ナタリー PowerPush - さかいゆう×山崎まさよし

いい音楽の作り方

さかいゆうの約1年ぶりとなるシングル「僕たちの不確かな前途」。本作の表題曲のレコーディングには、さかいの事務所の先輩でもある山崎まさよしをはじめ、山崎のライブに欠かせない江川ゲンタ(Dr)、中村キタロー(B)が参加している。ベテラントリオの演奏力と森雪之丞による詞を取り入れた楽曲は、本人曰く「サムクックとスティービーワンダーと忌野清志郎とエイミーワインハウスがセッションした」ようなグルーヴィな青春ソングに仕上がった。

今回ナタリーでは、さかいと山崎による対談の場を設置。レコーディング以来2カ月ぶりに顔を合わせるという2人が、慣れ親しんだ事務所内で和気あいあいと音楽談義に花を咲かせた。

取材・文 / 鳴田麻未 撮影 / 佐藤類

さかいは酔うと分析が始まる

左から山崎まさよし、さかいゆう。

山崎まさよし 最近飲んでる?

さかいゆう 飲んでますよ。焼酎とか飲みたいんですけど、日本酒の頭痛くなる感じが欲しくて、日本酒を飲んでます。なんか、もうベロベロに酔っ払いたい、この世のすべてを忘れてしまいたいっていうときがたまにあるんですよ(笑)。

山崎 お前本当に酔うとグダグダだもんな。

さかい あはは(笑)。すみません。ちょっと迷惑かけたことが1回だけありますね。

──え、そうなんですか?

山崎 飲み方がすごくて……。確か焼酎をレッドブルで割ってたな。元気になりたいのか、デロデロになりたいのか。

さかい あのときだけですよ! でも俺ね、ヤマさんの酒の失敗談もけっこう聞いてますよ。

山崎 いや、俺はもうひと通り全部やってきましたんで。

──ははは(笑)。

山崎 さかいは、酔うと分析が始まるよね。音楽的なリサーチがすごいね。

山崎まさよし

さかい ヤマさんは分析しなさすぎなんですよ。感覚でやってるから。

──お2人ってそのへんは真逆なんですか?

さかい 超逆だと思いますね。ヤマさんは、ナチュラルにスタジオに入ってバッて演奏して「どう? よろしく!」みたいな(笑)。僕はそれよりプロデューサー気質なのかもしれないですね。

山崎 ああ、そうかもね。

さかい そう。ヤマさんはプロデューサーを困らせるほうだから、アーティスト気質だけど。

山崎 あ、プロデューサーを困らせたいっていうのはあるかも。

さかい 驚かせたいとかね。

山崎 そうそう。それはあるかもしれないね。もう分析しとるやん(笑)。

ヤマさんって“絶対リズム感”がある

──山崎さんがギターを弾いた、新曲「僕たちの不確かな前途」のレコーディングはどんな感じだったんですか?

さかい 自分のプロジェクトのときは“表現者”って感じかもしれないですけど、僕のときは“スタジオミュージシャン”でしたよ。僕が打ち込んできた指定のフレーズをまずはそのままやってくれて、そこから「こっちのほうがええんちゃう?」とか「もうちょっと跳ねた感じで」って足していった感じですね。だから、生意気な言い方かもしれないんですけど、すごいいい仕事していただいて。で、終わったあとヤマさんが「おい、さかい。お前細けえわ!」っつって(笑)。

山崎 あはは(笑)。

さかい それまで一切文句言わずにいたから、「ああ、ヤマさんこんな細かいことも聞いてくれるんだ」と思ってました。

──このレコーディングには、山崎さんだけでなく江川ゲンタ(Dr)さん、中村キタロー(B)さんという“山崎まさよしトリオ”が参加しました。さかいさんは現場を共にしてみて、このバンドの魅力はどんなところだと思いました?

さかい このトリオでずーっとやってるからか、リズムが部分的に若干ズレてても、2拍後くらいには不思議と元に戻ってるんですよね。で、そのズレをPro Toolsで直すとなんか合わなくなるんですよ。それはやっぱり“味”といいますか、コンピュータじゃ絶対できないですからね。波形でちょっとずつずらしていってもダメで、やっぱり揺れに感情がないと。

さかいゆう

──揺れに感情。

さかい そう。ちょっと走ったから合わせる、みたいなのがないとダメなんですよね。

──最初からこのバンドにお願いする時点で、そういったことは望んでた?

さかい そうですね。でもヤマさんはお2人よりももっと真面目にやってくれることを想定してましたけどね、実は。なんか……分析していいですか?

