Royal Scandal新章開幕、新作「777 -Three Seven-」に込められた3人の挑戦

luz、奏音69、RAHWIAの3人によるクリエイターユニット・Royal Scandalが、12月7日に2ndアルバム「777 -Three Seven-」をリリースした。

Royal Scandalがアルバムを発表するのは、「Q&A -Queen and Alice-」以来およそ3年ぶり。この3年間でそれぞれのソロ活動を充実させてきた彼らは、2ndアルバムのリリースをもってRoyal Scandalの“新章開幕”を宣言した。彼らの音楽に込められたミステリアスな物語は新章でどのような局面を迎えるのか? 2ndアルバムの完成を記念して、音楽ナタリーではメンバー3人へのインタビューを行い、新作に込められたさまざまな伏線の意図やユニットの今後の展望を聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦

ロイスキャ×謎解きの相性

──アルバムの話に入る前に、今年9月に行われたRoyal Scandalのオンライン謎解きイベントに関してお話を聞かせてください。どういう経緯でこのイベントが開催されることに?

奏音69 個人的に私が“謎解き好き”というのがあって、Royal Scandalの楽曲にも通じる“ミステリー要素”を打ち出した謎解き的な企画ができないかなと考えていたところに、企業の方からオファーをいただいたので快諾した、という経緯ですね。

luz 音楽活動と謎解きイベントを結び付けて考えたことがなかったから、最初はうまくいくのか不安がありました。でもRoyal Scandalの楽曲にはミステリアスな要素が多いし、謎解きはユニットの“物語担当”の奏音69さんの得意分野というのもあり、このグループにピッタリなんじゃないか、とも考えて。

──謎解きのストーリーの一部はYouTubeで視聴することができます。これまでRoyal Scandalが発表してきた楽曲タイトルがそのまま、謎解きの章立てに使われていますが、このイベント自体がユニットのこれまでの歩みを振り返る意味合いを持っているわけですよね?

奏音69 はい。この謎解きで初めてRoyal Scandalに触れる人もいるだろうし、我々が1stアルバムを発表してから2年くらい間が空いていたので、今回の謎解きはユニットのこれまでをおさらいするような内容がいいだろうと考えまして。それにRoyal Scandalの楽曲に登場する人物や世界観の設定に関しては細かく決めているものの、これまでテキストベースで解説したことがなかった。既存のユーザーの方々にはいろんな考察をしてもらって楽しんでもらっていましたが、オンライン謎解きでは種明かしとまではいかないものの、初めて公式からの1つの道筋を示したことになったと思います。

──解釈の余地があるものに対して公式側から1つの答えを示すことに対して、抵抗はありませんでしたか?

奏音69 もちろんそこはかなり迷いましたが、謎解きを作る頃には2ndアルバムの方向性がある程度見えていて、「ユニットの新章をちゃんと楽しんでもらうためには、これまでの歩みがちゃんとわかったほうがいいかな」とも考えていて。謎めいたものを作りながら言うのもよくないかもしれませんが、いろんなものを隠しすぎてしまうと楽しみの幅を狭めてしまうんですよね。我々が描いているRoyal Scandalの物語を提示するには、謎解きイベントという舞台はピッタリだったのかな、と今になって感じています。

3年でパワーアップした3人が再び集結

──3年ぶりのアルバムを作るにあたってはどういう構想があったんでしょうか?

奏音69  私としては1stアルバムは5年にわたって積み上げてきたものを全部まとめた、ある種のベストアルバムのような作品だと捉えていて。2ndアルバムはこれまでのロイスキャの活動をベースにしながらも新しい音作り、新しいテーマに挑戦する必要があると考えていました。またアルバムは2枚目ですが、私たちは8年もユニットの活動をしていて、長く活動をしているとどうしても作品の方向性が絞られてくる。でもRoyal Scandalにはちゃんとストーリーがあるし、過去にあったものを焼き直すわけにはいかない。だから違う路線に挑戦する必要があった。

luz ロイスキャとして新しいことに挑戦することになって、それがみんなに受け入れてもらえるかという不安はもちろんあって。でも1stアルバムからの3年間で僕も奏音69さんもRAHWIAさんもパワーアップしているから、絶対にいいものが作り上げられる自信がありました。

luz

luz

RAHWIA しばらくRoyal Scandalの動きがないと、「早く続きが描きたい!」って気持ちになるんですよね。だから今回、2ndアルバムでいろんなキャラクターを描くことになったのは大変だったけどやりがいがありました。

luz RAHWIAさんはこの3年でイラストの色使いがものすごく進化したと思う。めちゃくちゃ絵がうまいことに変わりがないんですが、そこに深みが出てきたというか。

奏音69 うん。作風が如実に進化したと思う。キャラクターの感情描写がさらに濃くなった。RAHWIAのイラストの進化を計算に入れて、ストーリーをどう表現するかも変わってくるんですよ。それはイラストだけじゃなくて、luzのボーカルも同じですね。3人それぞれがいろんな経験をしてきたことによって、Royal Scandalとしての引き出しは間違いなく増えました。

新章の開幕を告げる「チェシャーゲーム」

──アルバムの1曲目を飾る楽曲「チェシャーゲーム」は、収録曲の中でいち早くミュージックビデオが公開された楽曲でもあります。新章開幕を告げる1曲としてこの曲が選ばれた理由は?

