広いステージで問われるラップの力
つやちゃん 当たり前ですけど、「POP YOURS」のステージってめちゃくちゃ広いじゃないですか。あの広さをどう使うか。売れてるラッパーたちは、2024年頃からダンサーを呼んで、すごく派手なステージをやり始めた。それがまだできない若手のラッパーは、ステージでのラップ力そのものが問われる。しかもフェスだから、基本的にリハはない。
二木 ラップ力という観点で言えば、今年のDAY1のISSUGIのライブも見所ですよね。あの大きなステージで、しかもいろんなファンやリスナー層がいる前でどんなパフォーマンスをするかは本当に大変ですよね。ISSUGIは期待に間違いなく応えてくれると思う。自分の「POP YOURS」体験のなかで、うならされたパフォーマンスはいくつもあるけど、その最初は、初開催の2022年の田我流だった。MAHBIE(DJ)、後関好宏(Sax)、川崎太一朗(Tp)っていう小編成ながら、すごい色気と音楽的な豊さを出していて。あれを観て、人数を殊更増やさなくても、やり方次第なんだなって思った。そういうのには期待したいですね。
つやちゃん 自分の去年のベストアクトは、KM。プロデューサー / DJだけど、アルバムでラップをしたじゃないですか。それをステージでもやって。すごく彼のキャラクターが伝わってきたし、そういう見せ方もあるんだなと痺れました。プロデューサーが見せるステージとして新しい形でしたね。
二木 去年「大きな会場でラップ力を発揮できるラッパーってこの人だな」と思ったのが、唾奇でしたね。昨年末の武道館のライブも素晴らしかった。大きな会場でライブして、彼ぐらい声を通し続けられるラッパーってなかなかいないのでは。あとラップ力といえば去年ショットライブで今回メインアクトに上がったTeteも気になりますね。リリシズムの人なので。
USB Teteは、けっこう昔っぽいところがありますよね。日本語ラップの系譜にあるラッパー。最初THA BLUE HERBや鬼の匂いをちょっと感じた。ただアルバムはクラブっぽい曲もあってて幅広い。
松島 そう考えると、トレンドはだいぶ広く押さえてるけど、いわゆるトラッドなラップの形を絶対に忘れないのが「POP YOURS」の思想でもあるのかなと。Teteのようなアーティストの本当の魅力って、ショットライブでは絶対に伝わらないし、当日が楽しみです。
いろいろな盛り上がり方がある
二木 あと、JUMADIBAも楽しみにしてます。僕は彼の音楽を基本ダンスミュージックとして聴いて楽しんでいて。ああいうアンビエントっぽいテクスチャーのサウンドのラップミュージックを大きな会場で聴いて踊れたら楽しいだろうなと。去年出したアルバム「IEGUMO」でいえば、「feelする夜に」のような曲ですね。
松島 ただアンビエントっぽいサウンドって、ライブだとどうしてもしっとりしちゃうんですよね。盛り上がってないわけじゃなくて、お客さんは心にグッときて聴いてるんだけど、大人数の中で見るとやっぱり静かな感じに見えちゃう。
USB 別にいいと思うんですよね、それで。パッと見てめちゃくちゃ盛り上がってる感じじゃなくても、セットリストに意味があればそれでいい。
松島 でもお客さん、特に日本の若い子たちって、「これめっちゃいいと思ってるんだけど、みんな沈黙してるから違うのかな」って疑心暗鬼に駆られる人が多いと思うんですよ。
二木 2022年の初回の「POP YOURS」にMONJUが出たときを思い出しますね。Daichi Yamamotoのあとで、オーディエンスがちょっと移動し始めちゃったんですよ。そのとき、MONJUはライブの前にたしかルーツレゲエを流して。で、徐々に空気を作って、自分たちを観たい人たちを寄せてからライブを始めて。さすがのベテランのテクニックだなと思った。
松島 1000回ぐらいパーティを体験してる人の所作ですよね(笑)。
二木 そうそう。そういうのも見ものなんですよね。今年出演するSALUの2022年のライブもうまかったし、よかったですよ。どちらかと言えば、爆発的な盛り上がりを期待しているオーディエンスが多いと思うけど、そんな中でキーボードの伴奏だけでラップしていて。
USB フェスを通してずっと同じことをやってても仕方ないんですよね。最初から最後まで同じような盛り上がり方をしていても意味がない。
松島 「POP YOURS」が日本最大級のヒップホップフェスとして残ってるのも、そこにあるんじゃないかと思ってて。しっとり系のアクトもやっぱり必要なんですよ。「あのときあまりピンと来てなかったけど、なんかよかったな」って感想を持ち帰る若い人はたくさんいると思うんです。そうなると「また来年も行こう」ってなりますし、そういう幅広さが「POP YOURS」への信頼を積み上げてきたんだと思うんですよ。
USB 客を育てるという意味合いはありますよね。フェスが「こういうのもあるんですよ」って紹介してあげる。
つやちゃん そういう意味だと、JUMADIBAなんかまさにそうで。UKラップの影響がどんどん広がってる印象。ラッパーに取材してると、最近皆UKのラッパーを挙げる。でも「POP YOURS」みたいなステージになるとUKルーツの曲ってあんまり盛り上がらないじゃないですか。そこはもう少し距離があるのかもしれないですよね。
今年のヘッドライナーLANA、千葉雄喜、KEIJU
つやちゃん 最後にヘッドライナーの話をしますか。DAY1はLANA、DAY2は千葉雄喜、DAY3はKEIJUです。
USB 順当な3組ですよね。
つやちゃん 千葉雄喜がどんなステージになるのかだけ、ちょっとイメージが湧かないかも。
松島 さすがにブルーノート的なアプローチとかアンビエントとかはやらないと思いますけど、どうなんでしょう。
二木 最近コラボ曲を出した渡辺直美が来たらビビるけどね(笑)。
松島 それぐらいのことを期待されるところまで来てるという(笑)。
USB みんな武道館クラスのデカ箱でやるような人たちですよね。
松島 武道館やったことある人じゃないと、ってなってますよね。
USB KEIJUは安定してヒット曲があるんですよね。だから僕はけっこう評価高いです。適当にやってないなって。ヒット曲をちゃんと継続的に出せる人ってあんまりいないじゃないですか。みんな休むし、なんとなくカリスマ感だけで突っ走っていけるケースもあるけど、KEIJUはちゃんとヒットさせてる。
つやちゃん LANAもそうですね。ちゃんとヒットさせてる。
USB 「Boss Bitch」以来のLANAとElle Teresaのコラボも楽しみです。
来年のヘッドライナーは誰か?