──存分に(笑)。

さかい ヤマさんってね、“絶対リズム感”があるんですよ。テンポがあんまり揺れない人なんですよね。で、お2人はいい感じに人間グルーヴに則って揺れていくんですよ。でもこれは仕方のないことなんです。例えると、マイルス・デイビスなんかは絶対リズム感を持ってる人で、トニー・ウィリアムスは走ったり戻ったりする。ヤマさんはたぶんマイルス・デイビスとかそっち系なんですよね。

山崎 (ゆっくり頷きながら)……もうなんて言っていいかわかりません。

──(笑)。山崎さんは、さかいさんから誘われてどう思いました?

山崎 とりあえず福耳のプロデュースをしてるときに細かさはわかってたんで、覚悟はしてまして。でも直前にもらったデモテープがすごくざっくりで、さかいにしては珍しいなっていう。要はどこにも気遣わず、自分の曲としてストレートに作ってたんかな。だから曲自体も含めてすごく楽しそうかなって思いました。

さかい ヤマさんのブルース感が欲しかったんですよね。Bメロのギターとか、あれは僕じゃ無理ですから。もっとアタッキーな、ファンキーな感じになっちゃう。ヤマさんはファンクも弾けるけど、ブルースっぽくも弾けるから。

さかいゆう ニューシングル「僕たちの不確かな前途」 / 2013年4月24日発売 / アリオラジャパン
「僕たちの不確かな前途」
「僕たちの不確かな前途」期間生産限定盤[CD2枚組] 1890円 / AUCL-127~8
「僕たちの不確かな前途」通常盤[CD] 1223円 / AUCL-129
CD収録曲
  1. 僕たちの不確かな前途
  2. ONE WOMAN
  3. 100%(オリジナル:小泉今日子)
  4. CREEP(オリジナル:RADIOHEAD)
  5. 僕たちの不確かな前途(Backing Track)
期間生産限定盤ボーナスCD「Sakai Yu Acoustic Live Selection」収録曲
  1. How Beautiful (Live ver.)
  2. ウシミツビト(iTunes Live from Tokyo ver.)
  3. train(iTunes Live from Tokyo ver.)
  4. ストーリー(iTunes Live from Tokyo ver.)
  5. 君と僕の挽歌(Live ver.)
さかいゆうスぺシャルライブ@2.5D
~4.24「僕たちの不確かな前途」リリースセッション~
渋谷2.5Dスタジオ観覧にナタリー読者をご招待!

2013年4月24日(水)東京都 2.5Dスタジオ
OPEN 20:30 / START 21:00 / END 23:00(予定)
2.5Dスタジオ:渋谷PARCO PART1 6F
募集期間:2013年4月19日(金)~4月22日(月)0:00

※当選者の発表は、当選メールの発送をもって代えさせてきただきます。

<生中継>
山崎まさよし×元ちとせ×さかいゆう 出雲大社スペシャルライブ

2013年6月3日(月)島根県 出雲大社 東神苑特設ステージ
OPEN 18:00 / START 18:30
<出演者>
山崎まさよし / 元ちとせ / さかいゆう 料金:全席指定 6300円

さかいゆう

さかいゆう

高知県出身の男性シンガーソングライター。20歳で上京し、独学で音楽を始める。2001年に単身渡米しロサンゼルスでストリートパフォーマンスを行いながら、ピアノを習得。帰国後の2004年頃よりソロ活動を本格化。2009年10月にシングル「ストーリー」でメジャーデビュー。胸に打ち響く歌詞、透明感あるハイトーンボイスが年齢や性別を超え熱く支持されている。また客演も多く、これまでにマボロシ、KREVA、RHYMESTERなどさまざまなアーティストとコラボレーションを行っている。2012年5月にメジャー通算2枚目となるフルアルバム「How's it going?」を発売。2013年4月には1年ぶりのシングル「僕たちの不確かな前途」をリリースする。

山崎まさよし(やまざきまさよし)

1971年生まれ、滋賀出身の男性シンガーソングライター。1992年から横浜を中心に弾き語りによるライブ活動をスタートさせる。1995年9月にシングル「月明かりに照らされて」でデビュー。1997年1月にリリースしたシングル「One more time,One more chance」のヒットで一躍ブレイクを果たす。また、役者としても映画「月とキャベツ」やドラマ「奇跡の人」、CMなどに出演し高い評価を獲得している。2013年待望の新曲「はじまりのDing Dong」(今秋公開予定の映画「キタキツネ物語~明日へ」オープニングテーマ)はiTunes Storeにて完全独占配信中。2012年末より開催中の全国ツアー「YAMAZAKI MASAYOSHI TOUR 2012-2013 "SEED FOLKS"」は5月10日大阪・フェスティバルホール(追加公演)でファイナルを迎える。

山崎まさよし「はじまりのDing Dong - Single」

「YAMAZAKI MASAYOSHI TOUR 2012-2013 "SEED FOLKS"」から、3月16日(土)の神奈川県民ホールの模様をWOWOWで放送決定!

2013年5月12日(日)21:00~ WOWOWライブで放送!