2015年に地元・福岡で本格的に活動を開始したポルカドットスティングレイは、2016年3月に代表曲「テレキャスター・ストライプ」のミュージックビデオをYouTubeにて発表。口コミで広がり公開から半年で100万回再生を突破したこの楽曲を発火点に、バンドは本格的なブレイクへの道をたどってきた。

その背景には、音楽はもちろんビジュアルや映像、ライブの演出、SNSでファンを巻き込む企画など、さまざまな方面でアイデアを凝らすバンドの戦略性があった。

キャッチコピーは「何かを企む、超常ハイカラギターロックバンド」。全曲の作詞作曲を手がける雫（Vo, G）は、ジャケットのイラストやMVのシナリオ構成、グッズのデザインも自ら担当する。ゲームディレクターも務める彼女のセルフプロデュース能力とクリエイティビティが人気の拡大をあと押ししてきた。

この記事ではそんな観点からアルバムに至る歩みを振り返っていきたい。

ポルカドットスティングレイが初のワンマンライブ「ポルカドットスティングレイpresents『ポルフェス02 教祖爆誕ワンマン』」を東京・red clothにて行ったのは2016年10月のこと。すでに早耳のロックファンの中では注目の存在だったため、チケットは争奪戦となった。

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このライブでバンドからファンへのプレゼントとして配布されていたのが黒猫のキャラクター・ビビのお面だった。雫の愛猫をモデルにしたビビは、その後も公式サイトやグッズなどでも広く使われバンドのアイコン化。アルバム「全知全能」の2種類の初回生産限定盤“はじめてのぼうけんパック”“いつでもいっしょパック”でも、それぞれアニメーションDVDやTシャツでフィーチャーされている。

バンドは2016年11月にタワーレコード限定で、初の全国流通盤「骨抜きE.P.」をリリース。発売に先駆けて収録曲「人魚」のMVも公開された。雫がシナリオ、加藤マニが監督を務めたこのMVは眼科やバスタブ、プールの中などのシチュエーションで4人が演奏をするという内容。「テレキャスター・ストライプ」もそうだが、サムネイル画像が目を引くのも彼らのMVの大きな特徴だ。

その頃からテレビやラジオ、雑誌などのメディアから「次のブレイク候補」として取り上げられることも増えてくる。AndroidのテレビCM「見せたい写真、パッと出る」編へ出演し、BGMとして井上陽水「夢の中へ」をカバーしたことも話題を呼んだ。

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2017年2月、バンドは全公演チケットが即日ソールドアウトとなった初のワンマンツアー「ポルカドットスティングレイ 2017 TOUR 骨抜き」を開催。筆者はその最終日である2月19日の東京・WWW公演を観た。そこで強く印象に残ったのは、バンドとしての確かな演奏力とセンスだった。

MVや音源では雫のキュートな存在感に目が行きがちだが、ステージではエジマハルシ（G）、ウエムラユウキ（B）、ミツヤスカズマ（Dr）も含めて四者四様の立ち振る舞いを見せる。特にエジマの色気あるギターフレーズや技巧派のソロはバンドにとっての大きな魅力となっているのを感じた。

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このライブで告知されたのが、4月にリリースされた全国流通盤「大正義」の発売だ。ライブ終了後には「エレクトリック・パブリック」のMVが公開され、「#正義と踊れ」というハッシュタグと共に多数のファンがツイートした。

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さらに、「大正義」を引っさげて行われた全国ツアー「ポルカドットスティングレイ 2017 TOUR 大正義『ポルフェス11“#正義と踊れ ワンマン”』」のファイナル終了後に、バンドは収録曲「シンクロニシカ」のMVを公開。ホラー脱出ゲームをテーマにしたこの曲のMVは「エレクトリック・パブリック」と同じくA4Aの東市篤憲、かとうみさと両氏がディレクション、雫がシナリオを担当している。こちらは「#おばけがみてる」のハッシュタグと共に多くのファンがツイートし、Twitterのトレンドワード入り、YouTubeの急上昇ランキングにランクインするなど大きな反響を呼んだ。

このように、ライブの場で真っ先にファンに情報を伝え、それを広めてバズらせる巧みな仕掛けを作るのも、彼らの戦略と言えるだろう。

2017年7月13日、バンドは東京・東京キネマ倶楽部にてツアーの追加公演を開催。そのアンコールにてUNIVERSAL SIGMAよりメジャーデビューすることを発表した。

ライブ当日に上映された映像も、シナリオを雫が、ディレクションを東市氏とかとう氏が手がけたもの。これまでに発表したMVの世界を巡るストーリー仕立ての映像が終わったあと、雫は映像の中で着用していたウエディングドレスを実際に身にまとってステージに登場。こうした虚実入り交じる演出も彼らならではのものだ。

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こうしてポルカドットスティングレイの歩みを振り返ってきて改めて感じるのは、彼らが情報公開やMV発表のタイミングまで含めて、ある種のトータルなクリエイティブデザインとして音楽活動を行っているバンドだということ。雫の誕生日である10月15日に公開されたアルバムのリード曲「レム」のMVもそれを象徴している。

動画のサムネイル画像ではボブからショートヘアにスタイルチェンジした雫が水色のドライヤーを握ってにっこりと微笑んでいる。そのビジュアルイメージは雫自身が描いたアルバムのジャケットイラスト、アーティスト写真とも連動している。

MVでは砂丘を舞台にドライヤーやスリムな扇風機を握ったメンバーたちが戦うカラフルでファンタジックな映像が展開される。こちらは「#全知全能」というハッシュタグと共に広まっている。

「レム」のMVはサントリーの商品「ヨーグリーナ＆サントリー天然水」とのコラボレーションで制作されている。一方、PlayStation4のWeb CM「僕らの真ん中にPS4篇」のタイアップソングに使用されているのが、やはりアルバム収録曲の新曲「ショートショート」だ。疾走感とフレッシュさに満ちたギターロックの曲調はアルバムの中でもとりわけ印象に残る。

2018年2～3月にはキャリア史上最大規模のツアーを開催することも発表されている。アルバムのリリース後からツアーにかけても、さまざまなアイデアが用意されているだろう。その企みに乗っかり、共有していくのもポルカドットスティングレイというバンドの楽しみ方の1つなのである。