今年結成14周年を迎えたSABANNAMANが、音楽オーディション番組「音楽深化論 ~the battle~」第3回で優勝を果たした。
YouTubeで展開されている「音楽深化論 ~the battle~」は、インディーズアーティストを発掘・支援するトーナメント型オーディション。第3回には発起人である音楽クリエイター・みのをはじめ、すぅ(SILENT SIREN)、Bose(スチャダラパー)、マーティ・フリードマン、松隈ケンタが審査員として参加し、これからの音楽シーンを担うアーティストたちのパフォーマンスを講評した。
音楽ナタリーではSABANNAMANの「音楽深化論 ~the battle~」優勝を記念して、みのを交えたインタビューを企画。中堅バンドである彼らが、シビアに審査されるオーディション番組に参加した理由、メンバーのルーツ、SABANNAMANがバンド活動を続ける理由を探った。
取材・文 / 小林千絵撮影 / 山崎玲士
「音楽に必要なのは何か……? 技術? 理論? 流行? -否、必要なのは“誰かの心を揺さぶる力”ではないか」というコンセプトのもと、2024年12月にスタートしたトーナメント型音楽番組。オーディションを「個別審査:演奏+フリータイム」と「集団審査:溜まり場」に分け、演奏だけでなく、音楽観・人生観・キャラクター・パフォーマンスなどさまざまな角度から審査する。これまでに3回実施されており、審査員としてプロミュージシャンも参加している。
SABANNAMANはなぜ「音楽深化論 ~the battle~」に応募した?
──最初に、10年以上のキャリアを持つSABANNAMANが「音楽深化論 ~the battle~」への出演を決めた理由を教えてください。
youdog(B) 俺が「音楽深化論」の第1回に、桃色ドロシーのサポートメンバーとして出場したんですよ。いい機会だなと思ったので、次はSABANNAMANでも応募してみようと。「音楽深化論」に出たあとの桃色ドロシーのライブに「『音楽深化論』を観てライブに来ました」という人がたくさんいて。SABANNAMANもライブをもっといろんな人に観てほしい、曲を聴いてほしいと思っていたんです。
──メンバーの皆さんは、その提案を受けたときどう思いましたか?
吉田涼(Vo) 事後報告だったよね。「応募したわ」って(笑)。だから「出るんだ。オッケー、じゃあYouTubeで過去の番組観とくわ」という感じでした。
youdog お姉ちゃんがアイドル事務所に弟の履歴書を勝手に送る感じです(笑)。
みの 今まさに同じことを言おうと思っていました(笑)。インディーズスピリットあふれるバンドマンとして、こういう場に出ていくチャラさみたいな葛藤はなかったんですか?
吉田 SABANNAMANはコロナ禍に1回活動が止まっていて。前のベースが抜けて、youdogの加入をきっかけに再始動したバンドなので、今はこれまでの自分たちのキャリアとか気にしないでやっているんですよ。楽しかったらなんでもいい。変なプライドもないし、自分たちの音楽をたくさん聴いてもらえるほうがいいなって。それだけですね。
みの 「あの大会はチョロいから、出て荒らしてやろう」みたいな気持ちが実はあったり?(笑)
youdog いやいや、まったくないですよ!(笑) でも今みのさんがおっしゃったように、「オーディションとかそういうところに出るのは違う」みたいな考え方を持っているインディーズバンドは少なからずいて。その考え方をぶっ壊したいという気持ちはありましたね。「俺らがもし優勝できたら面白いじゃん」みたいな。
“若手バンド”SABANNAMAN
──実際に出演してみていかがでしたか?
