音楽ナタリー Power Push - RYOJI(POTSHOT)×猪狩秀平(HEY-SMITH)

2世代スカパンクフロントマンが語る“DO IT AGAIN”

POTSHOTの始まりは「メロコアの次はスカコアだ!」のポップ

──RYOJIさんがバンドを組んだ頃は日本にスカパンクバンドがそれほどいなかったわけですよね。どうしてスカバンドを始めようと?

RYOJI それは……レコード屋さんのポップに「メロコアの次はスカコアだ!」って書いてあって。

一同 あはははは(笑)。

RYOJI もうメロコアには乗り遅れてる感があったので「じゃあスカコアっていうのをやったほうがいいんだな」と思って。

猪狩秀平

猪狩 俺が言うのもなんですけど大馬鹿野郎ですよね、その発想(笑)。ヤバいですね。

RYOJI その前にね、今でいうミクスチャーっぽいバンドをやってて。COKEHEAD HIPSTERSに憧れてたから、メロディックっぽいのもやるし、レゲエっぽいのもやるし、横ノリっぽいのも重たいのもやるみたいな。海外だとRage Against the MachineとかRed Hot Chili Peppersとかが出てきてた時代で。でもミクスチャーってテクとセンスが必要じゃないですか。俺たちにはそれが両方なくて(笑)。

猪狩 あはははは(笑)。

RYOJI で、どうにもなんなくて。そんなときに「メロコアの次はスカコアだ!」のポップと出会って。そのポップがついてたVoodoo Glow Skullsの1stアルバム「Who is, This is?」を聴いたらよかったんで「これをやろう」と。で、メンバーに「今までミクスチャーバンドだったけど、今日からスカだけに特化してやるから」って言った。

猪狩 いきなり?

RYOJI いきなり。それが1995年の夏。

猪狩 今日からスカバンドだぞって言われて、メンバーはどんな反応だったんですか?

RYOJI 「ふーん」って(笑)。なんかね、みんなバンドはやりたかったんだわ。でもうまくいかないっていうのも感じてて。だからまあこれでうまくいかなかったら最後かな、ぐらいの雰囲気もあったし。で、そのミクスチャー時代にRUDEBONESと対バンしたことがあって。ゲストでホーンが何曲か参加するんじゃなくて、全曲にいるっていうのがすごい新鮮だったんだよね。それで、当時のベースのYOSHITOが高校のときにジャズ研だったからそのときの後輩を連れて来いって言って、無理矢理始めたんだよね。

──猪狩さんはなぜスカパンクをやろうと思ったんですか?

猪狩 最初はスカバンドをやるっていう気持ちはまったくなかったんです。ただメロディックパンクにホーンを乗っけたれと思って。メタルとかも好きやったんで、そういうフレーズを入れたりしてたし。あとはMetallicaの「S&M」(1999年リリースのライブアルバム。Metallicaとサンフランシスコ交響楽団が共演したライブの音源が収録されている)を聴いて「メタルとクラシック合うなあ」と思ってたりしてて。

RYOJI なるほど、全部好きなものを入れたろうと。

猪狩 はい。あと仲いいやつが5人ぐらいいたっていうだけですね(笑)。

20周年を機に活動再開

──POTSHOTは今年結成20周年ということで活動を再開していますが、これはどのようなきっかけだったんでしょうか?

RYOJI 一昨年ぐらいから、いろんなイベントの主催者から「なんかやってくれませんか」っていう打診があって。例えば一昨年は大阪の「RUSH BALL」が15周年だからって声がけてくれて。POTSHOT以外にも復活組がたくさん出るのかと勝手に勘違いして、「そういうお祝いでしたらぜひうちもやらせてもらいます」って言って出たんだけど、結局うちしかいなかった(笑)。解散して8年も経ってるからうちらのこと知ってる人なんていないだろって思ったら、えらい盛り上がっちゃって……(小声で)物販も売れて。

一同 あはははは(笑)。

RYOJI そのときは一度きりの再結成のつもりだったから、それは楽しい思い出で終わって。ただ、1つ出ると皆さんそれを嗅ぎつけていらっしゃるんですよね。それが去年のことで。オファーもどんどん来るから、来年20周年だし、1回なるべく全部出てみようかとバンド内で盛り上がったんです。だけどいざやろうとしたら、メンバーのスケジュールが合わなくて全然できねえじゃんっていう(笑)。なおかつ、フェスとかにも立候補したら意外に声かからなくて。「あれ? スケジュール空いてまーす! 夏丸々空けてありまーす!」みたいな(笑)。

10年ぶりのPOTSHOTの曲作り

──そんな中、今回新作CD「DO IT AGAIN WITH POTSHOT」を作られたわけですが。

猪狩 ライブだけならまだしも、新作を作るってなかなかのパワーですよね? これはどういうきっかけだったんですか?

RYOJI 始まりは飲みの席ですよ、あくまで(笑)。やっぱりツアーやるんだったら新曲があったほうが面白いし、ニュースになるんじゃないかっていう……勢いですね。

猪狩 普通にスタジオで曲を作ったんですか?

RYOJI うん。でもやっぱもうフルアルバムは大変だから、マキシシングルかミニアルバムぐらいにしようとは言ったけど。

──POTSHOTとして曲作りをするのもひさしぶりですよね。

RYOJI 10年ぶりですね。でもまあライブのリハとかもやってたんで、その間で「じゃあ今度新曲持ってくるわ」みたいな感じで。だからわりと自然にできましたね。

猪狩 新曲は、今RYOJIさんから出てきたものなのか、10年前のPOTSHOTに寄せながら作ったのか、どっちなんですか?

