「太陽もひとりぼっち」はわかりやすい夏の曲

──タイトル曲の「太陽もひとりぼっち」は始まり方から素敵です。波の音がする中、The Beach Boysを彷彿とさせるハーモニーが気持ちよくて。

HIROKI　ありがとうございます。バンド名と同じで、とにかくわかりやすさを大事にしたかったよね？

勇樹　うん。イントロから「夏の曲なんだな」って伝わるもの。そう考えてるうちに、あのアプローチになった感じです。

HIROKI　僕はThe Beatlesも好きなので、歌やコーラスでふわっと始まるアプローチが自然に出てきたのかもしれないです。4歳くらいからバイオリンを弾いてて、音楽＝クラシックだったんですけど、中学のときに親が車で聴いてたビートルズに衝撃を受けて。

──最初のサビにたどり着くまでも、すごくシンプルですよね。

HIROKI　静かに淡々と始まって、だんだん盛り上がっていけるようにしたかったと言うか。疾走感を出すためにあえて差を付けました。曲が進むにつれて音数が増えてにぎやかになるし、テンポも上がってるんです。

──テレビアニメ「DIVE!!」のオープニングテーマに使用されてますが、書き下ろしというわけではないんですか？ タイアップ決定時に勇樹さんが「アニメの内容を知る前に、制作に取り組んだ」とコメントしてたので。

勇樹　書き下ろしではないです。曲をある程度作り進めてるときに、タイアップの話をいただいた形で。偶然にも、歌詞がうまくアニメに合うものになっててよかったなと思います。

尾崎豊に影響を受けた2人

HIROKI　歌詞は僕ら2人の合作なんです。先に曲があって、そのメロディとテンポをもとにしてそれぞれに詞を作ってきたら、別々に書いたにもかかわらず、共通するフレーズやメッセージが見られて。

勇樹　歌詞の方向性とか事前に何も言ってなかったのに、“未来への期待と不安をどっちも抱えてる青春時代”っていうテーマでお互いに作ってきたんです。

HIROKI　1番は僕、2番は勇樹くんの歌詞がメインになってます。内容的に近くても、例えばサビの後半の「響け！鼓動の音」と「ここだから見えない景色を」の部分では雰囲気や言い回しが全然違うじゃないですか。これは合作だからで、同じ曲の中で微妙に異なる表情があったり、2人で書いてる感じが前に出てたりするほうが面白いかなって。

──そうだったんですね。その段階では、キラキラしたキーボードの音色も入ってない？

HIROKI　まだなかったですね。それこそイントロ部分もなくて、歌詞はメロディラインから膨らませて書きました。

勇樹　近いテーマになったのは、尾崎豊さんの影響かもしれないです。僕ら2人とも尾崎さんの曲が大好きで、最初に気が合ったのはそこがかなり大きくて。

──言われてみれば、出だしの「教室の隅 いつもの席で握りしめてた」「こんな生き方でいいのかと思っていた」のあたりとか。

HIROKI　そうです！ ちょっと尾崎さんっぽいですよね。僕、こういう表現が好きなので（笑）。社会的抑圧に対する反骨心とか、いわゆる通説に対して逆のことを言いたい思いとか、強く持ってる人間なんです。

──あと、大仰なキメを入れる感じのアレンジも好きなのかなと思いました。

勇樹　やっぱり、わかりやすさ重視のバンドなんでしょうね。

HIROKI　クサいぐらいの溜めとかがあったほうがわかりやすいと思うんです。「ここが大サビですよ！」みたいな。

──往年のJ-POP感がありますよね。清涼飲料水のCMにも合いそうな。

HIROKI　あ、それは言われたことありますね。「ポカリっぽいよね！」って。

勇樹　昭和の血が流れてる可能性あります、僕ら（笑）。歌謡曲とかも好きだし。

──そのさわやかさに孤独感や不安な気持ちをうまくブレンドしてますね。カップリングの「My Diamond」にしても、単にハッピーなことだけを歌ってるわけじゃないから。

勇樹　ありがとうございます。そうですね、ただ明るいだけの曲はあまり好きじゃなくて、表裏一体感があるものに惹かれますね。

HIROKI　1つの曲の中にいろんな色があるほうがね。「My Diamond」の冒頭の「人は人生の中で 何人の恋人と出会うのだろう 同時に出てきてくれないと 選べないし比べられない」なんかは、ちょっとネタっぽいんですけど、文章として読んだら「でも、確かにそうかも」って思えたりするように。

──「太陽もひとりぼっち」の教室のくだりもそうですが、「My Diamond」にも「『失敗の実験』ばかりの学生時代が もうすぐ終わろうとしている」ってラインがあったりして。

勇樹　めっちゃ生々しいですよね（笑）。現役大学生の僕らがこういう詞を書くのは、今ならではのリアリティがある気がします。