根底にあるレッチリ
──「音楽深化論」優勝というタイミングで初めてSABANNAMANについて知る方もいると思いますので、改めてSABANNAMANについて探っていきたいと思います。まずは皆さんの音楽ルーツを教えてください。
上田 僕は、兄がギターで19の弾き語りなどをやっていて。それに憧れて、まずはアコギを弾き始めました。それをきっかけにいろいろ聴くようになり、レッチリ(Red Hot Chili Peppers)に出会ってからはレッチリばかり聴いてました。SABANNAMANが結成当初カバーしていたのがCOKEHEAD HIPSTERSなんですが、COKEHEAD HIPSTERSもレッチリがルーツになっているバンドで。自分の根っこにレッチリがありますね。
──SABANNAMANのルーツとされているハードコアやメロディックパンクは?
上田 それが全然通っていなくて。吉田くんが好きなジャンルだし、メロディックパンクバンドと対バンすることも多かったので、そこで触れた感じですね。新鮮でした。それと、サークルのメンバーの家にディスクユニオンかってくらいCDがあって。それがきっかけでいろんな音楽を聴くようになりました。
吉田 俺のルーツは、中学生くらいのときに流行っていた青春パンクやメロディックパンク。ギターを買ってコピーをするようになって、中学3年生のときにバンドを組みました。それ以来ずっとメロディックパンク好きだったんですが、高校2年生のときにハードコアやレッチリと出会って。俺、1歳下の弟がいるんですが、弟もレッチリが好きで、2人でレッチリになるために、ずっと筋トレしてました。
──筋トレを(笑)。
吉田 はい。レッチリのポスターに「腹筋○回!」とか書いて。
與那城直記(Dr) 僕が楽器を始めたきっかけは、吹奏楽部でパーカッションをやったことですね。もともとサックスをやりたくて吹奏楽部に入ったんですが、「男子は打楽器だ」みたいな感じでパーカッションに追いやられちゃって。
吉田 サックスやりたかったんだ? 知らなかった!
與那城 うん。そこから「ドラム叩けるんだったらバンドやろうぜ」って声をかけてもらうことが多くなって、自然とバンドを組んでましたね。
──聴く音楽としてはどのようなものが好みでしたか?
與那城 メロディックパンクは大好きですし、中学生の頃はゆずが好きで弾き語りもやっていました。だからけっこうバラバラですね。あと、SABANNAMANの前のベースがレッチリ大好きで、そこからミクスチャーロックを知りました。
youdog 俺は、小学生のときに観た実写版の映画「DEATH NOTE」の主題歌がレッチリだったのが大きかったですね。曲を聴いた瞬間「なんじゃこりゃ!」と思ってバンドに興味を持ち始めて。さっき、サークルのメンバーの家にCDがユニオンばりにそろっていたという話がありましたけど、うちは親父がめちゃめちゃ音楽好きで、実家にCDがたくさんあったんです。その親父のCDの棚にあったLed Zeppelinとかジェフ・ベックとかトラディショナルなロックを聴き漁って。高校生になってバイトを始めて自分でCDが買えるようになってから90'sのインディーロックを聴き漁っていたら「あれ、これ親父の棚にあったジミヘンと似ているぞ」と、音楽的なつながりに気付いてさらにいろいろ掘り下げるようになりましたね。レッチリって、ファンクもパンクもロックもやってるバンドじゃないですか。レッチリを聴く中で、一気にリスナーとしての幅が広がっていった感じです。
吉田 みんなレッチリがルーツだった!
youdog加入でロックバンドに回帰
──キャリアとしては結成15年目ですが、これまでの活動の中で音楽的な変革期はありましたか?
吉田 やっぱりコロナで前のベースが抜けて、3人になったとき。あのときはいろいろ試したよね。サイケをやってみたり。
みの へえ!
上田 そのあたりで、メンバー全員がレゲエ好きになって。家で音楽を作るのが楽しくなって、シンセとかいっぱい買っちゃったり。
吉田 そう! もう全然使ってないけど(笑)。
上田 そのときにいろいろ試したんですけど、youdogが入ってきて結局ロックバンドに戻りました。
吉田 結局「ロックしてえ!」ってなっちゃった。
上田 でもその時期があったから、深みのあるミクスチャーロックができるようになったのかなとは思います。
youdog 俺がまだサポートで3人のとき、めちゃめちゃとっ散らかってたもんね(笑)。俺はもともとSABANNAMANのファンだったから、サポートすることが決まって一発目のライブに向けて、SABANNAMANの曲をめちゃくちゃ練習していったんですよ。なのに、ライブでは既存の曲を1曲もやらなくて(笑)。新曲3曲と、あとはセッションで40分のセットをやりきりましたから。
吉田 俺らとしては超楽しかったけど、あとから考えるとめっちゃヤバイ(笑)。
上田 でも、そういうことを気にする頭もないというか。ただただ好きなことをするバンドなんですよ、昔からずっと。
youdog アルバムごとにジャンルが違っても、「今、こういうことが好きなんだ」とリスナーに理解されるバンドっているじゃないですか。
みの それこそレッチリもそういう感じですよね。
youdog そうですよね。SABANNAMANもそういうバンドでありたいんです。自分たちでも「SABANNAMANの音楽はこれ」って決めたくない。聴く人も「このアルバムは嫌い」とか思ってもらっても構わないですし。
──コロナ禍での活動休止期間がありながらも、復活して今も続けられている原動力や理由はなんなのでしょうか?
