音楽ナタリー Power Push - レキシ
“あわてない、あわてない”で5作目完成!レキシインタビュー&「最後の将軍」MV密着レポート
彼に歌ってもらって1つひとつの言葉の重みが増した
──そして「やぶさめの馬 feat. ハッピー八兵衛」には、後藤正文さん(ASIAN KUNG-FU GENERATION)が参加しています。
曲自体は「妹子なぅ」(2011年発表「レキツ」収録)ぐらいの頃にはあって、ゴッチもコラボ相手の候補には以前から挙がっていたんだけど、今回のタイミングでやっと迎えることができました。ゴッチは言葉がはっきりと際立つ歌い方をするから、歌詞に広がりや深みが出る。俺が歌うとどうしても軽快になっちゃうけど、彼に歌ってもらって1つひとつの言葉の重みが増したのがよかった。歌声の奥のほうから、焦燥感みたいなものがにじみ出てくる感じがあった。
──歌い手が持っているものの考え方もどこかで影響して、歌詞に込められた切実な思いが際立ってくるのかもしれないですね。「SHIKIBU」についてはシングルリリース時にもインタビューで語ってもらいましたが(参照:レキシ「SHIKIBU」インタビュー)、反響が大きくてまさに“レキシを変える”1曲になったのでは?
こんなに反響が大きくなるとは思ってなかったね。レキシを多くの人に知ってもらう曲になったと思います。実は「やぶさめの馬」と「SHIKIBU」が去年のシングル候補だったんだよ。その2曲が並んで収録されることが自分にとっては感慨深いね。
──アルバムはこの「SHIKIBU」あたりから徐々に“カオス”に突入していきます(笑)。「寺子屋FUNK」は、曲名にFUNKとあってもストレートなファンクではなくて、アフロビートの要素も入っていたりと、レキシの曲としても今までとは違う新鮮さがありました。アレンジやリズムからは、オシャレキシ(上原ひろみ)と行ったコラボツアーの影響があるのではと感じたんですが、そのあたりはどうですか?
変拍子だし、その影響はまずあるね。正直言えば、アルバムを出すごとに「オシャレキシとの新曲楽しみにしてます」っていう周りからのプレッシャーは痛いぐらいにありますよ(笑)。「コラボ曲はいつ聴けるんですか?」「次のアルバム楽しみにしてます」って、すごい言われるんだから。
──まあ、それぐらいオシャレキシとのライブが素晴らしく充実していたってことの表れでしょうけどね。
でも変拍子にしようとしたのは、デモを作って歌ってる途中で「ちょっとリズムをずらしたほうが面白いな」って思ってアレンジしたってだけなんだよね。これをオシャレキシが聴いたら「変拍子だから私を意識したでしょ?」って言われるだろうな、とあとで考えたけど(笑)。
エルサしかいない!
──そして次が問題作「旧石器ベイベ feat. 足軽先生」。ついにレキシも旧石器時代までさかのぼりましたか。
去年の夏ぐらいに群馬の岩宿遺跡に行ったんだよ。博物館を案内してもらって、それも大きかったかな。
──足軽先生はラップではなく朗読を披露していて、レキシの新たな扉を開ける1曲になっています。
なんだろうね、この得も言われぬ感覚(笑)。この曲の足軽先生の設定にしたって、チャラいしストーカーだしね。旧石器時代というテーマとサビのフレーズ、あとはラップじゃなくて朗読でやるってことだけ決めて、あとは先生にお任せ。歌詞に「元カレ」って出てくるんだけど、もちろんそんなフレーズはない時代に、というか言葉を使っていたかすらわからない、生きることだけで精一杯だったかもしれない時代の人たちが、どこまで恋愛感情を持っていたかはわからないよ。でも、ある意味では子孫繁栄とか人間の根本的な部分を歌ってる。
──そこに夢を膨らませてストーリーを仕立てていく力量は、さすが足軽先生ですね。
やっぱり古代であればあるほど、ロマンが広がるっていうかね。石1個からその当時の生活を想像していくわけじゃない? 貝塚なんかゴミ捨て場なんだけど、そこを漁ってどんな暮らしをしていたかを探っていくわけで。そこが歴史の面白さだと思うんだよね。実はこの曲の原案は「レキミ」(2012年)を作っている頃からあって、ミュージックビデオのアイデアまで考えてたんだよ。最後のシーンで、歌に出てくる旧石器が博物館に飾られて、それを観に来た知らない同士の男女が出会うっていう壮大なストーリー(笑)。
──そしてラストを飾るのは「最後の将軍 feat. 森の石松さん」。松たか子さんは2014年の日本武道館ワンマンも観にいらしてて、やついいちろうさんがやった「アナと雪の女王」のパロディを楽しそうにご覧になっていたのが印象深いです。
そうそう。松さんは、もともとレキシを聴いてくれてたし、俺も参加してほしいなって思ってたんですよ。ちょっと前に松さんの舞台を観に行かせていただいて、そのときに「レキシネームください!」って言われたから、早速オファーして。
──楽曲では徳川慶喜を取り上げていますね。幕末はレキシがこれまであまり取り上げてこなかった題材ですよね。
ずっと別れの曲を書きたいと思ってて、最初はもっと演歌っぽい、前川清さんが歌うようなイメージの曲だったけど、それもレキシっぽくないなと思って。もっとポジティブで力強い曲にしたいと思いついて。そうなったらもう「エルサしかいない!」と(笑)。
──松さんはこの曲についてどんな感想を?
