ラブソングを書く必要はないと思っていたけど
──アルバムは1、2、3曲目が新曲で、そこから3曲が既発曲です。「ラストハンチ」も「UNITY」も、シングルっぽいパンチの効いた曲だとリリース当時思いましたけど、アルバムの中ではむしろおとなしめに感じるくらいで。
涼音 僕の中で、シングル曲があんまり出張ってこないでほしいなと思っていたので。アルバムを出したときに、既存曲に印象を持っていかれたらどうしようと感じていて、新曲は「シングルよりも強い曲」を求めながら作っていました。
──6曲目「僕だけの矛盾」は、レトロリロン初のラブソングという触れ込みでしたけど、もともとラブソングを書こうとしていたんですか?
涼音 そうですね。今まではラブソングは書かない、書く必要はないと思って進んできて、それは今も変わらず、バンドの軸をラブソングに振ろうとかはまったく考えてないんですけど、去年の僕のテーマとして「やりたいことをやることと、それを受け入れてもらうことはまた別だ」というものがあって。ある種、仕事軸の考え方として、自分が本当に書きたいものを書くためには、それを書くことが許される場所まで行かないといけない、と思ったんです。
──なるほど。
涼音 「ラブソングを書かない」というこだわりは僕にとって必要ないな、と思って書いたのが「僕だけの矛盾」です。そのときに恋愛的な何かがあったということではなく、ラブソングを書きますと言って書いたらどうなるのかを自分でも知りたくて、この曲ができました。
──とてもいい曲です。「君以外はもう何もいらないから」とか、言葉選びも率直でまっすぐに響きます。
涼音 ウジウジしてますけどね。やっぱり嫌ですよ、自分の恋愛観が出ちゃうのは。
──そういえば「ふたり」もラブソングに聞こえます。
涼音 「ふたり」は、ラブソングに聞こえるようにわざと書きました。「アンバランスブレンド」(2024年10月配信)と同じ思考で、歌詞を読んだときに「あれ? ラブソングじゃないのか?」と思ってくれる人が少しでもいたらいいな、ぐらいの感覚です。「ふたり」の歌詞は一人称を漢字の「僕」とひらがなの「ぼく」、カタカナの「ボク」で使い分けていて、そこに本当はラブソングではないというヒントを忍ばせました。
──ああー。言われてみれば。
涼音 ラジオとかではもう話しているんですけど、自己解離の曲です。それに「ふたり」というタイトルを付けて、みんな騙されてほしいなという、遊び心というか意地悪というか。インディーズのEPを作るときもそういうことをやってきたんですけど、今回はこの曲がその役割だったなと思います。
「咒」の読み方が変わってくれたら
──そして7曲目の「咒」。のろい、と読むんですね。ピアノと歌だけの、荘厳な迫力あふれるバラードです。
涼音 最初はバンドアレンジで、聴いたあとにキラキラした気持ちになれるようなバラードを書こうと言っていたんです。でもそれだとアルバムに起伏がなくなっちゃうね、みたいな話もあって。その時点でこのサビはもうあったんですけど、出したくなかったんですよ。これは自己満足として作った曲で、誰にも聴かれずに終わってもいいやと思っていたから。ただ、暗いバラードのほうがアルバムに起伏が出ていいんじゃないか、「救いのない日々よ」(2025年1月リリースのEP「アナザーダイバーシティ」収録)みたいな温かさが残るバラードではなく、もっとズドン!と落ちちゃうものを作ってもいいんじゃないか、とメンバーから言われたときに、「そういう曲なら、あります」と。あるけど、誰も口を出さないでくれと言って出したのが「咒」です。この曲だけはすべて僕の独断で、miriには「こう弾いてほしい」とひたすら言い続けて、メンバーには「入れるものなら入ってきて。たぶん入れないから」と言いました。
永山 何か入れてやろう、という気持ちはあったんですけどね。
涼音 いつもは、みんなの見せ場も考えながらコンポーズしていきますが、この曲に関してはまったく考えていないです。本当はmiriにもそう言いたかったんですけど、僕がピアノを弾けなかったので、弾いてもらうことになって。だから苦戦してたよね。
miri 音を指定するわけじゃないんですよ。「こういう響きで」という言い方をするので、そのニュアンスを受け取るのがすごく難しかった。お互いの「響き」の意味が一致するにはどうしたらいいんだろう?とすごく考えました。
──歌もピアノも鬼気迫るというか、最後のほうで声が震えているように聞こえるところまで引き込まれました。
