龍宮城「DEEP WAVE」特集|“オルタナティブ歌謡舞踊集団”が起こす深い衝撃 7人の1年と新作紐解く1万3000字 (4/4)

全曲必殺技みたいなEP

──では、ここからは新作「DEEP WAVE」についての話を。完成した作品を前に、「ヤバいもん作っちゃったな」と思いませんでした?

Ray 収録されている5曲を聴いて、全部同じアーティストが歌っていると思う人はいないんじゃないかな?と思っています。それほどすべての曲の世界観が違うし、歌声も違うし、込められている気持ちも違うから。全曲トドメを刺しにきているというか、全曲必殺技みたいなEPだなって。

──「オルタナなことをやりますよ」と言っても、メジャーシーンのボーイズグループがそんなに無茶なことはできないだろうと高をくくっていましたが、本気でボーイズグループ界のオルタナをやるんだなと。例えばタイトルトラックの「DEEP WAVE」なんて、正統なグループならこんなにテンポチェンジをする必要がない(笑)。普通の四つ打ちダンストラックで成立するんです。

KEIGO 実際、「DEEP WAVE」は今までの楽曲とは雰囲気が大きく変わっていたので、最初はアヴちゃん先生に提示されたものについていけないんじゃないかという不安もありました。ただ、そこからグループとしても個人としても曲への解釈を深めていって、なんとかしがみついている。それぞれが必死に曲にしがみついて、自分のものにしていったような感覚があります。

ITARU 初めてこの曲を聴いたとき、僕は今まで先生からいただいた曲の中で一番強いインパクトを感じました。テンポチェンジもあれば、曲調も途中でがらりと変わる。この曲を自分たち自身が表現できることがものすごくうれしくて。僕らの新しい一面をまた引き出してもらえたなと、今ものすごく感じています。

KEIGO 今までの曲の中で一番難しいよね?

齋木 難しい。

KEIGO レコーディングも本当にみんな努力しましたけど、ダンスパフォーマンスの面でもかなりハードで。体力面、精神面ともにパワーが必要な曲なんです。ただ、すべてをやり切ったときに「今までで一番いい曲だ」と言える充実感があります。

──2曲目の「BLOODY LULLABY」は龍宮城の主演ドラマ「秘密を持った少年たち」(日本テレビ系)の劇中歌ですが、これまでの曲の中でも特に「女王蜂の直系グループである」という印象ですね。オルタナロック歌謡、と言うのが正しいのでしょうか。

ITARU この曲のレコーディングで最も意識したのは、サウンドに負けない歌声です。アヴちゃん先生もおっしゃられていたんですけど、この曲は音が強いので、歌声がそれに勝てるのかが重要で。

齋木 最初に音源を聴いたとき、僕はこの楽曲でダンスをしている姿がいい意味で想像できませんでした。ドラマの中ではバンド演奏で披露した曲だったこともあって、ダンスパフォーマンスに結び付き難い部分があって。だけど、振付師であるGANMIのSotaさんが、本当に魂を込めたコレオを届けてくださったんです。初めて皆さんの前で披露したのが音楽劇「秘密を持った少年たち」だったんですけど、難しいコレオなので仕上げるまでにみんなかなり苦労して、劇中での一番の課題と言えるほど必死に取り組みました。その甲斐あって、今やライブでもすごく盛り上がる、龍宮城の要の1曲になっているなと感じます。

“地獄”のつらさを感じられたからこそ歌えた曲

──Sさん、春空さん、Rayさんのユニット曲である「SEAFOOD」は、EPの中でも一番エキセントリックですね。最初に聴いたときは「何をやってるんだこの人たちは」と思いました。

一同 あはははは!

KEIGO この曲はヤバいです。

齋木 レコーディングでは“違う人”を何人も用意して歌入れに臨みました。アヴちゃん先生からは「違う人格を用意してほしい」と言われて。3人それぞれに自分のパートをどうやって表現するか考えて、僕のパートは跳ねるような歌い方を意識しました。

齋木春空

齋木春空

Ray 僕は「誰なのかわからない声でいく」ということを意識しました。自分のパートは、初めのうちはぶりっ子して仮面をかぶったような雰囲気で歌い、進むにつれてその仮面が暴かれるようなイメージ。それぞれのヴァースを表現するときのイメージは全員違うと思うんですけど、3人の声が重なり合うサビの部分は、ふざけながらも真心を伝えていると僕は思っていて。僕たち龍宮城は、この曲の歌詞の通り「イカれた噂」が立っていると思うし、「さあたんと召し上がれ! どーぞ」というのは僕たちの表現を楽しんでくださいねという意味が込められているんじゃないかなって。魚の名前が歌詞にたくさん入った面白い歌、というだけでは決してないのが、この曲のすごいところだなと楽しみながら歌っています。

──4曲目の「LATE SHOW」はフォークロックのような抒情性と四つ打ちのダンスビートが融合した、龍宮城らしい業の深さを感じる楽曲ですね。音楽劇「秘密を持った少年たち」のために作られた曲ですが、歌詞からは「0年0組」でアヴちゃんが見せた「地獄へようこそ」という不気味な笑みが思い出されました。

冨田 これは「LATE SHOW」に限らずなんですが、僕たちは「RONDO」(2023年4月リリースのプレデビューシングル)の頃からずっと、曲が持っている本来の意味に自分たちの生き様を加えて発信していく、ということをやっているんです。そうやって表現を作るとき、1人ひとりがそれぞれのキャラクターを用意して臨むんです。今回のEPの5曲もこの7人が歌っているんだけど、全員が違う人でもある、というか。“曲の中のキャラクター”が存在している感覚なんです。ライブのときは、その“曲の中のキャラクター”と生身の自分自身をうまく混ぜ合わせて伝えているような感覚があるんですけど、「LATE SHOW」はそれにプラスして、音楽劇で7人それぞれが演じたキャラクターの生き様も混ざり合ってるようなイメージで。そうやって考えるとすごく複雑な曲で、そのときの個々の心情によっても意味合いがだいぶ変化するんじゃないかなと思っています。

