すべては「チェリーハント」のMVから

──ここからは1stアルバム「Q&A -Queen and Alice-」についてお話をお伺いしたいと思います。これまでRoyal Scandalとして発表してきた曲が軸にありながら、かなりコンセプチュアルな作品になりましたよね。

奏音69　ストーリーや作品のコンセプトは主に私が考えているんですが、Royal Scandalで描かれているストーリーのほとんどは、RAHWIAが描いた「チェリーハント」のMVがもとになっています。「MVに出てきたバーテンダーにはこういう過去があるんじゃないか？」「ピンク髪の歌姫にはライバルもいるんじゃないか？」とMVを観たときに浮かんできた想像を膨らましながら作品のストーリーを作っているんです。

──主にストーリーを考えているのは奏音69さんでありながらも、その源泉となっているのはRAHWIAさんのMVであると。

RAHWIA　私が仕事を増やしてるんですね（笑）。

奏音69　そうだよ（笑）。よくできていると思うのは、「チェリーハント」のMVの間奏部分でいろいろ思わせぶりな過去のシーンが出てくるんですよ。RAHWIAは当時そこまで意識してなかったと思うけど、彼女のイラストからストーリーを想像して曲を作る作業が楽しいんですよね。

──奏音69さんが思い描いているストーリーは、今現在で全体の何割くらい進んでいるんでしょうか？

奏音69　全然序盤ですよ。「ONE PIECE」で例えるなら、ナミが初めて登場したときくらい。1巻の後半かな（笑）。

──奏音69さんはこれまでいろんな方に動画を作ってもらったと思いますが、そこまで想像力がかきたてられるのはRAHWIAさんだけですか？

奏音69　もちろんほかの方の動画も素晴らしいのでいろいろ思い描くことはありますが、RAHWIAのイラストは特別ですね。RAHWIAは私の頭の中を読んでいるんじゃないかと思うくらい。

──逆にRAHWIAさんは奏音69さんの音楽をどう感じているんでしょうか？

奏音69　聞いてみたいね（笑）。

RAHWIA　私、いつもは動画の作業を始める前はすごくやる気が起きないんです。でも奏音69さんから届いた音源を聴くと、どんどんビジュアルのイメージが湧いてきて動画を作る気が起こる（笑）。すごいパワーだと思います。

Royal Scandalにはリーダーがいない

──luzさんはボーカルですが、曲やMVの制作に関してどう関わっているんでしょうか？

luz　僕、曲にも動画にもかなり意見を言うほうなんですよ。僕に限らず、奏音69さんもRAHWIAさんもやりたいことを言い合うタイプなんですよね。それぞれが違う部分を担ったクリエイターだから、もちろん意見が食い違うこともあるんですけど、お互いに尊重しているところがあるからこそ歩み合うことができる。

奏音69　Royal Scandalには明確なリーダーがいないんです。私が思うに、イラストはRAHWIA、ライブと歌はluz、楽曲とストーリーは奏音69といった感じで3人共それぞれの分野のリーダーなんですよね。各持ち場の最終的な決定権と責任はそれぞれにあるので、それがうまく噛み合っているのかもしれません。

luz　例えば今回のアルバムで言うと、冒頭の曲「ワンスアポンアタイム」は奏音69さんの構想の中にはなかった曲なんです。でも僕が「ライブの頭に持ってこれるようなシンフォニックで幻想的な曲をどうしても入れたい」とお願いをして、急遽追加してもらったんです。奏音69さんは「作れるかわからない」と言っていたけど、完成したらこの曲がメチャクチャカッコよくて。

奏音69　luzに言われて自分の引き出しにない曲を作ってみたんです。今考えてみると、Royal Scandalにとって絶対に必要な曲なんですよね。こういう想定外なことが起こるのもグループで活動をしている醍醐味だと思う。2人からはすごく刺激をもらってます。

ソロのluzとRoyal Scandalのluz

luz　2人に質問なんだけど、アルバムの中で特にお気に入りの曲はどれ？

奏音69　どれだろうな……正直どの曲もかわいい我が子だからな（笑）。甲乙付けがたいけど、新しい自分を発見できたという意味で「ワンスアポンアタイム」かな。もちろん全曲自信作ではあるけどね。

RAHWIA　私は「ロイヤルフラッシュ」。この曲を聴くと、昔作業してたときの思い出が全部浮かんでくる（笑）。

奏音69　「チェリーハント」や「クイーンオブハート」を作った頃のような初期のモードを今のRoyal Scandalに落とし込むことをコンセプトに作ったのが「ロイヤルフラッシュ」なんです。Royal Scandalとしていろいろな方向性の楽曲を作ったけど、「私たちの王道なサウンドと言えばこれ」という要素で作ったというか。だからRAHWIAが曲を聴きながら今までのことを思い出してくれたのはうれしいですね。

──luzさんはどの楽曲がお気に入りですか？

luz　僕は始まりの曲でもある「チェリーハント」ですね。アルバムをリリースするにあたって歌い直したんですけど、6年前のものと聴き比べたら全然違うものになっていたので。自分で言うのもこそばゆいですけど、ボーカルとしての成長を一番感じることができる曲なのかなと。がんばってきてよかったなと思いましたね。

奏音69　声の強さも全然違うし、luzの成長を実感できる1曲だね。

──luzさんはソロとRoyal Scandalで歌い方を変えていますよね？ どのように切り替えているんですか？

luz　Royal Scandalの場合は艶やかな歌声を意識しています。ただ、艶やかだけどしつこくないみたいな微妙な塩梅は常に考えています。奏音69さんに「luzは普通に歌ってるだけでエロいんだから、変にエロくする必要はないよ」と言ってもらったことがあって（笑）。