松島 若手の中から、次に誰がヘッドライナーをやりそうかというのを考えるのも面白いですよね。MIKADOとかどうなんだろう。もう一発ヒットが出ればいけるのかも。
つやちゃん もう二発ですかね。今年Zeppワンマンが決まったので、その盛り上がり次第では一気に駆け上がるかもしれません。
USB やっぱりそこはKohjiyaとかWatsonになるんでしょうね。Watsonも100万再生とか当たり前にバーンと出る人だから。
松島 去年は1日しか観に行ってないですけど、個人的にはElle Teresaが一番よかったです。来年か再来年くらいにElle Teresaがヘッドライナーになったら最高ですけど。
USB Elle Teresaは、もっと大きいハコでも全然いけると思うんですよ。ただ、あんまりライブしてないじゃないですか。
松島 それこそ武道館に向けて動いて、アルバムも出して、早くヘッドライナーになってほしいですね。「POP YOURS」として、2030年になる前にそういう世代交代が見えたら素敵だなと。今がんばってる人たちがレジェンダリーな存在になって、まだ見ぬ謎のビートを作る新人が出て、みたいな。楽しみですね。
公演情報
POP YOURS 2026
2026年4月3日(金)千葉県 幕張メッセ 国際展示場 展示ホール1-6
<出演者>
LANA / Elle Teresa / guca owl / Benjazzy / Bonbero / eyden / ISSUGI / Jinmenusagi / Koshy & Sonsi / kZm / Litty / Peterparker69 / Pxrge Trxxxper / SEEDA / VaVa / WILYWNKA
SPECIAL LIVE:STUTS Orchestra
NEW COMER SHOT LIVE:AOTO / Siero / X 1ark
DJ:nasthug
Terminal 6 STAGE:DJ U-LEE / GRADIS NICE & DJ SCRATCH NICE / I♡WAKA
MC:SAKURA / Isaac Y. Takeu
2026年4月4日(土)千葉県 幕張メッセ 国際展示場 展示ホール1-6
<出演者>
千葉雄喜 / Daichi Yamamoto / Kvi Baba / BIM / DADA / DJ CHARI & DJ TATSUKI / Jin Dogg / JUMADIBA / KM / Manaka / Masato Hayashi / 7 / ralph / SALU / SPARTA / Worldwide Skippa / Yvng Patra
SPECIAL ACT:Tohji
NEW COMER SHOT LIVE:Rama Pantera / Sad Kid Yaz / YELLASOMA
DJ:eijin
Terminal 6 STAGE:MARZY / SEEDA × DJ ISSO × she's rough presents CONCRETE GREEN / Tohji Presents u-ha neo stage
MC:SAKURA / Isaac Y. Takeu
2026年4月5日(日)千葉県 幕張メッセ 国際展示場 展示ホール1-6
<出演者>
KEIJU / Kohjiya / NENE / ACE COOL / ANARCHY / C.O.S.A. / G-k.i.d / Jellyyabashi / Kaneee / lilbesh ramko / MIKADO / OZworld / ピーナッツくん / 柊人 / Tete / Watson / Yvngboi P
SPECIAL LIVE:PUNPEE
NEW COMER SHOT LIVE:11 / HARKA / Kianna
DJ:uin
Terminal 6 STAGE:AMAPINIGHT / MASATO & Minnesotah / YeYan
MC:SAKURA / Isaac Y. Takeu
プロフィール
二木信(フタツギシン)
ライター。「ele-king presents HIP HOP 2025-26(THE CROWD)」の編集 / 監修を務める。2008年に松本哉との共編著「素人の乱」、2013年に単著「しくじるなよ、ルーディ」を刊行し、2015年に刊行された漢 a.k.a. GAMI著「ヒップホップ・ドリーム」の企画・構成も担当。「ele-king vol.27 特集:日本ラップの現状レポート」「文藝別冊 ケンドリック・ラマー」などの編集協力も手がける。
松島広人(マツシマヒロト)
DJ / ライター。2021年よりNordOst名義でDJとしての活動をスタートし、首都圏を中心に国内外の大小さまざまなシーンを横断しながら年間100本ペースのギグを続ける。パーティシリーズ「第四の道」主催。カルチャープラットフォーム「AVYSS」スタッフ。
USB(ユーエスビー)
ライター。SNSで最新のラップミュージックを紹介しており、Elle Teresaに「私を褒めるUSB」とネームドロップされるなど、ラッパーからも注目を浴びている。
つやちゃん
文筆家。カルチャー領域で執筆するほか、企画や監修なども多数行っており、著書に「スピード・バイブス・パンチライン」(アルテスパブリッシング)、「わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論」(DU BOOKS)、監修に「オルタナティヴR&Bディスクガイド」(DU BOOKS)などがある。



