ポルノグラフィティ|“メジャー志向”を貫いた20年の証

ポップであると胸張って言える

──メジャー志向を持っていても、実際にメジャーで20年にもわたって活動を続けられるアーティストはほんのひと握り。そういった意味でポルノは非常に稀有な才能を持ったバンドなんだと思います。ただ、これまでの活動の中では対外的な見られ方に関してもどかしい思いをされていた時期もありましたよね。15周年のタイミングではそのパブリックイメージに対して「多少楽観的にはなってきている」と発言されていましたけど、ここにきてより腹をくくれた感じもあるんじゃないですか?

岡野 まさにその通りだと思いますね。ここ数年、いろいろなロックフェスに出させてもらうようになったんですけど、そこでゴリゴリのタトゥーが入った若手のバンドの人たちに「ずっと聴いてました」って言われることが本当に多くて。最初は「ホンマかいな」と思ってましたけど(笑)、僕らの音楽がそういった人たちの音楽人生に足跡を残せているんだということをだんだん自覚できるようになっていったというか。それによって世間からの見られ方に対するもどかしさは一気に取り払われたし、だからこそ今はポップであると胸張って言えるようになったんです。メジャー感やポップな部分っていうのは狙って出せるものではないとも思うので、そこはおっしゃっていただいたように自分たちの才能だと認め、卑下する必要はないんじゃないかなって今はすごく思いますね。

新藤 そりゃね、現役で活動を続けているから、世間の見られ方とは違った自分たちになりたいという思いは少なからず絶対にあるわけですよ。そこが自分たちの自覚するアイデンティティと同居していることも自然なことであるっていう。東京人になりたいけど因島のことも嫌いじゃないっていうのと同じ。だから今後もポルノグラフィティの強みは大事にしつつ、新しいことを求めていくことになるんだろうとは思います。とは言え、急に環境音楽をやり出すとか、そんなことにはならんけど(笑)。

岡野 歌なしのインストばっかりとか、そうはならないだろうね(笑)。

いいメロディだからこそ正しい表現があるはず

──「VS」のボーカルレコーディングはいかがでしたか?

岡野 こういうきらびやかでポップな曲っていうのは、非常に表現力を問われる部分があるんですよ。しかも今回は希望を描く部分もあれば、少し嘆いている感情もあったりするから、その色の違いを1曲の中でどう表現していくかが重要になってくるのでレコーディングはかなり難しかったですね。テンポがものすごく速いわけでもないからオケと歌との絡みをしっかり意識しないと、ただただ滑っていくだけの歌になってしまうし。いいメロディだからこそ、そこには正しい表現があるはずなので、それを見つけるために試行錯誤しました。

新藤 そこは曲作りや作詞に関しても一緒ですよね。人の声で歌われることで、「あ、この言葉はあんま響かないな」とか「このメロディじゃないな」と気付くことも多いので、本チャンの歌録りのときにいろいろ手を加えたりはよくするんです。

岡野 実際、この曲もメロディは何度も変わりましたからね。「俺、どのメロディ歌えばいいの?」っていうくらい(笑)。だからこそすごくいい仕上がりになったんだと思います。

──「VS」のMVは非常に面白い仕上がりになっていますね。下北沢を歩く昭仁さんと晴一さんがそれぞれワンカット撮影され、画面を2分割にして表示されているという。

岡野 撮影は全部で3テイクくらいやったんですけど、あっという間に終わりました。ライブと同じで、その1本に集中することでいろんなことしてみようとかアドリブも浮かぶので……っていうほど何もしてないですけど(笑)。今回のようなスタイルは自分に合ってるような気がします。

新藤 映像的に作り込んでいるわけじゃなく、僕らはただ単に歩いてるだけで、なんもしてないですからね。でも最後までなんとなく観れちゃうのが面白い。

──クレープを食べている昭仁さんや、通りがかった洋服屋で商品の値札をチェックする晴一さんが見られたりレアなシーンも満載ですけどね。

岡野 あー、そういうところを見られるんだ(笑)。

新藤 洋服、めっちゃ安かった(笑)。

──で、最終的にお二人は下北のライブハウス・CLUB251にたどり着きます。

岡野 東京に来てから何度か立ったことのあるライブハウスだったから懐かしかったですね。当時のライブはホントにお客さんが少なかったんですよ。でも、あるときめっちゃ人がたくさんいたことがあって。で、昔はよくやってたんだけど、客席に降りて行って1人ずつ握手するっていうパフォーマンスをしたわけです。そしたら全員レーベルと事務所の関係者だったっていう。それが251での思い出です(笑)。

──晴一さんは途中でflumpoolの阪井一生さんとも会われてましたね。

新藤 偶然会ったなー(笑)。下北で偶然出会うとしたら一生ですよね。ボーカルの(山村)隆太だと正式にオファーした感じになっちゃうから。

岡野 なんか一生に失礼だわ(笑)。

新藤 まあ実際は一生もオファーして出てもらってるんですけど(笑)、実際下北でリアルに会いそうな感じがするでしょ? あいつは衣装も私服だったからね。普通に来て普通に帰っていった(笑)。そういう部分も含め面白いMVになったと思います。