緑黄色社会|より深く、リョクシャカらしい新境地へ

「結証」に込めた今の緑黄色社会の方向性

──「結証」は、表題曲はもちろん、カップリングの「LADYBUG」も、「Copy」も、素晴らしく濃密な楽曲たちが並んだシングルですよね。トリプルA面でも成立するくらいのシングルだと思いました。

長屋 ありがとうございます。「SINGALONG」のようなすごく納得がいく作品の次にはそれを超える作品を出さないといけないし、今たくさんの人に「Mela!」が聴かれているのはすごくうれしい反面、私たちとしてはそこに留まらず次に行きたいという思いもあって。だから「結証」は今の自分たちの思いや方向性を示そうと作ったシングルでもありますね。緑黄色社会の次のフェーズを届けるために作られた3曲というか。

──1曲目の「結証」はアニメ「半妖の夜叉姫」のエンディングテーマとしてできあがった楽曲です。小林さんが作曲、長屋さんが作詞にクレジットされていますね。この曲はどのようにして生まれましたか?

小林 曲の構想は前からあって、アニメのお話をいただいたときに「あの種を膨らませたらピッタリな気がする」と直感的に思って完成に持っていった曲です。その種の段階では、「ラスト・ラブ」という仮タイトルだったんですけど(笑)。

──ロマンチックなタイトルですね(笑)。

小林 はい(笑)。アニメのエンディング曲には、毎週の物語をちゃんと締めくくる大事な役割があるので、毎回蓋をギュッと閉じることができるような強い曲を目指して作り始めました。こういうミドルバラードな曲調って、下手したら5分くらいの長い曲になりがちだけど、「結証」はフルで4分に満たないくらいに収めて、そのうえで展開はちゃんと充実して盛り込もうと決めて作りました。アニメ作品に対して曲があまり長くあるべきではないと僕は考えているので。だからパンチ力はあるんだけど、綺麗にお片付けして帰っていく、みたいなイメージで作りました。

しなやかさと美しさを持ったメロディの理由

──「結証」が小林さん作曲だと知ったときに、小林さんが昔ダンスをやられていたことを思い出したんですよね。この曲のしなやかな抑揚のある美しさは、まるで人間の筋肉の動きの美しさのようだなと。

穴見真吾(B, Cho)

穴見 壱誓の作る曲にはダンスの影響が確実にあると僕は思います。壱誓は自分では直球を投げているつもりでも、実際はカーブになっていたりするというか、そういうところがあって。普通じゃないものが素で出てくる感じというか。それがしなやかさや美しさにつながっているような気もするし、壱誓の魅力だと思います。それは僕にはないところなのでうらやましいなと思います。

長屋 壱誓の曲って、本当にいい意味で聴いていて不安になるんですよ。不安っていうのは、考えさせられるようなメロディやリズムが多いというか、情緒が不安定になるというか(笑)。

穴見 そう、そうなんだよね。明るいのか暗いのかもわからない。

長屋 ホント異空間というか、不思議なんですよ。感情をすごくかき乱される。そのくらい人間味のあるメロディやリズムが壱誓からは自然に出てくるんですよね。でもなぜか聴き馴染みはいいんです。そういうところが絶妙で「すごいヤツだなあ」と思っています。

──自身の作る楽曲について、小林さんはどう感じていますか?

小林 無意識にそういうものになってしまうんですよね。僕の経験の中で音楽に影響することといえばずっとダンスをやっていたとか、BUMP OF CHICKENが大好きでずっと聴いていたとか、それぐらいしかないので、確実にその2つが作曲に影響を与えているとは思います。記憶の匂いでずっとやっているというか。

歌詞がない状態でキラキラしていた

──無理やり話をつなげるようですけど、「結証」の歌詞を見たときに、僕は「記憶」や「歴史」といった、「連なっていく」もののモチーフを思い浮かべました。「結ぶ証」と書いて「結証」というタイトルもさまざまなイメージを抱かせますが、歌詞を書くにあたって、どんなことを考えましたか?

長屋晴子(Vo, G)

長屋 この曲で伝えたかったのは「目に見えないもの」ですね。運命とか、絆とか、みんな口ではパッと言えてしまうけど、その実態はわからず、存在するかどうかさえわからないもの。そういうものこそ大事にできたらいいし、それを信じることができれば、本物になる。そういうことを考えながら書いた歌詞です。

──「目に見えないもの」というテーマが出てきたのは、なぜだったのですか?

長屋 そもそも、私はぼんやりしたものをテーマにすることが多くて。「愛」というワードが歌詞によく出てきたり、「普通ってなんだ?」とか「正解ってなんだ?」とか、概念的なものについて考えることも好きなんです。「結証」もそういう曲だなと思います。そもそも、この曲は歌詞がない段階から強さがあった。歌詞があるからよく聴こえる曲も世の中にはたくさんある中で、曲自体が強いというのはすごく大事なことだと思っていて。

──わかります。言葉で持っていきすぎてしまっている曲もありますよね。

長屋 こんなこと言ってますけど、もちろん私の作る曲にもそういう曲はあって。でも「結証」は歌詞がない素の状態で、本当にキラキラ輝いて聴こえたんですよね。「想い人」という曲もそうだったんですけど、それは曲自体が持っているエネルギーがすごい証拠だと思うんです。「結証」の歌詞を私が書く前に、壱誓が「『想い人』のときみたいな、強い曲を作ろうね」と言ってくれたことでその強さが保証された気分になりました。