ナタリー PowerPush - ROACH

米軍基地に囲まれて育った俺たちの歌「OKINAMERICA」

どの曲も表現方法は違うけど、向かっていく先が一緒

──6曲目の「ウィシュガー」はオリエンタルな曲調で、沖縄方言のコーラスも入ってて、今作の中でも異色のナンバーですね。

沖縄に零戦というバンドがいるんですけど、自分なりの零戦のイメージを今やったらどうなるんだろう、という気持ちで作りました。自分が何に影響を受けたのか? その根っこの部分を見つめ返したくて。沖縄の地獄車と零戦というバンドの存在は、僕の中で外せないんですよ。今回は地獄車と零戦へのオマージュが入ってます。

──ひょっとして地獄車のオマージュと言うのは、5曲目の「テイスト・オブ・ザ・デビル」のこと?

そうです。

──ははははは(笑)、そのまんまじゃないですか。

Aメロで「エナジードリンク」の成分表をそのまま歌ってるんですよ。地獄車って、そういうコミカルな要素が入ってるじゃないですか。

──ああ~、GARLICBOYSの系譜に位置するユーモアがありますもんね。

インタビュー写真

そうですそうです。地獄車に「ウンコ哲学」という曲があるんですけど、「フンだ!だっフンだ!」というコーラスがあって、そのリズムをちょっと取り入れました。

──最高です(笑)。それとラスト7曲目の「Don't U Remember」も個人的に大好きな曲なんですよ。

結局1人では生きていけない、という曲なんですけど。なんて言ったらいいんだろう……今回のアルバムのブックレットに1曲ずつ違う絵が入ってるんですよ。デザイナーの人と話して「歌詞から思い浮かぶ絵を好きに描いていいよ」と伝えて。この曲だけフェンスのゲートが開いてる絵を入れたんですよ。最後に開けるというか、そういうふうになったらいいなって。

──その絵と歌詞はどうつながるんですか?

結局1人で生きていけないという部分は、人でもいいし、国に置き換えてもいいんですよ。食べ物、文化、空気、人材も一国で賄えなかったりするじゃないですか。今は世界中でいろんなものをシェアしてるわけで、1カ所に独占しなくてもいいんじゃないのって。

──それが「生まれる時から人の手を借りているんだ」「死んでしまっても人の手を借りているんだ」の歌詞に表れているわけですね。今回はいろんな切り口の歌詞があるけど、もっとも伝えたいメッセージは“UNITY”ですよね。そこを目指すために、忘れてはいけない気持ちを書き留めたものになってる。

今回はほんとバラバラな曲が入ってるかもしれないけど、自分の中ではまとまってるんですよ。「HIGH FIVE!!」と「ウィシュガー」もすごく曲調に振れ幅があるけど、違う感じがしないんですよね。自分の中ですごく自然だし、そう思えたのは今回が初めてなんですよ。表現方法は違うけど、向かっていく先が一緒だからブレがないのかなと。

沖縄の人から反発されるのは怖かった

──ひとつ訊きたいことがあるんですけど、今年ワンマンライブ(6月28日東京・Shibuya O-WEST / 今作にライブDVDとして12曲収録)をやりましたよね。そのときにtaamaさんが「やっとスタートラインに立てた」と発言してましたが、あれはどういう意味なのか、すごく気になったんですよ。

自分って……当たり前のことを当たり前にできない性格なんですよ。リハーサルも苦手だし、セットリストを決めるのも嫌なんですよ。ツアーで出てきた当初、ライブハウスの人に「セットリスト出して」と言われたときに、「沖縄からポンと出てきたバンドの曲を見せても、どうせわからないでしょ!」と思って。

──ははははは(笑)、そりゃライブハウスの人は困りますよね。

ライブなんてセッションだし、自分はお客さんの空気を読んで、いつも曲を変えていたから。沖縄のバーで軍人相手にやってるときも、お金をもらってライブしているから、お酒を飲ませないとギャラが安くなるんですよ。だから、お酒を飲ませるためにはなんでもやってましたからね。そういう感覚でずっとやっていたから、最初に(沖縄から)出てきたときもお客さんの空気を読んでやろう、という気持ちが強くて。まだお客が入ってないのにセットリストなんてわかるわけないでしょ、という反発心が強かったんですよ。

──ああ、なるほどね。

インタビュー写真

セットリストがあると、次はどの曲だっけ? この空気であの曲やらなきゃいけないの?って、ライブに集中できなくなるんですよ(笑)。以前はワンマンでもセットリストを決めるのが嫌で、始まったら曲を変えたりして、ライブハウスの人に怒られてました。でも今回のワンマンは、しっかりセットリストを組んでやれたんですよ。それを含めて「やっとスタートラインに立てた」なって。

──やっと、人並みにセットリストどおりライブをできるようになったと(笑)。では、最後にこのアルバム名「OKINAMERICA」の由来を教えてもらえますか?

