ナタリー PowerPush - POLYSICS

祝!バンド結成15周年 1000本ライブの裏側に迫る

1999年のフジロックで道が開けた

──その後、とりわけ印象に残ってるライブというと?

やっぱりメジャーデビュー前のフジロックですね(1999年8月1日)。これは大きかった。UKプロジェクト(※現・所属事務所)とやるようになって、ミュージシャンになれたわけじゃないですか、夢の(笑)。動員も増えて。でもこのままじゃダメだなと。10周年のときのナタリーのインタビューでも言いましたけど、楽しくやれればいいというメンバーとギャップが出てきて、それでメンバーチェンジして、フミ(B, Syn, Vo)が入って(※1999年6月29日の渋谷ON AIR EASTがフミ加入後初ライブ)バンドらしい態勢が整った。でも全然うまくいかなくて。どうやれば自分のやりたい音楽を表現できるのか。ずっと試行錯誤してて、それがようやく形になって希望の光が見え始めたのがフジのライブだったんです。パン投げとか、ポリの飛び道具的な部分を楽しみにしてたお客さんとか、ニューウェイブのファンとか、パンクっぽいのを好きな人とか、いろんなファンがいたのを全部フラットにして、その場にいる人たち全員がすごく楽しんでくれて……。

──ポリのことを知らないお客さんが多い中で……。

そんな中でライブやったら、みんな踊って騒いでくれて。「これだ! これだよ!」って思った。これでいいんだよ、って。やってきたことは間違いじゃなかった、って思えたんです。この形を突き詰めていけば絶対いける、って。飛び道具じゃない、パンを投げるんじゃない、ちゃんとしたロックバンドとして面白いことができるんじゃないかって確信できたんです。

──そういう意味で今のPOLYSICSの原型が、そのフジのライブでできあがったと。

そうです。本当にそう。道が開けたというか、視界が開けたというか。もちろんまだ未熟だったけど、手応えはつかめましたね。……このとき朝の(ホテルの)食堂で小野島さんに会って「何観に来たの?」って言われましたよ(笑)。

──それは……ひどいこと言ってるな(笑)。

「いや、出るんですよ」「あ、そうだっけ」みたいな。

──その節は大変失礼しました(笑)。次のエポックメイキングなライブと言えば、2003年9月に行った初の海外ツアー「US TOUR ~NEU~」ですね。このときはどうだったんですか?

2006年1月、LIQUIDROOM ebisuでのライブの様子。

いやあ……とにかく……大変でしたね。特にロスのライブ(※ツアー初日 / 2003年9月17日)が大変だった。初めての海外ツアーで気合も超入って、「よーし!」って言ってバーッと出ていったら客1人で(笑)。それも日本のライブにしょっちゅう来てたやつが、ポリT着てポツンといるだけ(笑)。まあやってるうちお客さんも増えてきたんだけど、自分でやっていてギターの音が全然聞こえない。リハでエンジニアに言われて音を下げたんだけど、終わってお客さんに訊いてみたら「ギターは全然聞こえなかった」って。おまけにライブ中に突然「あと2曲で終われ」って言われて。無理矢理3曲やりましたけど。もう超疲れて、こんなんで大丈夫かなあって、すごい不安になったことを覚えてます。でもそのあとは一緒に回ったRX BANDITSってバンドの人たちがすごく良い人たちで。今でも仲が良いんですけど、彼らと回れたことはすごく良い経験になりましたね。

──このあと海外ツアーが激増しますね。アメリカ、ヨーロッパと、日本と同じぐらいの本数を回るようになった。やはり手応えを感じたんですか。

特にヤノ(Dr, Vo)が入ってから増えましたね。とにかく海外でやりたかったんですよ。特に2003~2004年ぐらいはライブをやってバンドを固めなきゃいけないって時期だったから。大変だったけど、すごく手応えがあったんです。ヤノが入って最初のUKツアー(2004年6~7月)で、お客の反応がすごく良くて、みんな「ピッキピピッピッピー!」とか「カジャカジャグー!」とか一緒に歌ってくれたんです。その頃、歌詞で悩んでた時期だったから。日本語のメッセージがないとダメなのかなって悩んでいて、バンドの状況としてはキツかった時期で。でも海外ではそんなこと関係なくみんな楽しんでくれてる。「これでいいじゃん。言葉じゃない部分でこの場にいる人たちを楽しませたい」と強く思うようになって。それが海外ツアーで得た大きな自信であり転機でしたね。

