長らく温めてきた「てんとう虫」というテーマ
──2曲目の「LADYBUG」は「THE FIRST TAKE FES」でも披露されていましたけど、トライバルなビート感が印象的な、すごく踊れる曲ですよね。そういう意味では、「Mela!」の流れも感じさせる曲だなと思いました。この曲も小林さん作曲、長屋さん作詞ですね。
小林 「LADYBUG」は、最初から驚きのある曲を作りたいと思ったんです。「どこまで歌で引っ張るんだろう?」と思われるくらい、オケがない状態の歌でスタートする曲を作りたいっていう、それだけのアイデアで書いた曲で。そのアイデアから始まって、思うがままに作っていきました。
──このパーカッシブなリズム感は、どういったリファレンスから出てきたのでしょうか?
穴見 そこにも壱誓がダンスをやっていたっていうことがあると思います。この曲ってメロディが踊っていて、もはや譜割りだけで踊れるんです。そういうところから着想を得た部分がまずあって、そこから民族音楽とかワールドミュージックっぽいサウンドになったのは、4人で話し合ったのもあるし、「Mela!」のときと同じく横山(裕章)さんと一緒に曲を仕上げたことも大きいと思います。「Mela!」のときも、横山さんがブラジルのタンバリンやカウベルを入れてくれて、そのアレンジ作業が単純に楽しかったんですよね。だから今回もそういうエッセンスを入れてみようという話になって、横山さんがいろいろな楽器を持ってきてくださって。今回は僕がチャランゴというブラジルの楽器を弾きました。
小林 アコーディオンを入れてくださったのも横山さんのアイデアで、結果として面白い存在感のある曲になったと思います。
──歌詞には、強い肯定感がありますね。
長屋 歌詞は、「サタデーステーション」と「サンデーステーション」(テレビ朝日系の情報番組)のテーマ曲のお話をいただいてから書いていったんですけど、最初に番組サイドからいくつかテーマをいただいていて、その中に、「明日へのリブート」という言葉があったんです。
──「リブート」というのは「再起動」というような意味の言葉ですね。歌詞の中にも出てきます。
長屋 言葉だけを聞くとポジティブな印象を受けるんですけど、私としては、「底力でもいい」と解釈したんですよ。「明日からがんばろう!」みたいな明るいポジティブじゃなくて、底力から出てくるポジティブさを書いていいんだなって。それが、すごくうれしかったんですよね。タイトルの「LADYBUG」は「てんとう虫」という意味なんですけど、私はもともと生き物が好きで、てんとう虫にすごく興味を持った時期があったんです。だから個人的にずっとてんとう虫について書きたい思いがあって。
──ほお……。
peppe まず、その理由が知りたいですよね(笑)。
──はい(笑)。
長屋 「てんとう虫」という日本語の名前自体、「お天道様」から来ているらしくて。てんとう虫は習性的に上にしか登らなくて、絶対に下っていくことがない。空に登っていくから「てんとう虫」と名付けられたらしいんです。その名前の由来がすごく素敵だなと思っていて。その「てんとう虫」というモチーフが、壱誓の作った曲調と合うような気がしたんですよね。やっぱりこの曲も、壱誓が作った曲らしく、どこか不安になる部分があるというか(笑)。ポジティブそうでいて、どこかポジティブじゃない感じがあった。
──なるほど。明るく踊れる曲調ではあるけど、一筋縄ではいかない部分もある。
長屋 そうです。だからこそあえてこの不安定な曲に、「LADYBUG」という明るいテーマをぶつけてみたいなと思ったんです。そうすることで、「明日へのリブート」というテーマにも合致してくるような気がしたんですよね。
──てんとう虫に限らず、長屋さんは生き物がお好きなんですか?
