斉藤朱夏が11月11日に2ndミニアルバム「SUNFLOWER」をリリースした。
本作のコンセプトは“太陽のように眩しい一枚”。これまでに引き続きハヤシケイ(LIVE LAB.)とタッグを組みながら、DJみそしるとMCごはんや畑亜貴といった作家陣を迎えて制作され、斉藤の弾ける笑顔が浮かぶような、陽のエネルギーに満ちた作品となっている。
音楽ナタリーでは斉藤にインタビューを行い、このミニアルバムが生まれた経緯や全6曲に込めた思いを語ってもらった。
取材・文 / 中川麻梨花 撮影 / 有泉伸一郎
落ち込んでる暇はない!
──約1年ぶりのリリースということでひさしぶりに取材させてもらいますが、2020年はどのようなことを考えながら過ごしてきましたか?
前半はとにかく落ち込みましたよ。東名阪ツアーもなくなってしまって、「えっ、どうしよう……」みたいな。
──3月にツアーがスタートするはずだったんですよね。ちょうどその頃に新型コロナウイルスが本格的に広がり始めて……。
初めてのツアーということで、私にとってはすごく大きな挑戦だったんです。だからこそ、それがなくなってしまって戸惑う気持ちはありました。でも、立ち直りは早かったですね。楽しいものや元気、夢を人にいっぱい伝えたいのに落ち込んでる暇はない!と思って。
──その気持ちが今回の「SUNFLOWER」というミニアルバムにも反映されているかと思います。“太陽のように眩しい一枚”がコンセプトということで、突き抜けて明るい作品になりましたね。
去年リリースしたデビューミニアルバムは、けっこう衝撃的な作品だったと思うんです。みんなが思っているであろう「しゅかしゅーって元気いっぱいで、悩みとかなさそう」というイメージに対して、「いやいや、本当はめちゃくちゃ泣くんです」って本当の自分を見せるような……。
──これまで隠してきたような弱さをさらけ出すような作品でしたよね。
でも2ndミニアルバムでは歌を通してみんなを元気にしたいと思ったし、「元気いっぱいの斉藤朱夏もちゃんといるよ」ということを伝えたかったんです。弱い部分や不器用なところもあるけど、やっぱり元気で活発なところもあるから。デビューミニアルバムと2ndミニアルバムを合わせると、斉藤朱夏という人物がわかっていただけるようになってるんじゃないかなと。
──デビュータイミングで弱い自分をさらけ出せたからこそ、今回斉藤さんのパブリックイメージのど真ん中をいくような、思いっきり明るい作品を作れたのかなという気がします。
そうなんです。みんなに「私もこういう部分があるんだよ」と伝えて、それをみんなが受け入れてくれたからこそ、この2ndミニアルバムにつなげることができました。
──ソロデビューする際、「『私はアーティストとしてみんなに何を伝えていきたいんだろう?』と考えたときに、大袈裟な言葉かもしれないけど、みんなの人生を支えてあげたり、背中を押してあげられたらいいなと思ったんです」とおっしゃっていましたが、まさにそういう作品になっているなと(参照:斉藤朱夏「くつひも」インタビュー)。
その軸はやっぱりブレないですね。みんなのことを助けて、輝かせられるような存在になりたい。みんなの日常に斉藤朱夏の楽曲が流れていて、そこでふと元気になったり、背中を押されたり手を引っ張られているような感覚になってくれたらうれしいです。
みんなの顔が見えてしょうがない
──「SUNFLOWER」というタイトルはどのように決まったんですか?