奏音69　本当にそうなんですよ。この声ですから（笑）。

luz　「すでに味があるんだから真っ直ぐ歌えばいい」と言ってもらったことがあるんです。自分1人だとなかなか客観視するのが難しいから、アドバイスをもらえるのはありがたいですね。それに奏音69さんの作るメロディがすごくおしゃれなので、邪魔しないように乗っかることをすごく意識しています。ソロの場合は完全に自分を出すイメージなんですけど、Royal Scandalではメロディと世界観に乗っかれば大丈夫という安心感があるんですよね。

「誘ってくれてありがとう」

──アルバムのジャケットには3人の写真が使用されていて、こちらもファンの間ではかなり話題になっていました。RAHWIAさんがこういったアーティスト写真を撮るのは初めてですよね？

RAHWIA　初めてです。このユニットのメンバーではあるけどライブには参加していないので、感覚としては裏方というか、2人とは少し離れた位置にいるような感じがあったんです。でもみんなで衣装を着て撮影に参加したことで、自分もRoyal Scandalの一員なんだと改めて実感することができました。

奏音69　あー、よかった。

RAHWIA　誘ってくれてありがとう。恥ずかしかったけど（笑）。

奏音69　RAHWIAにこういう話を持ちかけると少し嫌そうにするんですよ（笑）。でも今回は絶対に3人で写真を撮ったほうがいいと思っていたので、RAHWIAから「ありがとう」という言葉が聞けてよかったですね。

RAHWIA　でもまだ少し恥ずかしいです（笑）。

奏音69　luzの顔も、普段のジャケット写真よりも見えてる範囲が広いよね。

luz　僕もRoyal Scandalをもっといろんな人に知ってもらいたいと思っていて、変に違和感のあるような顔の隠し方をしたくなかったんです。衣装もすごく華やかだし、「堂々と3人の1stアルバムを出すぞ」と思って今回の撮影に挑みました。

──それと、アルバムの“Queen盤”には画集が付属するんですよね？

RAHWIA　はい。最初はこれまで描いてきたイラストを載せようと思っていたのですが、せっかくの1stアルバムなので全ページ分のイラストを描き下ろしました。Royal ScandalのMVに登場するキャラクターの名前がわからない方もいると思うので、イラストには奏音69さんに書いていただいたキャラクターの紹介文も入っています。画集のタイトルは「クイーンズアトリエ」で、女王の美術館をイメージしました。美術館を観覧するように、Royal Scandalの世界観を見てもらえたらという思いを込めています。

奏音69　音楽のアルバムというフォーマットだと、どうしてもluzと私がメインになってしまうのが不本意なんですよね。私たち3人の作品とは言えないじゃないですか。だからアルバムを出すならMVを収録した映像媒体を付けるのはもちろん、RAHWIAが描いた画集を付けるのは絶対だと考えていました。ただRAHWIAは忙しいので、画集を出すにしてもすでに描いたイラストでまだ公開されていないものを掲載しようと思っていたんですよ。まさか全イラスト描き下ろしで上がってくるとは思ってなくて。

RAHWIA　がんばりました。

奏音69　メチャクチャ熱が入っているなと。なので皆さんにはちゃんと画集も手に取ってRoyal Scandalの世界を楽しんでもらいたいですね。3人で作った作品だと胸を張って言える出来栄えになっていますから。

最高であり、最強のアルバム

──今後、ユニットとして挑戦してみたいことはありますか？

luz　今月から全国ツアーが始まりますが、次のライブは楽曲が全部新しくなったくらいのタイミングだと思っているんです。Royal Scandalでライブをするとしたら同じライブは絶対やりたくないし、ちゃんとストーリーが進んでいるところを見せたい。それとRoyal Scandalのライブは絶対にホールが似合うので、大きいホールでライブをしてみたいですね。奏音69さんが挑戦したいことは？

奏音69　まだまだRoyal Scandalとして、もっといろんなテイストの楽曲に挑戦したいです。私たちのベースとなるイメージは大切にしながら、新しいアプローチをどんどん試してみたいし、ストーリーをもっと発展させていきたい。ライブに関してはこのユニットにしかできないことをやって、観に来てくれた人を驚かせたいです。

RAHWIA　私はこういう形で作品に関わるのは初めてなので、実はあまり実感がなくて。このアルバムは今まで応援してくださった方へのプレゼントでもあり、今まで地道に活動を続けてきた私たち3人へのプレゼントでもあると思っています。だからこれからも、皆さんにたくさんプレゼントを届けられたらいいな。

luz　ずっと応援してくれている人たちの中には「もしかしてアルバムが出ないのかな？」と不安に感じていた人もいたみたいなんですよ。待望のアルバムがようやく完成して、現時点ではこれ以上にないものを詰め込むことができたと思っています。アルバムだけど全曲シングル曲みたいな。

奏音69　私もアルバムを出すなら最高であり、最強のものを作ると決めていたので、中途半端なタイミングに出すわけにはいかなかったんですよね。今回のアルバムでは「これぞRoyal Scandal」と言えるものをすべて詰め込むことができました。どの楽曲も本当に胸を張ってオススメできます。アルバムを聴いていただいて、グッとくるものが1曲でもあればうれしいですね。