20回のリハより1回の本番が血肉になる

──そこからはぶれないで来ている感じですね。15年間大きなブランクもなくコンスタントにライブ1000本というのは大変な数字ですけど、これだけライブをやり続けた最大の理由ってなんですか?

2007年10月、アメリカ・ニューヨークHammerstein Ballroomでのライブの様子。

……もうね、そのときそのときのPOLYSICSの形を早く見たかったんです。初期もそうだし、カヨやスガイっちが入ってきた時期もそうだし、フミやイシマルくん(Dr)が入ってきたときやヤノが入ってきたときもそうだったけど、その時期その時期で自分がやりたいと思っているPOLYSICSを早く形にして、ライブの場で確認して、みんなに見せたかった。新曲をやったら、翌日はもっと完成度の高いすごい演奏をしてみせるぞって。特にヤノが入ってから、ライブを通じて自分たちのやりたいことを表したいというモードに突入してたから。

──ライブでこそ自分たちの理想が実現できると。

うん、POLYSICSがどういうバンドが一番伝わる場だと思います。

──ある程度バンドとしてステータスが固まってくると、少し間を空けて出し惜しみしたほうがいいとか考えてもよさそうだけど……。

いや、そんな余裕ないよ! いまだに自転車操業というか。この形(3人編成)になって初めてのライブが2010年8月でしょ。去年の秋ツアーでやっと余裕が出て、昔の曲をセットリストに組み込んだりするようになったけど、そこに行くまでにほんと……あのね、20回リハやるより1回本番のライブやったほうが全然血肉になるんですよ。もちろん練習できっちり作り込んでもいくんだけど、ある種のテクノアーティストみたいに、あらかじめ決まった流れをなぞっていくバンドじゃないから。

──単なる出たとこ勝負でやるバンドじゃないから。事前の仕込みもちゃんとやって、そこから大きく飛躍するのがポリのライブ。

両方ないとPOLYSICSにならないし。

──カヨちゃんが抜けたあとも、もう少し充電するかと思ったらわずか5カ月で復帰。

うん、そこでゆっくり次のPOLYSICSのビジョンを考える時間が必要じゃないかって思いましたよ。でも止まっちゃうと、1年2年先にどうなってるか不安だったから。常に動いてるのがPOLYSICSだと思うし。

──そんなこんなで、3月3日には1000本目のライブ。そしてその翌日は、1997年3月4日の初ライブからちょうど15年の節目のライブです。

うん、いろいろ趣向を考えてますよ。メモリアルな2DAYSだから。両方とも演出もメニューも変えようと思って。

──2日とも来たほうがいいよ、と。

あははは(笑)。まあね。1000本目のライブは今までの集大成的な内容で、15周年ライブは、これからのPOLYSICSを見てもらうような内容にしようと思ってます。

「15th P」はやるならとことん遊んじゃおうって

──そしてこのたび15周年記念盤「15th P」もリリースされました。遊び心一杯の楽しい内容で。

うんうん、まさに。15周年を記念して遊んじゃおうぜ、みたいな。

──普段のオリジナルアルバムを作るときとは違う意識で。

違いましたね。企画も元々スタッフからの提案で。やるならとことん遊んじゃえばいいし、普段自分たちではやれないことも、これを機にやっちゃおうと。

──ゲストボーカルを入れたのも、こんなにゲストを呼んだのも初めて。

初めてですね。今まではやろうとも思わなかった。梅津和時さん(Sax)にしてもピエール瀧さん(電気グルーヴ)にしても、曲ができあがった段階で必要だからお願いするって発想でしたから、最初からコラボ前提っていうのは初めて。