実は制作後半で決まったんですよ。どんどん曲ができあがっていく中で、私はこのミニアルバムを通して「みんなのことをちゃんと見てるよ」ということを伝えたいなと思って。世の中がこういう状況になって、みんなと会えなくなってしまって……距離が開いてしまったことで、もしかしたら「しゅかしゅーは俺たち私たちのことをちゃんと見ているのかな?」と思う人もいるかもしれない。やっぱりSNS上だけではなかなかコミュニケーションを交わすことができないから。だけど、そんな中でも「私はちゃんとみんなのことを見てるよ」と伝えたかったんです。みんながひまわりで、私が太陽。そんな関係性でつながっていたいという思いを込めて、「SUNFLOWER」というタイトルにしました。
──1曲目の「ゼンシンゼンレイ」はそんなミニアルバムを象徴するような、明るいエネルギーに満ちたシンセロックです。デビューミニアルバムと1stシングルでタッグを組んできた、おなじみのハヤシケイ(LIVE LAB.)さん作詞作曲ということで。
今回のミニアルバムも全体的にケイさんと話し合いながら作っていきました。
──今までケイさんが斉藤さんに提供されてきた曲には、物語性のある曲や斉藤さんの内面を描いている曲が多かったような印象があるんですが、「ゼンシンゼンレイ」はリスナーの皆さんの手を取って、ともかく前に突き進んでいくような曲になっていますね。
「ゼンシンゼンレイ」には自粛期間中にバーっとメモしていた私の気持ちが詰まってるんです。もうエネルギーがあり余ってあり余って大変だったんですよ! 私はライブが大好きなので、ステージに立てないことが本当につらくて。「この気持ちをどこにぶつければいいんだろう?」と思ったときに殴り書きで書いて。
──それをケイさんにお渡ししたんですね。
そうです。とにかく「叫ぼう」とか「暴れろ」みたいなことを書いていたと思います(笑)。歌詞のプロット段階では「バカ」というタイトルでしたし。
──「バカ」?
プロットでは「勉強はできないけど、ただただ騒いで楽しいことすればいいじゃん」というようなことを書いていたんですよ。だから1番のAメロに「あれこれと悩んでみたって それほど賢くはないんだっけ じゃあ楽しい方だけ選ぼうよ」というフレーズが入っているんだと思います。
──「根拠はないけど 間違いないのさ」というフレーズも出てきますが、そういう感覚になることは多いですか?
ありますね。というか、ほとんどそうです(笑)。根拠はないけど、私のことを信じてくれればたぶんなんとかなるし、なんとかするからとりあえずついて来て!っていう気持ちでいっぱい。プロットにも「不安なことなんてない 私を信じて」というようなことを書いていたので、このフレーズはそこから取ってくれたんじゃないかな。
──聴いている側も斉藤さんが「間違いない」と言うならそうなんだろうな、という気持ちになってくるといいますか。それが斉藤さんのすごさですよね。
もともとは自分に自信がなかったんですよ。今でも自信があるかないかと言われたら、正直半々くらいの気持ちで。そんな私に自信を持たせてくれたのは、やっぱり応援してくれているみんなだから。みんなが信じてくれるんだったら私も自分のことを信じてみないと始まらないなと思って。みんなと会えるときがきたら、この曲でバカ騒ぎしたいですね。
──そういう気持ちがこもっているからか思い切りのいい歌い方になっていると思いますが、レコーディングはいかがでしたか?
レコーディング、すっごい楽しかったです! ライブの映像がバシバシ浮かんできて、みんなの顔が見えて……「早くみんなに会いたい!」という気持ちが歌にも出ていると思います。
──ミニアルバム全体を通してリスナーに真っすぐ向き合っているような作品だと感じましたが、やっぱりファンの皆さんのことを思い浮かべながら歌っていたんですね。
全曲そうでした。みんなの顔が見えてしょうがないんですよね。ライブをしているときに見るみんなの顔って、すごくいい顔してるんですよ。私の楽曲を聴いて涙してくれる人もいるし、それが純粋に本っ当にうれしいんです。そんなふうにいろんな顔を見せてくれるのってやっぱり心を開いてくれているからなんだろうなと思うし。だからこそ、私もみんなにいろんな顔を見せたくなります。
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畑さんからのラブレター