ナタリー PowerPush - POLYSICS

祝!バンド結成15周年 1000本ライブの裏側に迫る

「日本の夏、ケチャの夏」

──「友達ケチャ」は67人ものアーティストが「声」で参加していますね。

15周年記念ってことで、1曲にたくさん友達を呼ぶっていうのをやりたくて。パッと浮かんだのは、友達全員でケチャ(※インドネシア・バリ島の民族音楽・舞踊。 「チャッ、チャッ」という掛け声の合唱をする)をやってもらったら面白いんじゃねって(笑)。

──なぜケチャなの?

いや、なんとなく(笑)。普段ケチャしない人がケチャやるといいよなって(笑)。あと、ちょうどTHE POP GROUP(※英ブリストルのニューウェイブバンド。ケチャを取り入れた曲を演奏している)聴いてたっていうのがあるんだけど(笑)。

──ははは!(笑)なるほど。

2011年7月、赤坂BLITZでのライブの様子。

ニューウェイブの人って結構ケチャやるじゃないですか。YMOとか。だからいつかやりたかったんですけど。で、「友達ケチャ」やろうってことになって、EDIROL(※ローランド社製のハンディデジタルレコーダー)持って夏フェスのバックステージで、「友達ケチャやるんだけどさあ、『チャッ!』って言ってくれる?」って頼んで(笑)。「何やってるの」とか白い眼で見られたりしながら(笑)、ちゃんと意図が伝わる友達に参加してもらって。(奥田)民生さんは緊張しましたけどね。

──ハヤシくん、DJでユニコーンの曲歌ってるしね(笑)。

民生さんは「ひとりカンタビレ」やってたんで、趣旨をわかってくれて。で、そうやって録りためたものを家のProToolsに入れて編集して、また録って、ということを繰り返して。だから去年の夏はほんとケチャ一色で。「日本の夏、ケチャの夏」みたいな(笑)。

──これ、参加アーティストの許諾を得るのが大変だったでしょうね。

ほんとそれはスタッフに感謝です。

──でもこういうことができるのがポリの強みだよね。こういう遊びの入った企画盤だから、余計タガが外れた感じがあって。

そうかもしれませんね。

「ナヤミムヨウ」って読むんですよ

──DEVOのマーク・マザーズバーにDEVOの曲を歌ってもらってポリがバックトラックを作るという「MECHA-MANIA BOY featuring Mark Mothersbaugh(DEVO)」も。

2011年7月、赤坂BLITZでのライブの様子。

はい。もううれしくて。2008年にDEVOの前座に呼んでもらって、対バンする夢を叶えて。しばらくは放心してたんですけど、次は「コラボしてえ」って欲が出て、オファーしたんです。「この曲をやりたい」って。ボリビアで出た7インチシングルのB面に入ってたという、すごいマニアな曲で、DEVO自身も全然ライブでやってないんですけど、初期と中期のDEVOのいいとこどりで僕はすごい好きだったんです。マークがダメって言ったらやらないつもりだったんですけど、OKが出て。で、データを送って歌を入れてもらって。DEVOのカバーだけど、トラックは今のPOLYSICSの感じそのままでやってみたんです。歌が返ってきたときには震えましたね、カッコよくて。「本物だあっ!」って叫んじゃいましたよ(笑)。

──夢が叶いましたね。こういう企画じゃないとできないもんね。

本当にうれしかったです。

──で「1.2.ダー! featuring 小島麻由美, ユウ(GO!GO!7188/チリヌルヲワカ)」では、小島麻由美さんとユウさん(ex. GO!GO!7188)が参加してますね。

これが今回のコラボで、一番始めに固まった曲ですね。最初は全部フミが歌って、それから、これは小島さんやユウちゃんがいいんじゃないかって、すぐイメージが固まって。ポリはガレージ的な曲調は多いんですけど、メロがちょっと昭和歌謡チックなものはないんで、そういう意味では良かったです。

──コラボ前提で作ったから、いろんな曲調が生まれたのかも。

そうかもしれないですね。

──最後の三柴理さんが参加した「783640 featuring 三柴理」は、えらいカッコいい曲でした。これも普段のポリにはない感じで。

ありがとうございます。これ「ナヤミムヨウ」って読むんですよ。

──ああ、なるほど。

ここまでアコースティックピアノをフィーチャーした曲はなかったですからね。三柴さんのプレイは初期の筋少(筋肉少女帯)とか大好きで。曲を作ったら、スタンダードな中にカオスを秘めたような、三柴さんが合うのではないかと。