──そして、EPのラストを飾る5曲目の「BOYFRIEND」は、KENTさん初のソロ曲です。サウンド的には、龍宮城のレパートリーの中で一番“正統”な楽曲とも言えるポップさがありますね。

KENT この曲の歌詞には、考えさせられることがすごく多いです。おしゃれな雰囲気で歌うこともできる曲だとは思うんですけど、僕はそうじゃなく、感情を思い切り込めて皆さんの心を動かしにいこうと思いながら歌いました。というのも、この曲をもらったとき、自分が小さい頃によくバンドの曲を聴いていたことを思い返したんです。人の心を動かす力のあるボーカルがもともと好きだったことを改めて気付かせてもらったし、もともと持っていた自分らしさ、みたいな部分を出せる曲だなって。それと、龍宮城がデビューするときにアヴちゃん先生は「地獄へようこそ」とおっしゃったじゃないですか。デビューして以降、ライブを生き甲斐に感じられて「楽しい」という感情になる一方で、先生が言うような“地獄”を感じることも確かにあります。この「BOYFRIEND」は、そういった“地獄”のつらさを感じられたからこそ歌えた曲だとも思っていて。これから来るであろう“もっとヤバい曲”を歌えるようになるためにも、もっとつらいことに向き合いたい。そう思えるようになった曲なので、歌っていて楽しいです。

KENT

KENT

僕らは表現をするために手段をいとわない

──3月下旬から4月頭にかけて、EPのタイトルを冠した4カ所7公演のツアー「龍宮城 SPRING TOUR 2024 -DEEP WAVE-」が行われます。ツアーに向けての思いも聞かせてもらえますか?(取材は3月中旬に実施)

ITARU 自分たちの音楽がいろんな方向性を持っているからこそ、ライブに強くなければいけないと思っています。僕らが1年間やってきたことをさらにブラッシュアップして、ライブの価値を高めていかないと、ということをメンバー全員で考えているんです。

KEIGO 龍宮城のオルタナティブ性を一番感じられるのはライブなんじゃないかなと僕は思っていて。それはステージ全体の構成もそうだし、この間のライブではコントみたいな要素も盛り込んだりしたんです。今回のツアーは過去最大規模になりますが、ライブに足を運んでくれる皆さんが増えてきたからこそライブをたくさんやれるのかなと思うと、もっともっと広く僕らの音楽を伝えたい。今回のツアーの成功はもちろん、これからはさらに大きなところで龍宮城の音楽を届けていきたいなと思います。

──ありがとうございます。インタビューは以上ですが、最後に何か言っておきたいことはありますか?

ITARU いいですか? オルタナティブという音楽性について、「DEEP WAVE」を発表して改めて気付いたのは、僕らにとってオルタナティブは“手段”なんだろうなって。初めて僕らのことを見た方からすれば結果的にオルタナなのかもしれないけれど、僕ら自身にとっては、自分たちらしい表現をするために“活用したもの”なんです。だから、これからも僕らは、表現をするためには手段をいとわない。そのことが“オルタナティブであること”という認識に近いのかなと思います。

ライブ情報

龍宮城 LIVE TOUR「ULTRA SEAFOOD」

  • 2024年7月22日(月)神奈川県 KT Zepp Yokohama
    OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2024年7月23日(火)神奈川県 KT Zepp Yokohama
    [1回目]OPEN 13:30 / START 14:30
    [2回目]OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2024年7月26日(金)北海道 Zepp Sapporo
    OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2024年7月28日(日)宮城県 仙台PIT
    [1回目]OPEN 13:00 / START 14:00
    [2回目]OPEN 17:00 / START 18:00
  • 2024年8月1日(木)愛知県 Zepp Nagoya
    [1回目]OPEN 13:30 / START 14:30
    [2回目]OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2024年8月5日(月)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
    OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2024年8月6日(火)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
    [1回目]OPEN 13:30 / START 14:30
    [2回目]OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2024年8月8日(木)福岡県 Zepp Fukuoka
    OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2024年8月20日(火)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
    [1回目]OPEN 13:30 / START 14:30
    [2回目]OPEN 17:30 / START 18:30
  • 2024年8月21日(水)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
    [1回目]OPEN 13:30 / START 14:30
    [2回目]OPEN 17:30 / START 18:30

プロフィール

龍宮城(リュウグウジョウ)

日本テレビ、スターダストプロモーション、ソニーミュージックがタッグを組み、アヴちゃん(女王蜂)がプロデュースを務めたオーディション企画「0年0組 -アヴちゃんの教室-」の合格メンバーによって結成された“オルタナティブ歌謡舞踊集団”。メンバーはITARU、KENT、Ray、KEIGO、S、冨田侑暉、齋木春空の7名。2023年4月にソニー・ミュージックレーベルズからプレデビューシングル「RONDO」をリリースし、5月にデジタルシングル「Mr.FORTUNE」でデビューした。9月には1st EP「2MUCH」を発表。10月からは日本テレビ系で主演ドラマ「秘密を持った少年たち」がオンエアされ、11月には「音楽劇 秘密を持った少年たち」が上演された。2024年3月、2nd EP「DEEP WAVE」を配信リリース。全国4カ所を巡るツアー「龍宮城 SPRING TOUR 2024 -DEEP WAVE-」を開催した。