くるりが2年半ぶりとなるオリジナルアルバム、その名も「天才の愛」を4月28日にリリースする。
岸田繁(Vo, G)と佐藤征史(B)、そして先日脱退が発表されたファンファン(Tp)の3人が、自分たちのやりたいことだけをただ愚直にやり通して完成させた「天才の愛」。遊び心たっぷりのナンバーから、美しいメロディやスケール感のあるサウンドが印象的な楽曲まで多彩な楽曲が収録されており、くるりの音楽愛の結晶とも言える1作に仕上がっている。
今回音楽ナタリーでは、23組のアーティストに「天才の愛」のレビューを依頼。前編では11組のレビューおよびコメントを紹介した(参照:くるり「天才の愛」特集(前編))。後編では小林私、崎山蒼志、須藤俊(ハルカミライ)、セントチヒロ・チッチ(BiSH)、たかはしほのか(リーガルリリー)、東郷清丸、橋本薫(Helsinki Lambda Club)、ハマ・オカモト(OKAMOTO'S)、松本ユウ(リュックと添い寝ごはん)、吉田崇展(ズーカラデル)、yonawo、ラブリーサマーちゃんから寄せられたレビューおよびコメントを掲載する。
構成 / 中野明子
小林私
「天才の愛」を聴いて
小林私です。なんで?
この度くるりの新譜レビューを頼まれてしまいました。
恥ずかしながら僕はくるりを殆ど聴いたことがなく、言わずと知れた「琥珀色の街、上海蟹の朝」しかちゃんと聴いたことがありません、小林私です。マジでなんで?
はい、ここからはレビューです。
3曲目の「野球」これ、ヤバくないですか?
例えば僕が「野球」というタイトルの曲を作るとしたら野球の道具やルールを何かに見立てて書いたりしそうなもんです。
しかしこの曲はずっと野球選手や監督の名前をずっと叫んでいます。マジでずっと「ダルビッシュ かっこいいぜ」なんて歌詞を叫んでる、こんな歌詞書いていいんだと思いました。
僕が野球に明るかったら「みんな球団違うじゃん」とか「そんな選手応援すなよ」とか、もしかしたらそういう面白さも発見出来るのかもしれませんが、それに関わらず笑ってしまいました。
笑える曲はいい曲です。
こんなことしか言えないんですけど大丈夫ですか? やれそうでむりそうな感想でしたが、心に自由の種を蒔いた結果です。(小並)
くるりへのメッセージ
配信観に来てください。ポケモンをいっぱい描いたりしています。
崎山蒼志
「天才の愛」を聴いて
音楽の愛に満ち満ちた、突き抜けていて、温かく、そして巨大で緻密な作品だと感じました。細部までこれでもかというほど迸っている音楽への愛と熱量に圧倒されました。くるりの作品に触れる度に、僕はくるりの音楽と全国各地を旅している気持ちになります。昼夜関係なく、海にきらめく光、上空から見た光を帯びた列車のような。温かい湯、奇妙な旅。多くの人たちの顔が浮かぶようです。「天才の愛」、いちミュージシャンとしても喝を入れられたような気持ちになりました。不思議で、とってもかっこいい。そしてひたすらに楽しいです。素晴らしいアルバムをありがとうございます。
須藤俊(ハルカミライ)
「天才の愛」を聴いて
映画とかテレビ見てて
くるりだ! これもくるりじゃん!って
昔から近くで流れてた気がする
自然にっていいよね。
俺も瓦町で待ち合わせして琴電乗ったことあるんだいね。
「天才の愛」聴いて思い出した。
初めて聴くのに思い出すっていいよね。
くるりがかっ飛ばしてるから
俺達もそろそろかっ飛ばしちゃおうかな。
いいかな?
くるりへのメッセージ
くるりの皆さん初めまして、
ハルカミライのベースの須藤です。
「天才の愛」リリースおめでとうございます。
企画に誘ってもらってありがとうございました!
今度俺達の音も聴いてほしいです。
セントチヒロ・チッチ(BiSH)
「天才の愛」を聴いて
愛のかたちとはなんなのだろう。
奇跡も必然の中で起こっている運命のようなものなのかもしれないなぁ。
そんなことを感じていた最近、幸せなことに「天才の愛」を聴かせて頂きました。
くるりの創る音楽は、いくつになっても訪れる迷いや悲しみの瞬間、私の手を引き、
優しさや愛しさに触れた瞬間、一緒に心を温めてくれます。
「天才の愛」は日常を生きる万物へ贈られた様々な形の愛であり、自由であることを恐れない扉を開けるおまじないのようでした。
遊び心も、ツンとさす言葉も、自由な思想も無邪気に美しく折り重なる繊細な音達は、
ぎゅうぎゅうに詰め込まれた懐かしくて愛しいタイムカプセルの中身みたいで。
きっとくるりの想いや、このアルバムは、これからどんな時代に移り変わっていこうと人の心を動かし続けるのだろうと思います。
出会いや別れを繰り返す人生の中で、くるりの音楽に出会えたことを私は嬉しく思います。
率直に言えば大好き!だしありがとう!!
ってくるりの皆さんに言いたいです。
たかはしほのか(リーガルリリー)
「天才の愛」を聴いて
日本語の檻は透明だったことに気づきました。
周りで支えてるメロディとリズムによって、檻から日本語が逃げないような。
私はそういうものが好きです。逃げちゃいそうでここにいるものが好きです。そんなあたりまえの景色の中へ旅することができました。
アルバムを聴いていて、私は「アイラブユー」と伝えられるシンプルな言葉を知るために、今音楽と向き合っているのだと気づきました。
これから生きていく上でずっと寄り添うものは、気持ちの良いことがいいです。そんなことを感じられるアルバムでした。
くるりへのメッセージ
くるりさんの「三日月」が大好きで、リーガルリリーでカバーもさせて頂いていたので、
今回コメントのお話を頂けてとても嬉しかったです。
アルバムリリースおめでとうございます。
東郷清丸
「天才の愛」を聴いて
川べりに座って空を見上げると、鳥たちが上空を滑るように飛んでいった。「天才の愛」を聴く。美しさに涙がでて、おもしろさに吹き出してしまう。何も考えず心地よさに身を任せていると、自分も空を飛べそうな気がしてくる。くるりの音楽にはいつも風が吹いている。
天才とは、何か特別なギフトのことではなく、「その他のことはなぜだかどうしても一切できない」という自らの欠損と相対して、どうしようもなく歪に見えるその形を、どのようにして愛すか。そのたたかいの痕こそが他者の心を震わせる。
鳥たちが去ったあとの川べり。「天才の愛」が心の中に風を起こして、僕もやっぱり飛べる気がする。春。全てが柔らかくなる季節。こんな作品がたくさんの人の手に渡るなんて、なんて素敵なことだろうか。
くるりへのメッセージ
高校生のころに出会ってから十数年、もうどうにもならん!と思うときほど、くるりの音楽が心に沁みて、いつも救われるような気持ちになっていました。同じように、文章や絵という形で新しい視界をもたらしてくれたアートワーク担当の坂口恭平さん。大好きな要素が詰まった「天才の愛」をこういう形で聴くことができてとても嬉しいです。ありがとうございました。