音楽ナタリー Power Push - ЯeaL
現役女子高生バンドが描く大胆な戦略
シンドくて最強のデビューシングル
──「秒速エモーション」ってすごくデビュー曲らしいデビュー曲ですよね。
Ryoko 私たちが高校卒業のタイミングでリリースするデビュー曲だから、その季節の象徴であり、華やかな感じもある桜がテーマになってるのはすごくいいと思ってます。ただ、私は私のことだけを歌いたいとも思ってはいなくて。聴いてくれる皆さんにもちゃんと共感できることを歌いたいんです。だから言葉が抽象的になることも多いし、実際「秒速エモーション」の最初の「秒速で重なってトキが散る」って歌詞自体、ワケわかんないですよね(笑)。
──はははは(笑)。でもそれだけに聴き手に想像の余地がある。「散る」んだから別れの歌ともとれるし、「秒速で重なって」いることをポジティブに捉えることもできる。
Ryoko まさにそう聴いてほしいんです。歌詞全体にしても一見卒業をきっかけに別れる男女の歌なんだけど、ラブラブな歌にも見えるようにはしていて。聴いてる人の事情や気持ちに添えるようにしたいから「心に染みるんだけど、染みた理由は人それぞれ解釈してほしい」っていうフレーズを書きたいんです。しかも4人の思いをまったく無視もしたくはなくて。さっき言った通り、高校を卒業する私たちの別れの歌でもあるし、その先の明るい未来の歌でもあるし、でもその未来に対して自分たちが今抱えている不安についても歌っているし。
Yurika だから私たちも共感できるし、曲に乗っていい演奏ができるのかな、と思ってます。
Ryoko 最初からそれができていたわけではないんですけどね。3曲目の「スタートライン」は、さんざんぶつかって、しかも素直に謝れなかったあの頃こそが私たちの「スタートライン」だよねっていう曲なんです。
──だからサビ頭のラインが「どん底に立ち夢見た場所で 大人になりきれない僕らは」であり「どん底にいた 僕ら4人は 夢の欠片をやっと手にした」になっている、と。
Fumiha 私たちのこれまでのことを知りたかったら、このインタビューを読んで「スタートライン」を聴いてください、って感じですね(笑)。
──となると「スタートライン」と「Outsider」ってRyokoさんの曲としては珍しいタイプ? 「スタートライン」はバンドの道行きについて、そして「Outsider」はタイトル通り、自分たちが一般的な女子高生像やロックバンド像のアウトサイドに置かれがちなことについて歌っている。どちらもモロにЯeaLのことだけを歌っています。
Yurika あっ、インディーズで出してきた作品もそうなってるんですけど、タイトル曲とかリード曲でみんなに共感してもらえるような歌を入れて、カップリングとか、ほかの収録曲ではガッツリ本音を歌いたいんですよ。
Ryoko 1曲目を聴いて「わかるわかる」って思ってくれた人が、2曲目、3曲目を聴いて「あっ、こういう人たちが1曲目を歌ってるんだ」って思ってほしいので。「Outsider」は、もちろん「アウトサイダーでけっこう!」「そんな評価クソ食らえ!」っていう本音を書いてはいるんですけど(笑)、ただ単に「クソ食らえ!」って気持ちをぶちまけられればいいとは思ってなくて。あくまでЯeaLを知ってもらうための曲。ただこのシングル、聴いてるとシンドイんですよ。
──「シンドイ」?
Ryoko シングルってタイトル曲がガッと来て、カップリングは隠れたいい曲とか、ちょっと意外な曲を楽しむためのものって感じの構成になるのが普通だと思うんですけど、それがないというか。
Aika どれもメイン(笑)。「Outsider」も「スタートライン」もカップリングのくせに、なんでこんなに重量感があるんだろうって。
Fumiha 最強やと思ってます(笑)。
駆け抜ける準備はできている
──で、その“最強”のシングルのリリースを記念して3月27日に大阪城野外音楽堂でフリーライブが行われます。で、すみません。大阪城野音ってキャパは……。
Ryoko 3000人ですね。これまでで一番のキャパだし本当の意味での挑戦だと思ってます。
Yurika ナタリーさんのお力でぜひ2000人ほど動員していただけると(笑)。
──あはははは(笑)。
Ryoko でも「今のЯeaLを観ておかないと後悔するぞ」とは言っておきたいですね。このシングルを聴いて気になったら、絶対観に来たほうがいいと思います。
──了解です。最後にデビューイヤーであり、“社会人”1年目である2016年はどんな年にしましょう?
Ryoko 一気に駆け抜けます!
Fumiha ジャケ写のように(笑)。
Ryoko うん。ジャケットで跳んでるのは私なんですけど、ホントに4人で駆け抜けて飛び立ちたいですね。最近また年表……デビューしてから今後何年かの年表を作ったんですけど、そこには武道館って書いていて。もうそこから逆算して今年何をするべきなのか、メンバーと話し合いも済ませてますから。駆け抜ける準備はできてるので、あとはやるしかないと思ってます!
- ЯeaL メジャーデビューシングル「秒速エモーション」
- 2016年3月9日発売 / 1300円 / SME Records / SECL-1858
収録曲
- 秒速エモーション
- Outsider
- スタートライン
- 秒速エモーション ~Instrumental~
ЯeaL「“至上最大無謀なデビューレコ発ライブ” at 大阪城野音 ~ゆずれない想いが野音にある!~」
2016年3月27日(日)大阪府 大阪城野外音楽堂
ЯeaL(リアル)
Ryoko(Vo, G)、Yurika(G, Cho)、Fumiha(B, Cho)、Aika(Dr, Cho)からなるガールズバンド。2012年12月8日、当時中学3年生だった4人が結成してまもなく関西圏を中心に積極的にライブ活動を開始する。そして高校1年生となる2013年には「eo Music Try」の決勝大会に進出し、2014年7月には大阪・阿倍野ROCKTOWNで行われた初のワンマンライブをソールドアウト、12月には初の全国流通盤「Change Your ЯeaL」を発表するなど瞬く間にシーンで注目の存在に。また2015年8月には、オーディション「出れんの!? サマソニ!?」を勝ち上がり「SUMMER SONIC 2015」に出演。そして4人の高校卒業月となる2016年3月、シングル「秒速エモーション」でメジャーデビューを果たす。