上田 もう自分たちにはバンドしかなさすぎて。
吉田 1回、バンドなしの“普通の生活”をしてみようと思ったんですけど、やっぱりバンドがやりたくなっちゃって。それくらい好きということですね、今もこうやってバンドを続けられていることがめっちゃ幸せだし、「音楽深化論」で優勝して「まだやっていいんだ」と思えたのも本当にうれしい。この歳になってくると、バンドをやり続けていてもいいのかわからなくなるから。
youdog 葛藤はあるよね。
吉田 うん。周りの友達もどんどんバンドとか音楽とかやめていくし。
youdog でも、もうやめるとかやめないとかじゃなくなったよね。スタイルというかさ。朝起きてメシ食って水飲んで歯を磨いて……の中にバンドがある。たぶんもう、この先はどんな状態になってもバンドやってるだろうね。
吉田 うん。そのためだったらなんでもするよっていう感じ。お金が必要なんだったら働いて稼ぐし。メンバーみんなが幸せだったらそれでいいかなって。
みんな「音楽深化論」に出たらいいのに
──「音楽深化論」やみのさんの存在は、SABANNAMANのようなインディーシーンで活躍するバンドの生命を伸ばす役割もあると思います。そのことについて、みのさんはどのように考えていますか?
みの 今おっしゃっていただいたように、実際にバンドやアーティストの命を伸ばすことができたらすごくうれしいですね。バンドを続ける中で、クリエイティブとビジネスの間でジレンマを感じることもあると思うんです。そこにキャリアも加わってくると、「じゃあいつまでやるのか?」という話になるのも自然なこと。その中で「音楽深化論」に出て、優勝したことが活動を続けるきっかけになっていたらいいですね。
youdog 最近思うんですけど、売れたいと思って音楽をやるのか、たくさんの人に聴いてもらいたいと思って音楽をやるのかの違いって大きくて。もちろん売れているということはたくさんの人に聴かれているということだし、たくさんの人に聴いてもらえているということは売れているということなんですけど、どういった思いで活動するかで全然意味は変わってくる。
みの そうですね。
youdog その中で俺らは後者、「たくさんの人に聴いてもらいたい」という道を今選んでいる。だからマーケティングを練るとか、SNSを活用するとかそういうことももちろんやりますけど、まずはライブや曲で自分たちの一番表現したいことを伝えるべきで。そうやって続けた結果、「音楽深化論」で僕らの強みを認めてもらえたのがすごくうれしかったです。
みの 本来、バンドマンが一番大事にするべきことはそこですからね。昔はマーケティングや戦略は本来、大人……レーベルやスタッフがやって、「君たちは音楽に集中しなさい」という形だったはず。「音楽深化論」もマーケティングの部分は運営チームがすごくがんばってくれて、アーティストが100%音楽に集中していいという場所を作れそうだなと感じて参加したんです。「楽屋で自撮りして」とかそういうことを考えないで、「とりあえず板の上でカッコいい音楽を聴かせてよ」という。そういう、大会のコンセプトとSABANNAMANがバチっとハマったというところはあるかもしれないですね。
youdog そうですね。最初にこの大会のコンセプトを知ったときに、僕らにピッタリだと思いました。いい音楽をやっているけど、まだ発見されていなくてくすぶっているインディーズバンドを発掘するというのが。僕らの周りにもカッコいいインディーズバンドがいっぱいいるから、「みんな出たらいいのに」と思いますね。
吉田 でも、みんな来ちゃったらヤバいよね。めちゃくちゃハイレベルな大会になっちゃう。
みの それ、見たいですね。SABANNAMANの皆さん、「音楽深化論」の特別顧問とかやりませんか?(笑)
youdog いいですね!(笑)
──最後にみのさんが「音楽深化論」の特別顧問以外で、今後のSABANNAMANに期待することを教えてください。
みの まずは大会優勝おめでとうございます。今日話をしていて思ったんですが、バンドを続けるかやめるかみたいな話って、だいたい30代中盤くらいのバンドがぶつかる壁だと思うんです。だからSABANNAMANには、30代中盤以降もライブハウスで演奏しているバンドマンのロールモデルになってほしいと思いました。「SABANNAMANみたいになればいいんだ!」という1つの指針というか。勝手に、そこを期待したいなと思いました。
吉田 ありがとうございます。ぜひライブにも来てください!
みの ぜひ!
プロフィール
SABANNAMAN(サバンナマン)
吉田涼(Vo)、上田雄(G)、youdog(B)、與那城直記(Dr)からなる4人組ロックバンド。2012年に大学のサークル内にて結成される。2015年に1stアルバム「MAGIC MUTANT」をリリースし、同年開催の「FUJI ROCK FESTIVAL」の新人登竜門ステージ「ROOKIE A GO-GO」で投票1位を獲得。2016年には「FUJI ROCK FESTIVAL」に初出演する。ファンクやパンクをベースにしたミクスチャーサウンドを武器に、「京都大作戦」「SATANIC CARNIVAL」「百万石音楽祭~ミリオンロックフェスティバル~」といった大型フェスに出演。2025年2月にyoudogを迎え現在の体制となった。
SABANNAMAN (@sabannaman) | Instagram
みの
動画クリエイター、音楽評論家、ミュージシャン、音楽プロデューサー。邦楽・洋楽問わず深い知識を持ち、独自の切り口で発信するYouTubeチャンネル「みのミュージック」は登録者約50万人を突破。テレビ・ラジオ出演、雑誌寄稿、音楽プロデュースまで活躍の場を広げている。2025年には3冊目となる著書「みののミュージック」を刊行。同年9月にはポップロックユニット・Polydreamsとしてメジャーデビューし、初となる1st EP「Wake Up!」を配信リリースした。タイムレス音楽IPプロジェクト「デートウォーズ(DATE WARS)」では音楽プロデューサーを担当。動画クリエイターとしての映像表現力と評論家としての分析眼を掛け合わせ、オンライン / オフラインを問わず多角的に音楽文化を発信中。


