ナタリー PowerPush - THE WAYBARK

だいち69×志磨遼平 熱闘ロック対談!

何かがゴロっと変わるきっかけに、我々はすごくなりたい

──でもそういう「今のロックシーンはおかしい」みたいな話って、もっと上の世代の人が言うならわかるけど、大致くんはまだ23歳なのに、そんな親父の小言みたいな話をしてるのが面白いなあと思うんですよね。

だいち69 あはは(笑)。いや、これをね、俺らとか志磨さんくらいの年代の人が言うことに意義があるんじゃないかなっていう。

志磨 口酸っぱく言わないと。「このバンドが好きです」で終わりじゃなくて、好きになったら歴史を遡んないとね。

だいち69 うん、マリーズもTHE WAYBARKもそこんとこ掘り下げやすいバンドでしょ。絶対ルーツにたどり着ける。

──わかりやすい音楽をやって、ロックファンの入口になろうっていう意識は、THE WAYBARKにもマリーズにもあるんですね。

志磨 うん、僕はありますね。

だいち69 僕もあります。

インタビュー写真

志磨 こないだ広島に行ってさ、ラジオに出たんやけど、終わったら戦時中の女学生みたいなおさげのセーラー服の子が、ワーってタクシー追っかけてくんの、4人ぐらいで。で、「うわっ、すごいな」と思って、一歩間違えたらこの女学生4人組、この子たちはTHE ROLLING STONESを好きになる素養があるってことやん。それって単純にロックファンとして、希望があるなあって思って。ド田舎のこんなもっさい女子中学生……、その子たちこれ読んだら悲しむかな(笑)、まあそういう田舎の女子中高生みたいな子でもやっぱりロックンロールカッコいいって思うんやなあと思って。そういう可能性というか、入口は作っていきたいですよね、やっぱり。

──毛皮のマリーズがきっかけになって、ロックに目覚めるっていうのはうれしい話ですね。

志磨 だからマリーズを聴いて「ロックンロールってカッコいいな」って思わせれば勝ちだよね、我々の。もちろんそのまんま「マリーズ、カッコいいね」って思ってくれるのもすごくうれしいですけど。

──それは「昔はよかった」的な話とはちょっと違うんですよね?

志磨 うん、別に昔のロック復興委員会なわけではなくて、自分が好きだと思ったものを自分でやるのが面白いからやってるだけでね。僕はSEX PISTOLS聴くよりSEX PISTOLSになったほうが面白いからバンドやっとるし。大致はフェス観に行くよりもフェスをやったほうが面白いから「夏の魔物」始めたわけやし。

だいち69 俺のほうがロック好きだぜ! っていう気持ちが強いんですよ。

志磨 そうそう。何かがゴロっと変わるきっかけに、たぶん我々はすごくなりたい。

──でも逆に言えば、そういう野心がないのにロックバンドやってても仕方ないというのもありますよね。

志磨 ロックを選ぶ人の人種が変わったんだね。昔はクラスで一番かっこいい奴がやってたはずなのに、なんか知らない間にクラスの一番冴えない奴がやることになってた。

だいち69 あはは(笑)。

志磨 そういうの怖いなと思って。

「夏の魔物」1日目はヘボいバンドの淘汰の場

──ところで大致くんは「夏の魔物 AOMORI ROCK FESTIVAL」を立ち上げて5年目ですよね。最初は高校生だったわけで、今思うとありえない話ですよね。

だいち69 その話自体ファンタジーだと思いますからね(笑)。狂ってますよ。あはは! よくやったなー。

志磨 なんかね、今のほとんどのロックフェスはバンドを並べて、売れてる順に上から1、2、3位ってテンプレみたいに出演させてるわけよね。で、「魔物」がすごいのは「これ誰が聴くの、今!?」っていう人たちをさ、ズラーっと並べてるっていう。完全に頭おかしいじゃん(笑)。それが一番すごいよね。

だいち69 そこなんですよ。ロックファン的感覚で選ぶとそうなるっていうか。ご新規さんも満足して、ロックファンも唸らせたいっていうのに俺はこだわってる。

インタビュー写真

志磨 カッコいい順に出演させてるっていう、そのこと自体がもう奇跡。

だいち69 まあ今回に関して言えば2日目だけですけど(笑)。

志磨 あはは(笑)。

──えっ、1日目はカッコいいバンドだけじゃないっていうこと?