「切ない曲ですね」って言ってた。こちらからはポジティブに歌ってくださいとか指示は出してなくて。「ただ歴史を感じてください」とだけお願いして(笑)。慶喜が大政奉還をするんだけど、国を思って、また新しい第一歩を踏み出すっていう“別れ”を、見事に歌い上げてくれましたね。
遺跡、忘れてませんか?
──さて、アルバム「Vキシ」を携えての全国ツアーも7月からスタートします。
去年「IKEMAX THEATER」と題して映画をテーマにしたツアーをやったから、今回はどんなライブにしようか考えてたら、(事務所の)社長から「普通のライブをやってください」って釘を刺されたの(笑)。そういえば今までツアータイトルも遺跡に絡めたものだったのが、いつの間にか映画とかになっちゃってたからさ。だから今回は「遺跡、忘れてませんか?」ってタイトルで。原点回帰というかね。で、1つ目標があって、レキシ史上最多の曲数をやってみたいんだよね。
──そのためには池ちゃんもトークを短めにしないと……。
いや、しゃべるのはしゃべりたいから(笑)。遊びもやりつつ尺も伸ばさず、いかに多くの曲をやるか考えてます。で、ツアーファイナルの武道館は、まあお祭りみたいな感じかな。サブタイトルに「大きな仏像の下で」って付いているけど、大きな仏像と言えば……アレしかないでしょう! 奈良から持っていくよ(笑)。それが本当かどうかはともかく……まあ、いつもと変わらないライブをやります(笑)。
- ニューアルバム「Vキシ」 / 2016年6月22日発売 / 伽羅古録盤
- 手書きジャケット付き完全生産限定盤 [CD+DVD] 4104円 / VIZL-996
- [CD+DVD] 4104円 / VIZL-997
- [CD] 3240円 / VICL-64586
CD収録曲
- 牛シャウト!
- KMTR645 feat. ネコカミノカマタリ
- 一休さんに相談だ
- 古今 to 新古今
- やぶさめの馬 feat. ハッピー八兵衛
- SHIKIBU feat. 阿波の踊り子
- 寺子屋FUNK feat. シャカッチ
- 旧石器ベイベ feat. 足軽先生
- 刀狩りは突然に
- 最後の将軍 feat. 森の石松さん
DVD収録内容
- レコーディングドキュメンタリー映像
- バラエティー番組風ドキュメンタリー
レキシ池ちゃんと元気出せ!遣唐使
百休さんと行く「いい旅レキシ気分~一休さんを巡る旅~」
レキシツアー 遺跡、忘れてませんか?
- 2016年7月1日(金)福岡県 福岡サンパレス
- 2016年7月6日(水)広島県 JMSアステールプラザ大ホール
- 2016年7月8日(金)香川県 高松festhalle
- 2016年7月10日(日)宮城県 仙台市民会館 大ホール
- 2016年7月15日(金)北海道 わくわくホリデーホール
- 2016年7月18日(月・祝)福井県 福井市文化会館
- 2016年7月20日(水)愛知県 名古屋市公会堂
- 2016年7月28日(木)大阪府 オリックス劇場
- 2016年7月29日(金)大阪府 オリックス劇場
レキシツアー 遺跡、忘れてませんか? ~大きな仏像の下で~
- 2016年8月17日(水)東京都 日本武道館
レキシ
1974年福井県生まれの池田貴史によるソロプロジェクト。池田は1997年にSUPER BUTTER DOGのキーボーディストとしてデビューし、2004年からは100sのメンバーとしても活躍。その日本史マニアぶりを生かし、2007年にレキシとしての1stアルバム「レキシ」を発表した。レキシでは日本史の登場人物や史実をソウルフルなサウンドに乗せて歌う独自のスタイルで注目を集め、2011年3月に2ndアルバム「レキツ」、2012年12月に 3rdアルバム「レキミ」をリリース。2014年6月に4thアルバム「レシキ」を発表した。同年8月には初の日本武道館公演を開催。12月には上原ひろみを迎えた東名阪ツアーを実施した。2015年9月には青森・三内丸山遺跡でのワンマンライブを成功させる。同年11月25日に、初のシングル作品である「SHIKIBU」を発表。2016年6月に5thアルバム「Vキシ」をリリースする。