──例えば「Mix Juice featuring TAKUMA(10-FEET), 橋本絵莉子(チャットモンチー)」という曲では橋本絵莉子さん(チャットモンチー)とTAKUMAさん(10-FEET)が参加してますね。

2010年1月、アメリカ・ロサンゼルスROXYでのライブの様子。

これは今までのPOLYSICSにはない曲調じゃないですか。ちょっとヒップホップ調で。これを機にオレもラップやってみたいなって(笑)。それで作ったんですけど、この世界観をわかってくれて、コラボ慣れしてる人は誰がいいかなってことで、TAKUMAさんにお願いしようと。歌詞の意図や世界観を伝えて、音も送って、あとは全部おまかせで。バッチリでしたね。で、もう1人、今度は女性で、ヒップホップ方面じゃない異色コラボはねえかなと思って、直感でチャットとかいいんじゃないかと。えっちゃんは実際にスタジオに来てもらって。「好きにやってください」って言ったら、ああいうふうにメロをつけてくれて。

──ああ、あれは指定じゃなくて。

はい。彼女がやったんですよ。「どうですか?」っていうから「もうバッチリ!」って。2回歌ってもうOK。雑談込み10分ぐらいで。

──すごくキュートで、アルバムの中でも印象的なトラックですね。今までのポリにない、ふわっとした感じが。そして「明るい生活 featuring 徳井義実(チュートリアル)」では、チュートリアルの徳井さんが参加。

はい、これも曲ができた時点で、もう1人「どうでもいい話」をしてくれる人に参加してもらいたいってことになって。それで、チュートリアルは出囃子に「IT’S UP TO YOU」を使ってくれてるし、ポリT着てるのを見たこともあって、お願いしようかと。その場で喋る内容を考えてくれて、歌入れも2回で終了。お題どおりばっちりで。やる前はうまくいくか不安でしたけど、さすが喋りのプロでしたね。

15周年記念アルバム 「15th P」2012年2月29日発売 / Ki/oon Records

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  • 初回限定盤[CD+DVD] 3500円(税込)KSCL-1943/4
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CD収録曲
  1. Buggie Technica 2012
  2. ありがTOISU!
  3. Mix Juice featuring TAKUMA(10-FEET),橋本絵莉子(チャットモンチー)
  4. ムチとホース
  5. 明るい生活 featuring 徳井義実(チュートリアル)
  6. 友達ケチャ featuring 友達
  7. MECHA-MANIA BOY featuring Mark Mothersbaugh(DEVO)
  8. 1.2.ダー! featuring 小島麻由美,ユウ(GO!GO!7188/チリヌルヲワカ)
  9. 783640 featuring 三柴理
初回盤DVD 収録内容
  1. Rocket (Music Clips)
  2. Pretty Good (Music Clips)
  3. Moog is Love (Music Clips)
  4. Shout Aloud! (Music Clips)
  5. Young OH! OH! (Music Clips)
  6. How are you? (Music Clips)
  7. Let’s ダバダバ (Music Clips)
  8. カジャカジャグー (Music Clips)
POLYSICS(ぽりしっくす)

ハヤシ(G, Vo, Syn, Programming)、フミ(B, Syn, Vo)、ヤノ(Dr, Vo)からなるニューウェイブロックバンド。1997年、高校生だったハヤシを中心に結成。1999年にアルバム「1st P」をインディーズからリリースし、独自の音楽性と過激なライブパフォーマンスで人気を集める。2000年にキューンレコードからメジャーデビュー。2003年にはメジャー1stアルバム「NEU」をアメリカでリリースし、初の全米ツアーも実施するなど海外での活動も本格化させる。2010年3月には初の日本武道館公演を実施し、初期メンバーのカヨ(Syn, Vo, Vocoder)がこのライブを最後にバンドを卒業するが、約4カ月間の充電を経て復活。以降は3ピースバンドとして活動中。バンド結成15周年を迎える2012年に記念アルバム「15th P」をリリースするほか、ライブも精力的に行い2012年3月に通算1000公演を達成する。