ナタリー PowerPush - THE WAYBARK
だいち69×志磨遼平 熱闘ロック対談!
だいち69こと成田大致は、ロックバンド・THE WAYBARK(ザ・ウェイバー)のボーカリスト。そして青森唯一のロックフェス「夏の魔物」の主催者でもある。今から5年前、一介の高校生だった大致が立ち上げた「夏の魔物」は、回を重ねるごとに存在感を増し、全国から多くのロックファンが集まるユニークなフェスとして成長。そして、自身のバンドTHE WAYBARKも着々と実力を蓄え、ついに1stアルバム「マイ・ジェネレイション」を完成させた。
そして、そんな大致のロック精神に共鳴したのが毛皮のマリーズのフロントマン、志磨遼平。2人は本物のロックを現代によみがえらせるという目的のもとに意気投合し、ロックンロール啓蒙活動を進行中。今回は「ナタリーの読者にロックを伝えたい!」という2人の希望を受け、この対談企画が実現した。
話題は2人のロック観から「夏の魔物」の特異性、THE WAYBARKの魅力まで縦横無尽に展開。今もっとも熱くまっすぐな若手ロッカー2人の言葉に胸を焦がしてもらいたい。
取材・文/大山卓也 インタビュー撮影/平沼久奈
最近のバンドマンガの主人公は全員「負け顔」
──大致くんと志磨くんはそのロック観において、非常に共感しあうところがあるということで、今回の対談企画に至ったわけですが。
志磨 うん、たぶん大致が好きでずっと聴いてきた音楽と僕の好きな音楽、だいたい一緒で、そういう音楽を演奏してるバンドってのがたぶん、もう年上の人しかいないんですよね。
──はい。
志磨 それこそ清志郎さんからの系譜でやってるような若いロックンロールバンドってのがいなくって。だから俺らは歳が近くてこういう音楽をやってる似たもの同士っていうか。
だいち69 そうですね。リスナー感覚のバンドマン同士。今は、ロックファンとしての感覚を持ってないバンドマンが多すぎるから。これはロック、これはロックじゃないみたいな。志磨さんとはそこの感覚がすごい似てる。
志磨 マンガの話なんやけど、最近ロックバンドが出てくるマンガが増えたやん。この間もどっかの雑誌に載ってるの見たら、主人公はモテない、童貞、冴えないっていう最近よくあるパターンで。で、最近売れたバンドマンガの主人公の顔をバーッと並べると、もう全員負け顔なんよ。例えば「BECK」のコユキも負け顔やろ。レスポールのやつはなんやったっけ?
だいち69 竜介?
志磨 そう、あいつは勝ち顔。でもあれは主人公じゃないねん。で、まあほかにもいっぱいあるけどだいたい負け顔なんね。でも俺はやっぱり勝ち顔のほうが好きなわけよ。負けてない音楽が好き。「俺たちは勝ってる!」っていう音楽が聴きたいんよ。
だいち69 うん、負けてる音楽ばっかりだったら、少年少女は憧れないですよ。入口にもならないし、音楽を始めるきっかけにもならない。
志磨 ロックバンドっていうのは、変身願望やないですけど「自分もこうありたい」っていう像やったと思うの。それが最近はなんか自分らの代弁者というか、「あっ、この人も自分と同じなんだ、よかった」みたいなさ。そういうのイヤだね。
──じゃあ自分の内面をウジウジと描くバンドには、あんまりシンパシーは感じない?