RYOJI

RYOJI 結局、最終的には寄せて作り直しました。スカパンクの曲は自分の中でもストックがあるから、その中からいい感じのを持ってったら、ギターのSATOSHIに「なんかあんまりPOTSHOTっぽくないんですよね」ってダメ出しされて。けっこうシングル級の曲なんだけどなあ、ってちょっとムカついたんだけど(笑)。

猪狩 はははは(笑)。

RYOJI でも1回リセットして、POTSHOTをイメージした曲をちゃんと作ろうと思って作ったんです。

猪狩 今、HEY-SMITHも新体制で曲を作ってるんで、境遇がちょっと似てるなと思って。もう俺は今、なんの曲を作ってるのかまったくわかんないんですよ。もうね、曲の幅がすごくて。休止中に何十曲も作ってたんですけど、それを今みんなでやってみると、すごい幅になっちゃって「どこまで使えんねやろ」みたいな。

RYOJI 言い方よくないかもしれないけど、前のメンバーだったらさ、たぶんゴールがわかってるから、すげー振り幅広いの持っていってもたぶん最終的にまとめられたけどさ、今は新しいメンバーが入ってるから「ここがゴールやで」って言っててもホントに同じゴールが見れているかまだわかんないのかな。

猪狩 わかんないですね。しかも今のメンバーのほうがうまいんで。

RYOJI ああそっか、やれることも増えて。

猪狩 そう、やれることがすごく多いんですよ。まあ楽しいんですけど、どこまでやったらいいかわかんない。

RYOJI もう広げちゃおうぜ。

猪狩 いいんすかね? もうラップとか入ってますもん、今。

RYOJI おお、やっちゃおうよ。

POTSHOT ミニアルバム「DO IT AGAIN WITH POTSHOT」2015年10月7日発売 / 1512円 / TV-FREAK RECORDS / UK.PROJECT / TV-120
「DO IT AGAIN WITH POTSHOT」 / Amazon.co.jp
収録曲
  1. Fight Together
  2. Start From Today
  3. Every Dawn(2015 version)
  4. I Can(2015 version)
  5. I Wanna Be With You(SUMMER 2015)
  6. HAPPY HOUSE(オリジナル:SHEENA & THE ROKKETS)
POTSHOT 20th Anniversary Tour Final
  • 2015年11月22日(日)京都府 磔磔
  • 2015年11月23日(月・祝)愛知県 APOLLO BASE
  • 2015年11月28日(土)東京都 LIQUIDROOM
TOWER RECORDS presents Bowline 2015 curated by HEY-SMITH & TOWER RECORDS
2015年10月12日(月・祝)大阪府 Zepp Namba
OPEN 12:30 / START 13:30
<出演者>
HEY-SMITH / グッドモーニングアメリカ / DUB 4 REASON / PUFFY / POTSHOT / LIFE IS GROOVE / Crossfaith
W STUDIO RED opening ceremonies “SAY GO!!”vol.2
2015年10月16日(金)愛媛県 Wstudio RED
<出演者>
POTSHOT / 10-FEET
POTSHOT(ポットショット)

POTSHOT

RYOJI(Vo)、CHUCKY(Trombone)、SATOSHI(G)、KOBAYASHI(Dr)、MITCHY(Tp)、ICHIKAWA(B)からなる“多分日本で3番目に結成された”スカパンクバンド。1997年に1stアルバム「POT'S&SHOT'S」を日米でリリースすると、一気にシーンの最前線に上り詰める。2000年リリースの4thアルバム「POTSHOT a GOGO」ではオリコン週間ランキングで最高7位を記録するほどの人気を集めていたが、2005年に解散を発表した。その後2007年12月の「KEMURI EXTRA SHOW with DO THE SKA!!」、2013年8月の「UKFC on the Road 2013」、同年8月の「RUSH BALL 15th」、2014年3月「NO MATTER LIVE Special」でそれぞれ再結成を果たす。バンドの結成20周年となる2015年に、年内限定で活動を再開。同年10月に新作CD「DO IT AGAIN WITH POTSHOT」をリリースし、11月に“2度目の解散ライブ”となるワンマンライブを行う。

HEY-SMITH(ヘイスミス)

HEY-SMITH

猪狩秀平(G, Vo)を中心に結成されたパンクバンド。2006年に大阪を拠点にライブ活動を開始し、2009年に1stミニアルバム「Proud and Loud」でCDデビュー。2010年の1stフルアルバム「14 -Fourteen-」を経て2011年にリリースした2ndフルアルバム「Free Your Mind」はオリコン週間インディーズランキングで1位を記録する。2012年には「FUJI ROCK FESTIVAL '12」「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012 in EZO」といったフェスに参加したほか、coldrain、SiMとのパッケージツアー「TRIPLE AXE TOUR 2012」を開催した。2013年5月、2年ぶりのフルアルバム「Now Album」を発表し47都道府県を回るレコ発ツアーを大成功に収める。2010年より自主企画イベント「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL」を主催しており、2014年9月には大阪・泉大津フェニックスにて初の野外開催を成功させた。2015年1月に同イベントの模様を収録したDVD「Live at OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL 2014」をリリース。メンバーチェンジを経て、現在は猪狩秀平、YUJI(B, Vo)、満(Sax)、Task-n(Dr)にサポートメンバーを加えた編成で活動を行っている。