くるり|「天才の愛」をミュージシャンはどう聴いた? 総勢23組が愛とリスペクトを込めてレビュー(前編)

くるりが2年半ぶりとなるオリジナルアルバム、その名も「天才の愛」を4月28日にリリースする。

岸田繁(Vo, G)と佐藤征史(B)、そして先日脱退が発表されたファンファン(Tp)の3人が、自分たちのやりたいことだけをただ愚直にやり通して完成させた「天才の愛」。遊び心たっぷりのナンバーから、美しいメロディやスケール感のあるサウンドが印象的な楽曲まで多彩な楽曲が収録されており、くるりの音楽愛の結晶とも言える1作に仕上がっている。

今回音楽ナタリーでは、23組のアーティストに「天才の愛」のレビューを依頼。前編ではIto(PEOPLE 1)、上野羽有音(TETORA)、神はサイコロを振らない、高橋響(Cody・Lee(李))、長屋晴子(緑黄色社会)、n-buna(ヨルシカ)、Vaundy、はっとり(マカロニえんぴつ)、林萌々子(Hump Back)、ぺっぺ(ヤユヨ)、miletから寄せられたレビューおよびコメントを掲載する。

構成 / 中野明子

Ito(PEOPLE 1)

PEOPLE 1

「天才の愛」を聴いて

間接的で文学的な“愛”(哀)、ストレートな“愛”など、歌詞を見ながら聴き入ると様々な愛の側面を感じられる作品でした。私個人が楽曲を聴くにあたって、歌詞を重視するタイプでして、「潮風のアリア」「渚」の言葉の選び方は特に刺さりました。またそれらの歌詞に岸田さんの歌唱表現が加わると、目を閉じたときに情景が浮かぶ「THEくるり」な世界観をファーストインプレッションとして感じました。
と、優等生的なコメントはこの辺にして、本作品の個人的ツボその1は3曲目「野球」でした。「ICHIROかっこいいぜ」の後の「ムネリンかっ飛ばせよ」を川﨑宗則選手ご本人が聴いたら、「俺はかっこいいぜじゃないんかい!」とツッコみそう……(笑)。
そして個人的ツボその2は10曲目「コトコトことでん(feat. 畳野彩加)」で、畳野さん、延いてはHomecomingsも大好きな私得でしかないコラボレーションでした。岸田さんと畳野さんのバランス感は絶妙でしたし、プラレールな世界観のミュージックビデオも魅力的です。
最後に、情緒的な側面を持つ一方、インスト曲含め、かなりフリーダムな感覚の楽曲が収録されるこの「天才の愛」という作品を何度もリピートした結果、酒で始まり酒で終わっていることに私は気付いてしまいました。

くるりへのメッセージ

初めまして、PEOPLE 1のItoでございます。
我々はまだ結成約1年と若輩者ではございますが、いつかどこかでご一緒できることを目標に、これからも音楽活動を続けて参ります。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

上野羽有音(TETORA)

左端が上野羽有音(TETORA)。

「天才の愛」を聴いて

何十回も先に聴かせて頂きました
小さい頃に一瞬溺れた時の事を思い出した
海の中でぼーっと溺れているのをただ感じていた時と、なぜか同じ感覚になった
曲を耳にしてドキドキしたり楽しくなったり泣いたりするけど、こんな感覚になったのは初めてです
どういう事か分からないけどまだずっと溺れてたいと思ってもう一回聴きました

神はサイコロを振らない

神はサイコロを振らない

「天才の愛」を聴いて

子どもの頃、祖母に連れられ田んぼの畦道を抜け、夏の夕暮れに照らされながらスーパーへよく買い物へ行っていました。20年も経てば風景は変わり、田んぼは住宅街に、夕焼けはコンクリートに遮られ、大きく見えた祖母の背丈も随分小さくなりました。

岸田さんの声を聴くと僕の心を懐かしさと優しさでそっと包み込んでくれるように暖かい気持ちになり、あの頃に見た夏の夕暮れみたいな匂いがして、穏やかに、静かに、涙が流れ落ちてゆきます。

くるりへのメッセージ

数々の名曲を残されてきた大先輩へのメッセージをこんな若造が書いてよいものかと大変恐れ多い気持ちでいっぱいですが、どうかこれからも歴史に残る音楽を作り続けてください。

高橋響(Cody・Lee(李))

高橋響(Cody・Lee(李))

「天才の愛」を聴いて

今回のアルバムを聴いて学生時代に好きだった、どこか掴みどころのないあの娘の事を思い出しました。ある時は夕陽を横切る堤防の上で無邪気に微笑んでいて、ある時は図書室で黙々と純文学を読み、ある時はたまたま会った駅の待合室で昨日見たテレビの話をしたり……温かさとミステリアスの混在。そうして、くるりの音楽は僕たちに記憶と紐づいた匂いを運ぶと思います。このアルバムを家で聴きながら、する筈のない潮風の匂い、図書室の埃っぽい匂い、待合室にある石油ストーブの匂いがどこからともなく漂ってきました。考えれば考えるほど、僕たちは取り返しのつかないくらい好きになってしまう、そんなアルバムだと思います。今夜、久しぶりに会えた記憶の中のあの娘に「天才の愛」を薦めてみよう。

くるりへのメッセージ

中学最後の体育祭をサボって「ARABAKI ROCK FEST.13」へ行きました。そこで僕はくるりと出会いました。それからくるりのコピーバンドを組んだり、なけなしのお小遣いでCDを買ったり……思い返せば初めてくるりの音楽に触れてから今日までの8年間、ずっと傍にいてくれたような気がします。歩幅を合わせてくれていた気さえします。私事ですが晴れて大学を卒業し、この春から音楽家として生活をしていける事になりました。そんな中このアルバムに出会えて、コメントする機会を頂けて本当に嬉しいです。8年前の4月27日にタイムスリップして「君は将来くるりのアルバムにコメントを寄せているぞ」と教えてあげたいです(笑)。

長屋晴子(緑黄色社会)

長屋晴子(緑黄色社会)

「天才の愛」を聴いて

ああ、なんて羨ましいんだろう。

開けるまでもずっとワクワクが止まらず、その勢いのまま開けてみると、色形様々、表情豊かな音たちが一気にぶわっと飛び出してくる。まるでおもちゃ箱のよう。それでいて、中身を知ってもなお、何度も手を伸ばしてしまう。

これだからかっこいいんだくるりは。

ああ、羨ましい。いや、羨ましいだけで終わらせられない。私もそんな存在になりたい。憧れです。

いつだって音楽に素直で、遊び心を忘れないくるりは、ワクワクの天才であり、愛そのもの。

これからもずっとそばにいて欲しい音楽です。