奏音69 本来であれば「チェシャーゲーム」はもっとあとに出す予定の楽曲でした。もう少しいろいろな伏線を張ったあとに出そうかと考えていましたが、この曲には新キャラのキャスリンが登場するのと、既発の曲とあまりつながりのない固有の要素を持った楽曲でもあるので、新しい章を始めるにはピッタリかなと思って。新要素が含まれている分、サウンドはRoyal Scandalらしさを踏襲した王道でいくところまではすぐ決まりました。けっこう大変かもしれないなと思ったのは、キャスリンのキャラクターデザインで、ここはもうRAHWIA任せなんですが……。

RAHWIA 新章の始まりに登場するキャラクターなので、今までのキャラとは少し違うデザインにしないといけなくて。衣装もこれまでとは一線を画す個性的なものにしたのと、「不思議の国のアリス」に出てくるチェシャ猫がモチーフなので、猫っぽい要素を各所に入れているのがポイントです。

キャスリン

キャスリン

奏音69  RAHWIAが入れてくれた猫要素が絶妙で。私としてはこの世界観に猫耳は存在しないし、人間に尻尾が生えるような設定にもしたくなかった。でも猫の要素は入れたい、とRAHWIAにムチャぶりしてしまったんですよ。そうしたら、前髪の形が猫耳っぽく見えるような現実的な形で猫の要素を入れてきて、これはもう天才の所業だなと思いました(笑)。何度かリテイクをお願いすることになるかと思っていましたが、キャスリンのデザインはほぼ直しがなく、一発で仕上がったものを描いてくれたのですごく助かりました。

luz より楽曲の世界観に没入できるような仕掛けとして、冒頭のセリフ部分がけっこう重要だと思っていて。ライブの1曲目でもできるような形にしたいというのは、僕から奏音69さんに相談させていただきました。

奏音69 アルバムの制作とツアーはセットで考えていたので、新章の開幕とライブのスタート、どちらにでも使えるようにluzのアイデアを採用して。ライブで披露するのも楽しみな1曲ですね。

──MVが公開されてからすでに半年近く経ちますが、ファンの反応はいかがですか?

奏音69 皆さんそれぞれいろいろな考察をしていてうれしい限りですね。先ほど話したように、「チェシャーゲーム」はもっとあとに発表する予定のものだったので、この曲だけではまだ解けない謎がたくさんあります。なので、今疑問に思っていることはそれぞれ忘れずに、これから公開される関連楽曲にも注目してもらいたいですね。

ロイスキャのアルバムだから“luzらしい曲”を

──MVの公開順で言うと「チェシャーゲーム」のあとに公開されたのがロック調の「BULLET」です。Royal Scandalにおいてロックの楽曲ではロゼッタが主人公であるという通説がささやかれていますが、MVで描かれているのもロゼッタを軸にしたストーリーですよね。

奏音69 おっしゃる通りロゼッタを主軸としたもので、「BULLET」という曲の構想自体は7年前に「REVOLVER」という曲を発表したときからあったんですよ。ずっと寝かせていた曲で、「チェシャーゲーム」でRoyal Scandalの王道を届けたあとには、コアなファンが求めるロック調の「BULLET」が合うかなと思い、7年を経てようやく形になりました。MVの内容的には「REVOLVER」に登場したスヴェンという眼鏡のキャラがずっとモブキャラ扱いされていたので、ロゼッタとスヴェンのストーリーを展開させるようRAHWIAに描いてもらっています。

──Royal Scandalとしては珍しいロック調の曲ですが、luzさんはもともとこのジャンルが得意ですよね。

luz 得意ではあるんですが、「BULLET」はすごく難しい曲でした。変拍子はあるし、早口でないと歌えないパートはあるし……。「これくらい歌えるよね?」っていう奏音69さんの無言の圧力を感じました(笑)。

奏音69 luzのアルバム「FAITH」(2021年10月発売の4thアルバム)を聴かせてもらったときに、彼の真骨頂であるロックサウンドをもっとRoyal Scandalでもやってみたいなという気持ちが湧いて。アルバムには私も1曲提供させてもらっているんですが、彼のアルバムに提供する1曲は“奏音69らしく書くこと”が求められているわけじゃないですか。でも今回はRoyal Scandalのアルバムだからもっと“luzらしい曲”を書いていいんだと思いまして。「FAITH」を聴いて触発された私なりの挑戦が形になったのが「BULLET」ですね。

luz “luzらしい曲”のはずなのに、僕が歌いこなすのが大変という(笑)。練習段階ではキーを1つ下げて歌うつもりでしたが、この楽曲の勢いとか切なさが出るのは原曲キーだよなと思い、本番のレコーディングはそれで挑戦することにして。

奏音69 レコーディングでのluzの気迫はすごかった。

luz ライブで歌えるかみたいなことは一切考えず、今出せる自分のすべてをぶつける気持ちでレコーディングしましたから。ライブ、どうしようかなあ(笑)。