SPECIAL OTHERS 芹澤優真×CASIO「Privia」|CASIOのこだわりに宿った理屈抜きの気持ちよさ

「Privia」のタッチは理屈抜きで気持ちいい

──芹澤さんは現在、ステージではフェンダー・ローズをメインで弾いていますが、SPECIAL OTHERSの楽曲で88鍵のアコースティックピアノが入ったものってありましたっけ?

バンドとしては今のところないですね。ただ、ライブ終演後に対バンのメンバーも交えてセッション大会が始まることがあって。そういうとき、会場の備え付けのピアノを弾いたりはします。楽器におけるタッチとか弾き心地の重要性って、すごく大きいんですよ。それによって、もちろんプレイ内容も変わりますし。僕らみたいにセッション形式で曲を作っていくバンドは、作曲にも影響する気がする。やっぱり、弾いていて気持ちいいフレーズを使いたくなりますからね。

──確かに。

「Privia」を試奏する芹澤優真の手元。

それで言うと「Privia」のタッチは理屈抜きで気持ちいい。本当のグランドピアノを弾いているときに感じるヴァイブスがこのボディから出ている時点で、僕からすればもう“勝ち”ですよ。例えば一人暮らしのバンドマンで、自宅にグランドピアノを置ける人が一体どれだけいますかって話ですから(笑)。それが簡単に入手できて、しかも部屋の片隅に余裕で置けるという。幅の広がり方が尋常じゃない。

──もし芹澤さんの家に「Privia」があれば、これまでとは違った曲調のナンバーが生まれてくる可能性もありますか?

大いにあります。これが部屋に置いてあったら、間違いなく「いっちょこれで曲でも作ってみるか」という気になるはず。人って手間が増えれば増えるほど、そこから遠ざかっていくでしょう? いくらグランドピアノが魅力的でも、わざわざ練習室まで出かけて作曲するのは、どう考えても面倒くさい(笑)。「Privia」ならアイデアが浮かんだ瞬間、すぐスイッチを入れて弾けますし。

──日々触れるものだからこそ、コンパクトさに意味があるわけですね。

実際、このサイズなら背負ったまま、ライブハウスまで余裕で行けますからね。しかも便利なのは、パソコンやスマホからBluetooth経由で本体から音も鳴らせる。つまり自作のトラックを「Privia」から出して、そのうえでセッションしながら作曲もできる。本来はクラシックのピアノを習っていた人に向けた製品なのかもしれないけれど、その意味では制作向き、バンドマン向きだとも感じました。

──しかもタッチや響きが本物のグランドピアノに近ければ、スタジオやライブとのギャップも感じずに済む。

そうなんですよ! せっかく家でフレーズを作っていっても、スタジオで弾いてみて「あれ、なんか音色の雰囲気が違うな」となっては意味がないので。あと、和音の響きもそうです。いくつもの音を同時に弾いたとき、弦の共鳴によって美しい倍音が出たり、あるいは微妙な濁りが生じたりする。その複雑さがグランドピアノの味だと思うんですけど、「Privia」はそこまで内部的にシミュレートして出してくれる。

──そこも工夫されてるんですね。

芹澤優真

さっき試奏した際に説明してもらった受け売りなんですけどね(笑)。でも実際にそれって、コード選びにめちゃくちゃ大事なんですよ。あと単音と和音では反響する倍音が変わってくるんですけど、それもちゃんと再現されていてすごいなと。実は自宅に何台かデジタルピアノを持っていたんですけど、正直そこがネックになって弾かなくなっていました。でも、いい楽器は2秒でわかる。

──じっくり弾きこまなくても?

あくまでも僕の意見ですけど、「この楽器、自分と合っているのかな?」と考えながら弾いている時点で、それはいい楽器じゃない。今日は最初にこの部屋に入ってパーンと音を出した瞬間に、理屈抜きに「あ、いい!」と思いましたから。これが家にあったら、間違いなく弾きます。価格も超お手頃だし。

──言い換えれば、ピアノの世界に誰でも気軽に入ってきやすい。

そうそうそう。ピアノって、なんかちょっと敷居が高いイメージあるじゃないですか。ちゃんと弾ける人じゃなきゃ触っちゃいけない、みたいな。でも実際はそんなことない。それこそ僕なんて、メンバーに「明後日のライブから弾いて」ぐらいの無茶ブリをされて始めたので、ジャズやクラシックのトレーニングを受けた人から見れば、すべてが我流のキーボーディストですけど(笑)。でも、誰よりも楽しく鍵盤で遊んでいる自信はありますから。

デジタルピアノだけのライブをやったら面白いかも

──「Privia」が自宅にあったら、どんな曲が生まれそうですか?

うーん、やっぱりアタックの強い、元気なフレーズをガンガン弾きたくなるんじゃないかな。例えばこういうニューオーリンズっぽい感じだったり(と、やおら横ノリのファンキーなフレーズをアドリブで)。

──おお! これは楽しい。

芹澤優真

ニューオーリンズのピアノって、セカンドラインと呼ばれる独特の跳ねたビートが特徴なんですね。フェンダー・ローズだと、その跳ね感がなかなか表現しづらい。でもこれだけピアノの生音に近いと、こういうフレーズも弾きたくなりますね。あと自分たちのレパートリーだと……例えばこれとか(と、聴きなれたイントロを演奏)。

──ライブでも定番の「AIMS」ですね。ピアノの音で聴くと新鮮です。

ですね。当たり前だけど、普段フェンダー・ローズで弾いてるよりも生っぽい感覚が強くなる。打鍵の強弱が、よりストレートに音に出ますし。あとキーボードの場合、1つの音をビーッと長く引っ張ることもできますけど、これだと響きが滑らかに減衰して、空気に溶けてく感じがする。あえてデジタルピアノだけのライブをやったら、面白いかもしれない(笑)。