ずっと「Buggie Technica」をやれるバンドでいたい

──コラボじゃないですが、「ありがTOISU!」という過去曲をマッシュアップしたような面白い曲も入ってます。

15周年記念の曲を作ろうってことになって、過去のシーケンサーやサンプラーのデータを集めたんです。初期はフロッピーディスクだったりMDだったりするんですけど、それを全部並べて。でもリミックスじゃなく新曲にしようと思ってたから、まず曲の骨組みを作って、パーツとして過去の曲のシーケンスデータをテンポを合わせて組み込んで。大変な作業でした。正解があるわけじゃなく全部感覚だから。あの曲のデータを使おうってことになったら、メンバー総出で探したりして、時間がかかりました。

──そして「Buggie Technica 2012」という、4度目となる新録バージョンも入ってますね。一番古い曲だし、ある意味でポリを象徴する楽曲です。

やっぱり思い入れのある曲ですね。さすがに4回目ともなるとどうかと思ったけど、そのときそのときのポリの良さが真空パックされる曲なんですよね。もちろん音の組み立て方もアレンジも、その時代によって変わるんですけど、そこで自分たちが出したい音がわかるなあって。ほんとにこの曲と共に突っ走った15年だったと感じます。ライブでもほぼコンスタントに演奏し続けてるし。いまだにやる瞬間、自分たちの体温が上がっていく感じがある。これ、最初に作った曲なんですよね。

──「処女作にそのアーティストの全てがある」ってよく言いますけどね。

2011年7月、赤坂BLITZでのライブの様子。

ねえ! それは感じましたねえ。やっぱりこの曲をずっとやれるようなバンドでいたいと思いますね。今後バンドの音楽性が変わる可能性もあるけど、「Buggie Technica」がやれなくなっちゃうような、そんなバンドになるのはちょっと想像つかないなあ。ずっとやっていきたい曲ですね。

──全9曲で28分と短いですけど、自由で面白いアイデアが満載で、すごく密度の濃いアルバムですね。

3人になってまたこう、やりたいアイデアがどんどん出始めてますね。レコーディングの仕方も今までとは違ってたし。しかも15周年なのに全然落ち着いてないというか。

──お祭り感満載ですね。

そうそう。いいハチャメチャ感があって、作っていて楽しかったです。

──じゃあ今後は20周年30周年、1500本2000本に向けて。

(笑)。先のことはわかんないですけど。3人で面白いと思えることをやり続けていきたいですね。これまでPOLYSICSではできなかったこともやっていきたい。ヤノがギター弾いたり、かなり自由度が増してるんですよね。そこは大事にしてやっていきたいです。

15周年記念アルバム 「15th P」2012年2月29日発売 / Ki/oon Records

  • 「15th P」初回限定盤ジャケット / Amazon.co.jpへ
  • 初回限定盤[CD+DVD] 3500円(税込)KSCL-1943/4
  • 「15th P」通常盤ジャケット / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] 2800円(税込)KSCL-1945
  • 「15th P」完全限定生産盤ジャケット
  • 完全限定生産盤[CD+DVD+ピンバッジ] 6300円(税込)KSCL-1940/2
CD収録曲
  1. Buggie Technica 2012
  2. ありがTOISU!
  3. Mix Juice featuring TAKUMA(10-FEET),橋本絵莉子(チャットモンチー)
  4. ムチとホース
  5. 明るい生活 featuring 徳井義実(チュートリアル)
  6. 友達ケチャ featuring 友達
  7. MECHA-MANIA BOY featuring Mark Mothersbaugh(DEVO)
  8. 1.2.ダー! featuring 小島麻由美,ユウ(GO!GO!7188/チリヌルヲワカ)
  9. 783640 featuring 三柴理
初回盤DVD 収録内容
  1. Rocket (Music Clips)
  2. Pretty Good (Music Clips)
  3. Moog is Love (Music Clips)
  4. Shout Aloud! (Music Clips)
  5. Young OH! OH! (Music Clips)
  6. How are you? (Music Clips)
  7. Let’s ダバダバ (Music Clips)
  8. カジャカジャグー (Music Clips)
POLYSICS(ぽりしっくす)

ハヤシ(G, Vo, Syn, Programming)、フミ(B, Syn, Vo)、ヤノ(Dr, Vo)からなるニューウェイブロックバンド。1997年、高校生だったハヤシを中心に結成。1999年にアルバム「1st P」をインディーズからリリースし、独自の音楽性と過激なライブパフォーマンスで人気を集める。2000年にキューンレコードからメジャーデビュー。2003年にはメジャー1stアルバム「NEU」をアメリカでリリースし、初の全米ツアーも実施するなど海外での活動も本格化させる。2010年3月には初の日本武道館公演を実施し、初期メンバーのカヨ(Syn, Vo, Vocoder)がこのライブを最後にバンドを卒業するが、約4カ月間の充電を経て復活。以降は3ピースバンドとして活動中。バンド結成15周年を迎える2012年に記念アルバム「15th P」をリリースするほか、ライブも精力的に行い2012年3月に通算1000公演を達成する。