吉田 面白かったよね。いろんな人に会えたし。
上田雄(G) うん。
youdog あと、この歳になって審査される側になることもなかなかないし。だから緊張したよね。駆け出しの頃はライブハウスでパフォーマンスをしたあと、店長さんに「もっとここはこうしたほうがいいよ」とか言われて、その言葉を受けて次のライブをよくしていく、ということをやっていたんですが、年々そういうことは言われなくなってくから。そういう意味では、このタイミングでいろんな人に見てもらって、いいことも悪いことも言ってもらえたのはすごく刺激になりました。
みの 昔ながらのライブハウスのおっさんみたいな役割を担うオーディション番組だったんですね(笑)。
吉田 SABANNAMANはむしろそういうことから逃げてきたタイプのバンドで。厳しいことを言われるライブハウスは「あそこは厳しいっぽいからやめよ」みたいな(笑)。
──そういう意味では、いろんな意見を言われる「音楽深化論」に出演するのには勇気が必要だったのでは?
youdog 今自分たちが客観的にどう見えているのかを知りたかったんです。自分たちとしては信じているものがあるけど、それがプロから見てどうなのかなって。
みの その“信じているもの”というのは、サウンドですか? それとも、SNSがある時代の中でどう活動していくかとかというマーケティングの部分ですか?
youdog 完全にサウンドですね。SNSとかマーケティングの部分は、本当にダメダメなバンドなので。そこはむしろ番組の力を借りたかったところです。
みの 僕が勝手に「音楽深化論」で意義を感じているところでもあるんですが、SABANNAMANや第1回で優勝した桃色ドロシーは、ライブハウスで切磋琢磨して、めきめき実力を付けてきたタイプですよね。一方で、若手のインディーズバンドの多くがセルフプロデュースがうまくて、低予算でミュージックビデオも作れて、サブスクである程度聴かれるところまで自分たちで持っていってからレコード会社に付いてもらう。ある意味ビジネスマン的なスキルを持っているアーティストも多い。今はその2つのタイプが混在している状況だと思うんですけど、「音楽深化論」はその両方が出ている大会で。それが面白いんですよね。
youdog 確かに。
みの その中で、SABANNAMANはどういう立ち位置にいると思いますか?
吉田 一度終わっちゃったバンドなので、今は新しい気持ちでやっています。若手バンドと一緒です。
みの とはいえ、10年以上ライブハウスで活動していたわけで。今のライブハウスシーンに衰退は感じますか?
youdog いや、そこはあまり感じていないですね。ただ、以前よりお客さんが減っているのは確かで。お客さんがもっと気軽にライブハウスに来られるようにするために「音楽深化論」に出たところもあります。
みの 実際、ライブに強いという魅力が随所に出た回になりましたもんね。
みのが感じるSABANNAMANの黒帯感
──審査員の皆さんからいろいろな意見をもらっていかがでしたか?
youdog ありがたかったです。ドリルギターを披露したときに審査員のすぅさん(SILENT SIREN)が「スタジオで遊んでいることをそのままやっているみたい」と言ってくれたんですが、本当にそうで。
上田 こちらが説明しなくても、自分たちが伝えたい音楽やこだわりが伝わっていることがわかりましたし、僕らは間違っていなかったんだなと。
吉田 うん、「まだやっていていいんだ、やった!」と思った。
──みのさんはSABANNAMANの魅力をどのように感じましたか?
みの 黒帯感と言うんですかね。トッピングが面白いんじゃなくて、そもそもベースになっているものがめっちゃ強いバンドで。だから審査中にいろんな課題を出しても、パフォーマンスに危うさがない。ドリルギターもそうだし、レゲエのカバーや、テンポで作る展開など、いろいろな遊びがありましたけど、「このバンドならうまく回収するだろうし、何をやっても高い完成度でちゃんとやってくれるんだろうな」と思えた。キャンプを終えたばかりの野球チームみたいな、そういうパワフルさを感じました。
youdog でも俺ら、ライブでめちゃめちゃトチるんですよ。だけど俺らが好きなアーティストは、それすらもパフォーマンスにしちゃうような人たちばかり。だから俺らも「トチっちゃうからやめよう」みたいな考えは一切なくて。「カッコよかったらトチってもオッケーだから、なんでもやろう」という感じです。ライブ中、周りに何も言わずに尺を伸ばしたりしていますから(笑)。
吉田 あるある。全然歌い出さないとかね(笑)。
youdog そういうところもSABANNAMANの魅力にしていきたいんです。
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