SPECIAL OTHERS 芹澤優真×CASIO「Privia」|CASIOのこだわりに宿った理屈抜きの気持ちよさ

鍵盤のスキルを上げたい

──ちなみに芹澤さんは最近、誰のピアノに刺激を受けてますか?

芹澤優真

ブラッド・メルドーですね。彼の場合、伝統的なジャズの奏法とアヴァンギャルドな感覚が両方入っていて。それをミックスするセンスとかバランス感覚がめちゃくちゃいいんですよ。旋律はオーセンティックで美しいのに、リズムの面では意外に小節を跨いで拍をとってたりして、超カッコいい。あとはロバート・グラスパーだったり、ヒップホップと連動したニューヨークの新しいジャズシーンはよく聴いています。あのループっぽいよれたビートを、生ピアノで再現するところが面白くて。

──と言いますと?

エレピってR&Bのシーンでは何十年も前から用いられてきた楽器なので、ヒップホップ的なものとも親和性が強いと思うんですね。でもグラスパーだったり、彼に続くミュージシャンたちは、あえて既存のジャズのフォーマットでそれを試そうとしている。僕にとってはそれも、伝統と革新のミックスという流れなのかなと。

──そう言えば何年か前、芹澤さんはあるインタビューでこんな趣旨の発言をされていました。「これまでは基本、自分はSPECIAL OTHERSというバンドの楽曲をカッコよく聴かせるキーボーディストであろうと思ってきたが、でも今後は独立したキーボーディストとしもスキルアップしていきたい」と。

そうですね。基礎的なテクニックがまったくないところからスタートしたのも大きいけれど、バンドを始めた頃、僕にとって鍵盤はあくまでもツールで。自分はたまたまそれを使って作曲したり演奏してる意識が強かったんです。ミュージシャンの自覚はあるけれど、キーボーディストと名乗る勇気はなかった(笑)。でも活動を続けていくと当然、楽器自体の魅力とか奥深さもわかってくるし。セッションしていても、演奏の引き出しが少ないと自分で自分に飽きてきちゃうんですよ。

──なるほど。

それで、仲のいい別所和洋くん(ex. Yasei Collective)に弟子入りして。彼はジャズ方面にものすごく明るいので、和声の理論とかいろいろ教えてもらったりしました。その代わりに僕がエフェクターなど機材周りの知識とか音色作りのテクニックなどを伝授した。お互いに弟子でもあり師匠でもあるという、便利な関係を築いて。鍵盤のスキルを上げたい気持ちはもちろん途上で、今もずっと続いています。

開発者の方と飲みに行ったら、きっと共感できる(笑)

──タッチセンサー採用のフラットな操作パネルについてはいかがですか?

これは僕の想像ですけど、たぶん今回の「Privia」開発チームに、超こだわりの人がいたんじゃないかと(笑)。「なんとしてもこれをピアノと思わせたい」という気合いが、この1枚パネルからひしひしと伝わってきました。コスト的には高くついても、「ここに切れ目があったらピアノっぽくない!」というこだわり。

「Privia」を試奏する芹澤優真の手元。

──確かに。ボタンの突起がまったくない。

こういう心意気、僕は本当に好きです。楽器って音はもちろんだけど、見た目もすごく大事ですから。やっぱりフェティッシュに愛せるところがないと。

──演奏していても楽しくない、と。

このパネル部分のエナメルっぽいツヤにしても、実際にグランドピアノを弾いてる感覚にさせてくれますよね。僕は「神は細部に宿る」という名言が好きなんですけど、それこそ手間を省いてコストを下げるよりもいいものを作りたいという部分は、ミュージシャンともつながりますよね。開発者の方と飲みに行ってお話しできたら、きっと共感できると思う。

──ははは(笑)。

それって結局はモノ作り全体につながってると思うんです。「Privia」って、音色も、響きも、弾き心地も、デザインも、すべてにおいて「本物のグランドピアノに近付けたい」という作り手の気持ちが凝縮された製品だなと。「ここはこれぐらいでいいでしょ」とか「コスト的にはこれが妥当だよね」とか、そういった妥協は微塵も伝わってこない。そこは僕らの活動とも似ているなと。もちろんプロである以上、セールスは大事なんですけど……。

──それよりまず、自分たちが納得できる音楽をリスナーに届けたいということですね。

まさにそうです。CDが売れてチャートに入れば、それはそれでうれしい。でも僕らはSPECIAL OTHERSをまるで知らないお客さんがフェスで踊ってくれるとか、あるいはワンマンに来たファンが震えるほど感動してくれるとか、自分たちの目の前の人を喜んでもらいたくて活動してきた部分が大きいので。今日「Privia」をちょっと試奏しただけで、その共通点は強く感じました。

──よくわかりました。では最後に1つ、無茶ブリをいいでしょうか?

お、なんですか?

──今、芹澤さんのスマートフォンに入っているお気に入りの曲をBluetoothで「Privia」に飛ばして、即興でセッションすることって可能ですか?

なるほど、ちょっと待ってください(スマホを取り出し、しばしライブラリーを検索)。じゃあBluetoothを飛ばします(内蔵スピーカーからR&Bテイストのエレクトリックミュージックが流れ出す)。

──カッコいいですね。この曲は?

Elderbrookの「Good Times」。ロンドンを拠点に活動する若いミュージシャンです(と言いつつ、シンプルな構成の楽曲に、ピアノのフレーズを乗せていく芹澤。曲が進むにつれファンキーな連打が増え、1人セッションが数分間続く)。

──素晴らしい! ありがとうございました。

面白いですね、「Privia」(笑)。エレピの場合、音を短く転がす感覚が強いけど、こういう生の音だとよりアタックの強いフレーズを繰り出したくなる。楽器がミュージシャンの表現欲を引き出してくれる部分は、やはり大きいんですね。デジタルピアノの可能性を俄然追求してみたくなりました。

ツアー情報

「SPECIAL OTHERS QUTIMA Ver.26 JAZZ箱Tour2019」
  • 2019年7月12日(金)大阪府 Billboard Live OSAKA [1st]OPEN 17:30 / START 18:30
    [2nd]OPEN 20:30 / START 21:30
  • 2019年7月13日(土)愛知県 名古屋ブルーノート [1st]OPEN 17:30 / START 18:30
    [2nd]OPEN 20:30 / START 21:15
  • 2019年7月15日(月・祝)福岡県 Gate's7 [1st]OPEN 16:15 / START 17:00
    [2nd]OPEN 19:15 / START 20:00
  • 2019年7月18日(木)東京都 Billboard Live TOKYO [1st]OPEN 17:30 / START 18:30
    [2nd]OPEN 20:30 / START 21:30
  • 2019年7月19日(金)東京都 Billboard Live TOKYO [1st]OPEN 17:30 / START 18:30
    [2nd]OPEN 20:30 / START 21:30
  • 2019年7月21日(日)神奈川県 MOTION BLUE YOKOHAMA [1st]OPEN 15:15 / START 16:30
    [2nd]OPEN 18:15 / START 19:30
芹澤優真