ナタリー PowerPush - Quick Japan100号記念企画「歴代表紙を飾ったアノ人と語るQuick Japan」
宮藤官九郎・坂本慎太郎対談
「俺の時代が来る夢を見た」──と題された宮藤官九郎の大特集。この特集がカルチャー誌「Quick Japan」で組まれたのは35号、2001年2月のこと。その中で「宮藤さんに友達を!」との主旨で対談企画が行われ、宮藤本人が相手に指名したのが、当時ロックバンド「ゆらゆら帝国」を率いて頭角を現し始めた坂本慎太郎だった。初対面で、共に表紙を飾った2人は、以降ずっと時代を牽引するクリエイターとして活躍を続けている。あれから11年あまり。「Quick Japan」創刊100号を記念して語られる、彼らの「あの頃」と「今」とは?
取材・文 / 森直人 撮影 / 山崎伸康
当時は緊張してうまく話せなかった
──この現物を見ながらお話を進めましょうか(と「Quick Japan」35号を出す)。
宮藤 ちょっと恥ずかしくて読めないよ(笑)、昔すぎて。(一応パラパラめくりつつ)あ……なんか俺、年齢訊かれて「もう30です」とか言ってる。今からしたら、30なんて童貞みたいなもんですよね。
──そして、異様なインパクトのある対談でした。
坂本 ああ、そうでした?
宮藤 確かやたら長いだけで、全く中身のない……。坂本さんとはこのときが初対面で。
坂本 そうですね。けどなんか……全然盛り上がんなかったですよね。
宮藤 大変でしたね。噛み合わないというか。
──当時、坂本さんは宮藤さんのことを全然ご存知なかったんですよね。
坂本 ええ、本当に誰だか知らなくて。でも対談の直前になって友達が、「その人、今すごいんだよ」って教えてくれて。でもまだインターネットもあんまり普及してなかったから、具体的に調べようもなかった。
宮藤 今だと対談する相手のこと知らなかったらマズイって、Wikipediaとかでズルできますからね。知ってるフリができる時代になりましたよね。
坂本 当時は、結局(宮藤さんのことを)よく知らないまま居酒屋に行って。だんだんまったりした感じになって。
宮藤 取材後は電車で一緒に帰りました。家までの方向が同じだったから。
──それ、結構ツラい感じがするんですけど(笑)。
坂本 帰りは打ち解けてましたよね。
宮藤 はい、最終的には。僕、対談のときはすごい緊張してたんですよね。ウーマンリブの舞台(VOL.5)のタイトルに、ゆらゆら帝国の「グレープフルーツちょうだい」って曲名を使わせてもらったりするくらい、もう単なるファンですから。「何から話せばいいのか」みたいな感じで、今パッと読み返しただけでも、「もっと喋ればいいのにな、俺」って思っちゃいますね。
坂本 よく覚えているのは、カメラマンの人がずーっと僕が食べ物を食う瞬間を狙おうとしてる感じがして。それをどうやってかわすか……。
宮藤 食うとこばっかり撮ろうとしやがって、と。
坂本 そっちに気を取られてました。まあ被害妄想だと思うんですけど。
宮藤 グルメ雑誌じゃないんですからねえ(笑)。
「が」の付く食べ物が好きになった
──先程「インターネットがあんまり普及してなかった」っておっしゃられたように、この11年でメディア環境は激変しましたよね。
坂本 確か当時、携帯電話も持ってなかったです。
宮藤 僕は持ってたけど、インターネットはやってなかったですね。原稿書くのも、ワープロからパソコンに切り替わるのが「ロケット・ボーイ」(フジテレビ系・2001年)あたりからだったんで。
──じゃあ、まさにちょうどこの頃?
宮藤 はい。あのドラマの脚本も最初はファックスで送ってたんですよ。ただ、11年経って社会はいろいろ変わっても、人間の中身はあんまり変わんないっすね(笑)。あ、でも坂本さんは、ゆらゆら帝国が解散しましたから大きく変わりましたよね?
坂本 いや、別に変わんないです。
宮藤 (笑)。
──宮藤さんは、例えばパパになったとか。
宮藤 あ、そういうのは、まあ……。だから多分、当時はまだ「モテようとしてる感じ」が見受けられるので。今はモテの野心がなくなった。でもほかはそんなに変わんない。タイムマシンがあったら会いに行きたいですね。「年取っても、ふたりともあんま変わんないよ」って教えてあげたい。
坂本 そうですね……(35号を読みながら)あ、いろいろなとこに線が引いてありますね。
──それは僕が当時面白いなと思ったところを勝手にチェックしてあるだけなんです。坂本さんの「『が』の付く食べ物は好きです」って発言とか。
宮藤 フハハハハハ(笑)。
坂本 しょうがとか、みょうがとか。その2つだけですけど(笑)。
宮藤 この記事ですごく覚えてるのは、僕が(ロックバンドの)THE WHOが好きだって言ったら、「フー?」「フー」「フー?」「フー」「あー」「フーが一番好きかも」。その後、坂本さんが「ちょっと、フーはねえ、ダメなんですよ」(笑)。これは決定的に覚えてます。
坂本 すごい正確に文字に起こしてあるんですね。普通はカットしますよね。
宮藤 こんなところまで載せるなんて、今より紙が安かったんですかね。
坂本 まだ景気がよかったんでしょうね。
宮藤 しかもTHE WHOが否定されちゃって(笑)。これ以降、僕もあんまりTHE WHOのこと好きじゃなくなってるかも。
坂本 今もTHE WHOの良さがわかんないんです。
宮藤 しょうがないですよね、そこは。僕は「が」の付く食べ物も好きになりましたよ。
──すごい影響を受けてますね(笑)。
宮藤 しょうがとかみょうがとかできるだけ食べるようにしてます。あ、この対談、ロックの話したあと、「………………」が3行ぐらい続いて、もうしびれきらした坂本さんが「好きな食べ物は?」って。僕、「カレー。カレーはダメですか?」って訊いてますね。この2人、帰ったほうがいいっすね(笑)。
坂本 呑気な記事ですね。平和な時代だったんですね。
2012年大人計画本公演
ウェルカム・ニッポン
- 2012年3月16日(金)~4月15日(日)
東京都 下北沢 本多劇場 - 2012年4月18日(水)~4月22日(日)
大阪府 シアター・ドラマシティ - 作・演出 / 松尾スズキ
- 出演 / 阿部サダヲ、宮藤官九郎、池津祥子、伊勢志摩、顔田顔彦、宍戸美和公、宮崎吐夢、猫背椿、皆川猿時、村杉蝉之介、田村たがめ、荒川良々、近藤公園、平岩紙、アナンダ・ジェイコブズ、松尾スズキ、青山祥子、井上尚、菅井菜穂、矢本悠馬
- ※当日券あり
収録曲
- 幽霊の気分で (Album Version) / In A Phantom Mood
- 君はそう決めた / You Just Decided
- 思い出が消えてゆく / My Memories Fade
- 仮面をはずさないで / Mask On Mask
- ずぼんとぼう / A Stick And Slacks
- かすかな希望 / A Gleam Of Hope
- 傷とともに踊る / Dancing With Pain
- 何かが違う (Album Version) / Something’s Different
- 幻とのつきあい方 / How To Live With A Phantom
- 小さいけど一人前 / Small But Enough