ。その感覚は年々強くなってるかもしれない。
──サカナクションの音楽は、あくまでも山口一郎の歌が中心であると。
ずっとそうだったから。アコギで歌えない曲はサカナクションでやらないというルールがずっとあったから。
──なるほど。ボーカリストとしての自信がついてきて、歌モノとしての求心力が高まっているのかなとも思いました。
いや自信はないですね! 自分が作った歌がたくさんの人たちに聴かれると思うと、怖くないですか?
──私はミュージシャンじゃないから、よくわからないです(笑)。
そうか。でも僕もミュージシャンじゃないですよ。
──じゃあ、なんですか?
なんだろう……ミュージシャンじゃなければ、僕はなんだろう……。でも自分の音楽に自信を持ったことはないですね。常に恐怖心がある。
歌モノの人たちに負けたくない
──例えば、以前だったら歌えなかったものが歌えるようになったとか、そういうことはないですか?
ああ……自覚はないですね。そういうところが増えてくれたらいいとは思うけど。ただ結果が出て、注目されるようにはなったじゃないですか。例えばナタリーだったら、掲載されたニュースのアクセス数やRT数が多いとか。
──実際にダントツで多いらしいですよ。
そうやって注目されることで、実際にできることが増えてきたという実感はあります。
──「僕と花」は、歌モノとしてすごく完成度が高いと思います。それは山口くんが培ってきた自信と成長の結果ではないかと。
ああ、そうですかねえ……負けたくないなっていうのはありますよ、歌モノを作ってる人たちに。僕が洋楽を聴くときも、旋律が良いかどうかっていうのは、聴く際に重要度が高いんです。そこで闘っているわけだから、勝ちたいなというのは、ありますね。
──歌い手としてのタイプやスキル、自信度によって、音楽性が規定されることも多いと思うんですよ。だから、特に初期サカナクションの音楽は山口くんがボーカリストとしてまだイマイチ自信を持てなかったから、歌以外のサウンドやビジュアルに凝って作り込んだものになったけど、自信がつくことで歌モノとして勝負できるようなものになってきたのではないかと。
ああ、なるほど……重要性に気付いてきたのかもしれないですね。メロディが強いとか歌がうまいヘタではない、最初に与える印象だったり初期衝動だったりの重要性を意識し始めたのではないかと。
──良いボーカリストってなんだと思います?
人となりが見えないと僕は好きじゃないですね。斉藤和義さんとか星野源さんとか、初期のハナレグミとか。すごく日本的というか人間味があるし。良い歌だなあと思いますね。飾られてないというか。岸田(繁)さんもそうですね。人となりが見えることで、曲や言葉の説得力が増すというか。なるほどなと思わせる。そういうふうに歌える人は強いと思います。僕もそうありたいと思うけど、なかなか難しい。
CD収録曲
- 僕と花
- ネプトゥーヌス
- ルーキー(Takkyu Ishino Remix)
※初回プレス分のみ20ページブックレットが付属。通常形態のブックレットは8ページ。
「僕と花」
関西テレビ・フジテレビ系ドラマ「37歳で医者になった僕 ~研修医純情物語~」主題歌
ロックアプリ「ROCKFun」
ロックアプリ「ROCKFun」では山口一郎インタビューの別バージョンを公開中! そのほかにも音楽コンテンツを随時更新!
アプリダウンロードはこちらから
対応端末:Androidスマートフォン(iPhone向けアプリも今後提供予定)
ロックアプリ「ROCKFun」詳細はこちらから
サカナクション(さかなくしょん)
山口一郎(Vo, G)、岩寺基晴(G)、江島啓一(Dr)、岡崎英美(Key)、草刈愛美(B)からなる5人組バンド。2005年より札幌で活動開始。ライブ活動を通して道内インディーズシーンで注目を集め、2006年8月に「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2006 in EZO」の公募選出枠「RISING★STAR」に868組の中から選ばれ初出場を果たす。2007年5月にBabeStarレーベル(現:FlyingStar Records)より1stアルバム「GO TO THE FUTURE」、2008年1月に2ndアルバム「NIGHT FISHING」を発表。その後、初の全国ツアーを行い、同年夏には8つの大型野外フェスに出演するなど、活発なライブ活動を展開する。2009年1月にVictor Records移籍後初のアルバム「シンシロ」をリリース。2010年3月に4thアルバム「kikUUiki」を発表し、同年10月に初の日本武道館公演を成功させる。2011年には5thアルバム「DocumentaLy」をリリースし、同作のレコ発ツアーの一環で初の幕張メッセ単独公演を実施。約2万人のオーディエンスを熱狂させた。2012年5月に初の書き下ろしドラマ主題歌を含むシングル「僕と花」を発表した。