長屋 そうですね。昔から犬に囲まれて過ごしてきたし、生き物はなんでも好きです。動物番組を見るのも好きだし、動物園や水族館に行くのも好きです。歌詞のテーマにしようと思って、いろいろ動物の名前はメモっているんですけど、今のところはあんまり機会がなくて(笑)。
ついにリリースされるpeppeが一番好きな曲
──3曲目の「Copy」は長屋さんが作詞作曲を手がけました。
長屋 この曲は3年前くらいにはあった曲で、自分としてはストレートだけどストレートじゃない曲を書きたくて作りました。よくある恋愛の歌で終わらせたくなかったというか、恋愛中の、“どうしてもこうなっちゃう感覚”が愛おしいなと思いながら歌詞を書いたんです。個人的にはタイトルで種明かしをしている感じが気に入っています。聴き進めていくうちに、何故「Copy」なのか、意味がわかってくると思うので。
──僕は30代のおじさんですけど、この曲の歌詞で歌われている気持ちは、めちゃくちゃわかるなと思いました。
長屋 (笑)。きっとこの気持ちはみんなわかってくれると思います。この曲は、リスナーの近くにいきたかった曲なんです。本質はDメロに込めたので、そこもしっかり聴いてほしいなと思います。
peppe 私、たまにファンの方に「自分たちの曲で一番好きな曲はなんですか?」と質問されることがあるんですけど、私はこの曲が一番好きなんですよ。でも、リリースされていない曲だから言えなくて、ずっと伏せていたんです。今回やっとリリースできるので、「peppeは『Copy』が一番好きだ」ということを、この記事を見てくださった方に伝えたいです(笑)。本当にいい曲なんですよねえ。
小林 この曲は、Aメロからサビくらいの高揚感があるのに、そのあとにより大きな波がくるんですよね。女性ボーカルの曲としてはちょっと歌いにくい曲調なんじゃないかと思うんですけど、それを“いとも簡単に”やっている長屋がすごいなと思います。
peppe 今、歌詞引用したね(笑)。
緑黄色社会らしさを確立する年に
──リョクシャカにとって、2021年はどんな年になっていくんでしょうね。
小林 僕らとしては、去年1年はまるっと「SINGALONG」の年だったんです。ツアーも結局中止になってしまったけど、12月5日に有観客配信ワンマンをやることができて、一旦ゴールに着くことができた。すごくホッとしたし、それによって2020年という年が必ずしも嫌な思い出だけではなくなったというか、2021年に前向きになるための布石を、ちゃんと打つことができたと思っていて。僕らも、会場に来てくれた人たちも、配信で見てくれた人たちも、きっと同じ気持ちで2020年の最後を締めくくることができたんじゃないかと思う。そのくらい共鳴を感じることができたライブだったんです。でも今年はそんな「SINGALONG」を超えなければいけないし、同じものの上位互換より、もはや別次元のものを作るべきだと思うんです。そのために、どんどん新しいものを取り入れていきたいですね。「緑黄色社会、次は何をやるんだろう?」と期待してもらえたらと思います。
長屋 私は今年、緑黄色社会というジャンルをもっと確立したいです。きっかけは「Mela!」でもいいけど、全部をひっくるめて緑黄色社会だなと思われるようになりたい。私の声が聞こえてきたら「あ、緑黄色社会だ」と思ってもらえるような「らしさ」を築きたい。
peppe そうだね。そのための基盤を作りたいよね。
長屋 うん。あと、個人的には「恥」を捨てたいです。最初に話した邪念の話にもつながるんですけど、私は家族やメンバーの前でも恥を捨てることができないんですよ。でも恥を捨てた先にもっとやりたいことやできることがあるような気がするんです。なので、恥を捨てたい。
穴見 僕は、とにかく「愛すること」を忘れたくないですね。
長屋 おおっ。
穴見 さっき壱誓が去年のライブの話をしましたけど、実際のところ、僕らがライブを中止したことや、あるいは年末に有観客ライブをやったことに対して、ファンの人たちがどう思っているのかわからない部分もあって。もちろん、僕らの判断を応援してくれた人たちもいたと思うけど、「興味失せたわ」と思った人もいたかもしれない。人がそれぞれどういう気持ちを抱くのかなんてわからないですし。そういうことも踏まえて、ライブだけじゃなくSNSでの発信に関しても、強い心を持ち続けなければいけないし、伝え方も考えなければいけなかった。そういう意味でも、2020年は考えることが多くて難しい1年だったし、そういう感じは、今年も少なからず続いていくと思うんです。
──うん、そうですね。
穴見 だとしたら、自分としてはとにかく人を愛し続けていきたいと思います。それは、メンバーもそうだし、ファンの皆さんもそうだし、スタッフの皆さんもそうだし。愛することを忘れなければ、2021年はいい年になっていくんじゃないかと思うんですよね。個人的な感覚ですけど、2020年は閉じこもってしまったというか、人と距離を取ろうとしてしまったところがあって。なので、今年はとにかく全部を愛したい。それがすべてだなと思います。