どっちの空気も感じて、このバンドが成り立っていると思うから。沖縄とアメリカは別個だけど、別個じゃないじゃん、みたいな気持ちがあって。

──ですが、このタイトルを付けるのは勇気がいりませんでした?

最初は怖かったですね。今オスプレイの問題とかあるし、「こいつアメリカ大好きなのか?」と思われたり、沖縄の人からも反発されたらどうしようと考えたけど。言いたいことをあやふやにしたら、作品が出せなくなるので。勇気を出して、とりあえず掲げないと、何も始まらないんじゃないかって。

──taamaさんのその思いは伝わると思いますよ。

そう感じてもらえたらうれしいですね。がんばります!

ROACH / HIGH FIVE!!

ミニアルバム「OKINAMERICA」 / [CD+DVD] 2012年10月3日発売 / 2500円 BULL SHIT RECORDS / DULPICA / DPCD-10002
ミニアルバム「OKINAMERICA」
収録曲
  1. LINE-小さな島の国境線-
  2. HIGH FIVE!!
  3. 耳ヲ澄マセバ
  4. LONE★STAR
  5. テイスト・オブ・ザ・デビル
  6. ウィシュガー
  7. Don't U Remember
DVD収録内容
  1. MADE IN BLOOD
  2. no more silence
  3. MAKE HERE HELL
  4. DNA Never Die!!
  5. 言の葉-koto no ha-
  6. piece of Asia
  7. walk with death
  8. Don't hate but love
  9. Be hardcore in Kin Town
  10. For you, I will
  11. scream with love
  12. 涙の意味-namida no imi-
LIVE INFORMATION
ROACH LIVE TOUR 2012 "OKINAMERICA"

2012年10月14日(日)
沖縄県 桜坂セントラル

2012年10月19日(金)
東京都 下北沢SHELTER

2012年10月20日(土)
埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1

2012年10月21日(日)
東京都 渋谷CYCLONE

2012年10月23日(火)
神奈川県 横浜F.A.D

2012年10月25日(木)
愛知県 名古屋池下CLUB UPSET

2012年10月26日(金)
兵庫県 神戸太陽と虎

2012年10月28日(日)
大阪府 心斎橋CLUB DROP

2012年11月1日(木)
山口県 周南rise

2012年11月3日(土)
広島県 広島Cave-Be

2012年11月6日(火)
京都府 京都MOJO

2012年11月8日(木)
東京都 下北沢SHELTER

2012年11月12日(月)
東京都 渋谷CYCLONE

2012年11月13日(火)
新潟県 新潟RIVERST

2012年11月14日(水)
宮城県 仙台MACANA

2012年11月16日(金)
大阪府 心斎橋CLUB DROP

2012年11月17日(土)
東京都 渋谷O-WEST

2012年11月18日(日)
愛知県 名古屋ライブサーキット「GRAND LINE」

2012年11月22日(木)
兵庫県 神戸太陽と虎

2012年11月24日(土)
岡山県 岡山CRAZY MAMA 2nd ROOM

2012年11月25日(日)
愛媛県 新居浜JEANDOR

ROACH "OKINAMERICA" RELEASE PARTY!!FINAL SERIES

2012年11月30日(金)
大阪府 心斎橋CLUB DROP

2012年12月2日(日)
愛知県 名古屋UPSET

2012年12月5日(水)
東京都 渋谷CLUB QUATTRO

2012年12月15日(土)
沖縄県 桜坂セントラル

ROACH(ろーち)

プロフィール画像

沖縄在住のメタルコアバンドで、現在のメンバーはtaama(Vo)、くぼっち(G)、勝也(B)、Daisuke(Dr)の4人。ラウドで強じんなバンドサウンドと琉球音階の優しいメロディが結び付いた独自の音楽性で支持を集める。2003年の結成後、地元のライブハウスや米軍基地、基地周辺のバーで精力的にライブ活動を展開し、2006年から3年間にわたってMARVERICKと契約。その後「SUMMER SONIC」や「JACK IN THE BOX」といった大型イベントに次々出演し、2010年にはアメリカツアーを敢行した。2012年は2月に「No Reason in the Pit」、10月に「OKINAMERICA」という2枚のミニアルバムをリリース。