涼音 歌はほぼ一発録りです。この曲だけは、うまいとか下手とかじゃないところを大事にしてレコーディングしました。その瞬間の、絶対に再現できないテイクを入れようと。
──歌詞のラスト2行が、特に素晴らしいと思います。「あなたが僕にかけたその呪いが いつかおまじないにできるように」。それこそおまじない、祈り、願いのように聞こえます。
涼音 この曲は、歌詞というよりも情景描写の多い詩や文学として美しいものを書きたくて、聴く人のことを一切考えず、自分のために書きました。最後の2行は、そのまんまです。「咒」という漢字の読み方を調べると、「のろい」よりも「まじない」と読むほうが正しくて、曲を聴いたあとにタイトルの意味が変わったらいいな、という思いがありました。便宜上、読み方をつけてくれとスタッフから言われたので、聴き始める前は「のろい」にして、聴き終わったあとに、解釈として「まじない」という方向に変わっていったらいいな、と。
音楽を楽しみに来てくれたらそれでいい
──そして最後に「バースデイ」があって、アウトロのフレーズが1曲目の「リコンティニュー」へとつながっていく。見事な流れのアルバムだと思います。
飯沼 自分にとって、人生のターニングポイントになるアルバムです。音楽的にもそうですし、アルバムを作りながら、メンバーに対して「こういうところがあるんだ」「こういうところが強いんだ、弱いんだ」「こういうふうに向き合ってくれるんだ」とか、意識が変わってくる瞬間があって。今まで思っていたことが大きく変わったなと思います。幅が広がった、という感じですね。このアルバムなくして今はないし、いい作品ができてよかったなと素直に思います。全部、いい曲ですよね。
──3月7日にリリースワンマンツアーが始まります。どんなものを見せたい、伝えたいですか?
永山 アルバムのテーマとしていろんな感情を描いているので、聴いてくれたお客さん1人ひとりが感情を当てはめてほしいというか、それを感じてくれる演奏をしたいなと思っています。ぜひライブに来ていただけるとうれしいです。
──聴けば聴くほど深みあるアルバムですけど、あくまで耳に楽しいのがレトロリロンのよさだと思うので。パッと聴いていいなと思った印象で、初めての人にもぜひ来てほしいですね。
涼音 ライブは、何も考えなくても大丈夫です。今回、サウンドは本当にライブのことをすごく考えて、だからこそ歌詞は深いものが書けた、という感じもあるので。ライブは、音楽を楽しみに来てくれたらそれでいいんです。
公演情報
RETRORIRON 1st Full Album「コレクションアローン」RELEASE ONE-MAN TOUR 2026
- 2026年3月7日(土)香川県 DIME(※チケット完売)
- 2026年3月14日(土)愛知県 DIAMOND HALL
- 2026年3月15日(日)大阪府 なんばHatch
- 2026年3月20日(金・祝)福岡県 DRUM LOGOS
- 2026年3月28日(土)宮城県 Rensa
- 2026年4月3日(金)石川県 Kanazawa AZ
- 2026年4月5日(日)北海道 札幌PENNY LANE24(※チケット完売)
- 2026年4月10日(金)広島県 LIVE VANQUISH
- 2026年4月12日(日)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
- 2026年4月18日(土)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)(※チケット完売)
プロフィール
レトロリロン
2020年6月にシンガーソングライターとして活動していた涼音(Vo, A.G)を中心に東京にて結成されたポップスバンド。バックグラウンドが異なるメンバーが織りなすジャンルレスなプレイが魅力。2024年に複数のメディアでネクストブレイクアーティストとして取り上げられ注目を浴び、全国各地の大型フェスに多数出演する。2025年5月、シングル「UNITY」でユニバーサル ミュージック内のPolydor Recordsよりメジャーデビュー。2026年1月に1stフルアルバム「コレクションアローン」をリリースした。3月から4月にかけては全国10カ所を巡るワンマンツアーを実施する。
レトロリロン|RETRORIRON Official Site