だいち69 はい、1日目はたいしたことないバンドが淘汰される場でいいと思ってるんです。リスナー感覚もないしライブも全然グッと来ないし、CDもヘボいとか、そういうバンドがいて、でも名前が売れててある程度のキャパんとこでライブやってフェス出まくっててファンがついてて、それっておかしいじゃないですか。すげえカッコいいバンドと同じステージに立ったら、そういうヘボいバンドは化けの皮剥がされるぞっていう。で、観てる人がみんな気がつくと思うんです。「あれ? なんかライブ下手じゃない?」ってバレると思うんですよね。ちょっと意地悪してやろうっていうわけじゃないけど、そういうきっかけがないとロックシーンはもう一生変わっていかないと思うんで。

──ええと、それインタビューで言っちゃって大丈夫?(笑)

だいち69 いいんです。そこは勘違いしてほしくない大事なとこだし、これについてはどこかで言わないと1日目が意味のないものになるなあって思ってたんで。

志磨 さっきから勝ち負けの話してますけど、音楽は勝ち負けじゃないっていう定説があるからアンチで言ってるわけですけどね、僕は勝ち負けやと思ってやってるんですよ。だからもし誰かが1日目に出て負けたらもうそいつの責任やん。勝負ごとやからね、ちゃんとカッコ良けりゃ勝てるわけですから。

だいち69 それが対バンってことだと思うんですよ。でも今のシーンはその対バン感覚がなさすぎる。でかい身内ノリっていうか。盤も聴かないで、ライブも観ないで文句言う人は結構多いですけど、俺は全バンド、盤も聴いてライブも観てあれを仕掛けたんで、結構本気で1日目はヘボいバンドが淘汰されればいいと思ってますね。

志磨 例えばワールドカップがあって、出場しといてさ、負けてさ「いやワールドカップってもんにそもそも問題があると思うんですけど」って、いやそれはないでしょって。ただ試合があって負けて終わりじゃんっていう。誰が一番強いか。

だいち69 本気と本気のぶつかり合いだからこそドラマになるわけですから。

志磨 そうそう。それがサッカーやる人の宿命っちゅうか、んでサッカーファンはそれを観て喜ぶわけでしょ。それでいいじゃんね。そもそもみんなで「サッカーとは?」っていうのを考えてるような、そういう不健康な感じが今ロックにあって、やる側も観る側もさ、「そもそもロックとは?」て、そんなんイヤやって思うねんけどね、ずっと。

だいち69 うん、そう思いますね。

志磨 こっちはカッコいいことをやってる自信があるからどこでも行くし、観てる人は「カッコよかった!」でいいと思う。「みんなちがってみんないい」みたいな、あれ気持ち悪いよなあ。

1stアルバム「マイ・
ジェネレイション」 / 2010年7月21日発売 / 1000円(税込) / Ainever Music / XQIU-1503

  • Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. Let’s get honey ~夜の裏側に~
  2. WANNA
  3. 君がすべて
  4. Tell me Sunny
  5. ハイ・フィデリティ
  6. Good Bye My Girl
  7. アイデン&ティティ
  8. ROLL IN GIRL
  9. 失恋小説
  10. happy happy ~寂れた町の冬~
  11. さよならジニーハウス
  12. Boys & Girls
  13. ウェイバーのテーマ

メジャーデビューアルバム「毛皮のマリーズ」 / 2010年4月21日発売 / 2500円(税込) / コロムビアミュージックエンタテインメント / COCP-36083

  • Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. ボニーとクライドは今夜も夢中
  2. DIG IT
  3. COWGIRL
  4. 悲しい男
  5. BABYDOLL
  6. バンドワゴン
  7. サンデーモーニング
  8. それすらできない
  9. 金がなけりゃ
  10. すてきなモリー
  11. 晩年
THE WAYBARK(うぇいばー)

THE WAYBARK

2002年結成。だいち69(Vo)、Johnny(G)、おっくん(B)、ブラック斎藤(Dr)からなる4人組バンド。結成以来ライブや自主企画イベントを精力的に開催し、地元・青森のロックシーンを牽引する存在に。ボーカルだいち69は青森唯一のロックフェス「AOMORI ROCK FESTIVAL 夏の魔物」を主催。THE WAYBARKも毎年出演を果たしている。2010年7月、1stアルバム「マイ・ジェネレイション」をリリース。

毛皮のマリーズ(けがわのまりーず)

毛皮のマリーズ

志磨遼平(Vo)、越川和磨(G)、栗本ヒロコ(B)、富士山富士夫(Dr)による4人組ロックバンド。2003年に結成し、都内のライブハウスを中心に活動。2005年に発表した自主制作CD-R「毛皮のマリーズ」が話題を呼び、2006年9月にDECKRECから1stアルバム「戦争をしよう」をリリースする。その後も音源の発表を重ね、ライブの動員も激増。コロムビアミュージックエンタテインメントと契約し、2010年4月21日にアルバム「毛皮のマリーズ」をリリース。