斉藤和義「202020」 PR

斉藤和義|キャリアに裏打ちされた 手癖ありカバーありの20thアルバム

斉藤和義が1月29日に20作目のオリジナルアルバム「202020」をリリースする。

このアルバムには、2月から約5カ月にわたってツアーを共にするバンドメンバーと作り上げた楽曲を軸に、テレビドラマ「家売るオンナの逆襲」の主題歌「アレ」、映画「アイネクライネナハトムジーク」の主題歌「小さな夜」、テレビアニメ「ちびまる子ちゃん」のエンディングテーマ「いつもの風景」といった話題曲も収録。カバーやインストゥルメンタルも含め、斉藤の幅広い音楽性を反映した1枚となった。

今回は斉藤に、新作の制作エピソードやサウンドプロダクションのこだわり、制作プロセスの変化などをじっくりと聞いた。

取材・文 / 廿楽玲子 撮影 / 吉場正和

俺のドラムはチャーリー・ワッツタイプ

──今回のアルバムは2020年のツアーメンバーと作った曲が軸になっていますが、そもそもバンドメンバーはいつもどうやって決めているんですか?

斉藤和義

長いツアーだから先にスケジュールを聞いて決めますね。真壁くん(真壁陽平 / G)と寛くん(山口寛雄 / B)は、ここんとこ一緒にやっているメンバーで。前回のツアーで一緒だったよっち(河村吉宏 / Dr)はスケジュールが埋まっちゃっていたから、別のドラマーを探さなきゃと思って。そしたら真壁くんがすごい仲良しなドラマーがいるということで、平里(修一)くんが叩いてる映像を観せてくれて。「いいドラムだねー」と思ったから、呼んでもらえないか聞いてもらったんです。

──ミュージシャン仲間でつながっていく感じなんですね。

そうそう。で、去年の8月にバンドメンバーとリハーサルスタジオに入ったんです。プリプロのつもりだったけどレコーディング機材も持ち込んで、そこでいい音が録れるかどうか試してみたくて。平里くんが初参加だったので、とりあえず適当に音出して遊びますかというところから始まった。曲らしい曲もほぼないまま音を出してたら、どんどんまとまっていったんです。それなら歌も一緒に録っちゃいたいと思って、歌詞もバーっと書いて。そしたら5日間くらいで5、6曲録れて、「幸先いいじゃん」と(笑)。

──ドラマーが変わると曲の作り方も変わりますか?

変わりますね。特にドラマーは同じ曲を同じように叩いても、微妙なタイミングとか、歌いやすいとか歌いにくいとか、けっこうあります。歌うときはドラムが一番関係しますね。

──斉藤さんから見て、平里さんはどんなタイプのドラマーなんでしょうか?

なんていうか、跳ねる感じのドラマーですかね。例えばエイトビートを叩くと、ちょっと跳ねるように聞こえる。そういうタイプと、Led Zeppelinのボンゾ(ジョン・ボーナム)みたいにどっしりしたリズムを叩くタイプがいて。昔一緒にやってた元くるりのもっくん(森信行)はボンゾタイプでしたね。エイトビートを叩くにしても、そういう違いがけっこうあるんです。

──ちなみにドラムをやるときの和義さんは?

俺はね、ヨレるんだけど(笑)、自分の歌には一番合ってる感じですね。自分の中でのタイム感が一緒だから、同じところでヨレるっていうか。そういうのが欲しいときは自分でやっちゃう。まあ言ってみれば、チャーリー・ワッツ(The Rolling Stones)タイプですね(笑)。

──セッションしながら曲を作っていくと、バンドから導かれるものがあるんですか?

うん、今回それはめちゃめちゃありました。最初は譜面もなく、リフとなんとなくの展開があるだけで、どんな曲なのかも決めないまま音を合わせたんです。いろいろやってるうちに、あっという間にまとまって、とりあえず2、3テイク適当に録ってみたら「なんかできてるねえ」という感じになった。リハスタだから音が被ったりするんだけど、それもいいなと思って、わざわざレコーディングし直さなくてもいいという話になっていきましたね。

インストは斉藤名義でやってもいい

──「Room Number 999」には各パートのソロ回しがあって、まさにライブなノリですよね。

そうそう、ボーカルも演奏と一緒に録っちゃったりして。だから完成までがすごく早かったですね。レコーディング期間的には最短でできたアルバムだと思います。あんまりウーンと悩みに悩んで作るのはもう嫌で、もっとラフに作りたいなと思って始めたので。歌詞についても、もっといい言い回しとかあったりするんだろうけど、最初の思い付きのままで、あんまりこねくりまわすのはやめようと。むしろ“いいこと言っちゃダメ”とか(笑)、それくらいのつもりでやろうと。

──「シャーク」はシングル「いつもの風景」に歌なしの“Nakedバージョン”が収録されていましたが、トラックを先に作って、あとから歌詞を付けることも多いんですか?

斉藤和義

えーと、半々くらいですかね。「シャーク」はインストにしようと思って録ってたけど、適当に歌っているうちに歌になった感じ。インストとしても気に入っていたのでシングルに入れとこうと思ったんです。あと「I want to be a cat」や「a song to you」は、アルバム「風の果てまで」(2015年リリース)を作っていたときにドラマーのチャーリー・ドレイトンと一緒に録ったんですけど、当時は歌詞が付かずリリースが保留になっていて。でも今回のアルバムを作る中で、「そういえばチャーリーとやった曲、ちょうど今回のアルバムに合うな」と思って歌詞やメロディを急いで付けたんです。

──トラックと歌の制作時期にタイムラグがあるわけですね。

そうです。5年くらい前に作ったものなので。「ニドヌリ」はさらに古くて、もっくんや隅ちゃん(隅倉弘至 / B)と出会って初めて録った音源だから、2002~03年くらい。その頃に遊びで録っていたような曲で、今回インスト曲も入れたいなと思っていたところ、「そういえばこれもあった」と思い出したんです。

──一度録ったトラックはずっと頭に残ってるんですか?

ですね。そりゃ、「もういいか」というのは捨てちゃうけど、気になってるやつは、いつか何か……それが自分のアルバムなのか、何かのサントラとか作るときなのかはわからないけどハマればいいなと思って。そうやって残しているものはけっこうあります。

──今回インストを入れたいと思ったのには何か理由が?

ずーっと同じ人の声で歌われると飽きるでしょ? というかね、俺、インストを聴くのがけっこう好きなんですよ。ギターを始めた頃は高中正義さんが好きだったし、ジャズも大好き。Stuffとか、最近だとThe Fearless Flyersとか、ああいうバンドも好きだし。中村達也と一緒にやってるMANNISH BOYSではインストもやってるんだけど、昔から斉藤名義でやってもいいんだよなとは思ってて。

──これまで和義さんと言えば、わかりやすいイメージとしていわゆる“歌もの”がありましたが、実はマルチプレイヤーで、ジャンル的にもいろんなことをやる人なんだということがだんだん知られるようになって、ここにきて広く定着した感じもありますね。

ああ、なるほど。そうね、「斉藤和義は歌ってないといけない」みたいなのはやめて、というのはある。ただ「歌うたいのバラッド」という曲で“歌うたい”とか言っちゃったもんだからね、自分で(笑)。

──一時期、代名詞っぽくなっていたような。

そうそう。でも、もちろん歌は好きだけど、ギターのほうがもっと好きだったりするしね。

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手癖上等だよ