志磨 ああ、全然感じない。
──人気ありますけどね、そういうバンド。
志磨 そういう暗いのは良くないすよ。ロックバンドはヒーローみたいなものだから。
だいち69 でも僕らはこの感覚が当たり前だと思ってたんですけど、周りを見てみると案外そうじゃないみたいで。だから今またロックについてみんなで考えなきゃいけない。2010年だし、2人で攻めていくぞっていう気持ちなんです。
俺らは聴きたい音楽をそのままやる
──ロックに対するそういう姿勢は、大致くんと志磨くんの共通項だと思うけど、THE WAYBARKと毛皮のマリーズという2つのバンドは、サウンド面でも同じ系譜の中にある気がするんですよね。
だいち69 それはやっぱり聴いてきたものが一緒ですからね。
志磨 それで、俺らはやっぱり聴きたい音楽をそのままやるのね。最近はたぶん聴いたことないものを作る人が多いんですよ。今までどこにもなかったような音楽を作るっていうのはまあすごいと思うんですけど、それは単純に俺らの持ち場じゃないっていう。
だいち69 そこは触りたくない(笑)。
志磨 そうそう。向こうが新商品開発部だとしたら、俺らはこう、クレームを受け付けたり品質改善をするっていう役割でね。部署が違う。
──でも変拍子の曲ばっかりやってるようなバンドも、変拍子が好きで好きでたまらなくてやってるのかもしれないですよ。
だいち69 いや、でもね、そこがメインになっちゃうと、新規のロックファンが増えにくくなると思うんですよ。ちょっと難解なものが流行ってるシーンに俺は危機感を感じてて。コピーしにくいものばっかりだと、楽器買うきっかけもできない。あとは志磨さんが言った負けてる感じ? これじゃキッズが入ってきてもロックに熱くなれないですよ。このままじゃ2、3年後どうなっちゃうんだって思う。
志磨 やっぱ聴くに耐えうる音楽をまずは作りたいよね、僕らは。10年、20年経ってまだ聴ける音楽を作りたい。RCサクセションとかTHE ROLLING STONESとかTHE BEATLESみたいな。
──なるほど。新しいもの、難解なものもいいけど、全体のバランスとして正統派のロックンロールが少なくなっていてもの足りないということ?
だいち69 はい。そのバランスが俺は今おかしいと思うんです。
志磨 だからその音楽を初めて聴いたときに「これ、超モッシュやりやすいじゃん」とか、夏フェスで見て「楽しかったなー」っつって終わり、みたいなね。その音楽を反芻したりとか、それが人生に何かを及ぼしたりだとかね、そういうところがすごく欠けてる気がして。だからそこんところがバチッと決まってるような音楽っていうのを、僕らがもう1回生で見たいっていうことだね。
──で、それをやってるバンドが少ないから自分たちでやってやろうと。
志磨 そう、まあ多くてもやってるだろうけど。でもライバル少ないから「楽勝や」と思いきや……「あれっ?」っていう感じはあってね(笑)。「そんな求められてない?」っていう、需要と供給のバランスが。
──あははは(笑)。
だいち69 誰もやってないんや、ラッキー、独り占めじゃんって思ってたらね、そうでもないんだ、誰も欲しがってないのかなって。
──自分がこんなに聴きたい音楽をやってるのに。
志磨 まあ、いいんすけどね(笑)。
CD収録曲
- Let’s get honey ~夜の裏側に~
- WANNA
- 君がすべて
- Tell me Sunny
- ハイ・フィデリティ
- Good Bye My Girl
- アイデン&ティティ
- ROLL IN GIRL
- 失恋小説
- happy happy ~寂れた町の冬~
- さよならジニーハウス
- Boys & Girls
- ウェイバーのテーマ
THE WAYBARK(うぇいばー)
2002年結成。だいち69(Vo)、Johnny(G)、おっくん(B)、ブラック斎藤(Dr)からなる4人組バンド。結成以来ライブや自主企画イベントを精力的に開催し、地元・青森のロックシーンを牽引する存在に。ボーカルだいち69は青森唯一のロックフェス「AOMORI ROCK FESTIVAL 夏の魔物」を主催。THE WAYBARKも毎年出演を果たしている。2010年7月、1stアルバム「マイ・ジェネレイション」をリリース。
毛皮のマリーズ(けがわのまりーず)
志磨遼平(Vo)、越川和磨(G)、栗本ヒロコ(B)、富士山富士夫(Dr)による4人組ロックバンド。2003年に結成し、都内のライブハウスを中心に活動。2005年に発表した自主制作CD-R「毛皮のマリーズ」が話題を呼び、2006年9月にDECKRECから1stアルバム「戦争をしよう」をリリースする。その後も音源の発表を重ね、ライブの動員も激増。コロムビアミュージックエンタテインメントと契約し、2010年4月21日にアルバム「毛皮のマリーズ」をリリース。