ナタリー PowerPush - →Pia-no-jaC←対談

「EAT A CLASSIC 4」リリース記念 バニビリサとピアノ対談&競演実現

いい意味で聴き手の期待を裏切りたい

──実際のアルバム制作過程についても伺いたいんですが、クラシックの名曲を→Pia-no-jaC←流に組み立て直す際、どうやってアレンジを広げていくんですか?

HAYATO やっぱり面白おかしく、なおかつ誰もやってないアレンジが目標で。まず誰もが知ってるクラシックのメロディを先にコピーして、「これをどうやって変化させたら面白いだろう? ラテンにしたら面白いかな? ロックンロールにしたら面白いかな?」っていろいろ試してみるんです。もちろん試していく中でエラーもたくさんあるんですけど、自分たちの中で一番ピシっとハマるアレンジが絶対に出てくるんですよ。マイナーキーの曲をマイナーのままでずっと演奏して、何か違うなと思ってメジャーにしたらそれがハマったとか、逆にそのメジャーキーの曲をすごく暗くしてみたとか、いろんなパターンで試してみて。そこはもうプロデューサーと一緒にやり取りしながら、自分たちが楽しみつついい意味で聴き手の期待を裏切れるように毎回考えてやってます。

──過去の楽曲の中にも、原曲のイメージがガラッと変わって「これ、オリジナル曲でしょ?」と言えるようになった曲もありましたし。

HAYATO そうですね。ビバルディの「春」とか、全然春っぽくないっていう噂が(笑)。

リサ

リサ 冬のほうにいっちゃった?

HAYATO 冬でもないし夏でもないし。すごく爽やかで優しい曲なのに、メタルになってしまって。

リサ メタル(笑)。

HIRO そうそう。あれは「春」じゃなくて「HELL」だって言われました。

リサ あははは(笑)。HELLだ!

HAYATO ……HIROさん、それ言いたかったんですか?

HIRO 言いたかった。どこのタイミングで挟もうかなと(笑)。

HAYATO もう10回は言ってるよな、それ。

リサ 初出しじゃないんだ(笑)。

──「結婚行進曲」もよりおめでたい感じのアレンジに生まれ変わってましたね。

HIRO 新郎新婦が踊ってるような。

HAYATO 結婚式でかけてもらいたいなっていう思いを込めて、ロックンロール調に仕上げました。実際に使ってくれた人もいるみたいで、すっごいダンスしながら新郎新婦が入場したんじゃないかと(笑)。ベートーベンの「運命」も本当はちょっと暗い曲だけど、「やっぱり“運命”はやっぱ明るいほうがいいだろう」っていうことでボサノバ調にしてみたり。そうやって自分たちなりのメッセージを込めてアレンジしてるんです。

親しき仲にもバトルあり

──「EAT A CLASSIC 4」の中で、特にアレンジに苦労した曲はありますか?

HAYATO 今回は6曲入ってるんですけど、どの曲もすごく濃いんですよ。なので苦労したという意味では全曲なんですけど、一番時間をかけたのは「禿山の一夜」かな。これはセッションにセッションを重ねてっていう感じで。実は前回のツアーで即興コーナーを取り入れたんですけど、それはお客さんからいただいたお題に沿って即興演奏をするものなんです。追い込まれた状況の中から1曲作り上げていくんですけど、その即興感を「EAT A CLASSIC 4」にも活かしたいなと思って。「禿山の一夜」のメロディを1カ所使って、何百回とジャムセッションを繰り返しました。そこで録音したものをあとで聴いて、「ここは面白い」というパートを取り出して、そこからまた広げていって。この曲はライブでどんどん変化していくかもしれませんね。もちろんライブに行く人はCDを聴いてからのほうが、ライブでどう変化したのかがより楽しめると思いますよ。

HAYATO(Piano)

──実際に「禿山の一夜」はかなり緊張感のある曲に仕上がってますね。

HAYATO そうですね、そこは2人のバトル感を出したかったので。親しき仲にもバトルありというか。

──なるほど。どうですか、バニラビーンズの場合は2人の関係性っていうのは。

リサ 親しき仲にもバトル、ないですね。

HAYATOHIRO あはははは(笑)。

リサ ないです。本当に全然違う2人なんで。デコとボコみたいに補い合っていて。

HAYATO ぴったりハマるんだ。

HIRO 最強ですね。

最後に客席が「たこたこ」って大合唱になって

リサ ツアーの即興コーナーではどんなお題が出たんですか?

HIRO いろいろありましたね。「アラサーの北京ダック」とか。

HAYATO 「宮殿」とかイメージしやすいのもあるんですけど、食べもの系は大変でしたね。「たこ飯」とか。

リサ 「たこ飯」の曲ですか?(笑)

HIRO 「たこ飯」を曲にしようって言われても「え?」って思いますし。

HAYATO ツアーで各地を回るんでそのご当地ものが多かったり、でもそこを予想してライブに臨むと、全然違うお題が出てきたり。「本当に無理です」とは絶対に言えないし、何かしら弾きながらメロディを作っていく感じでした。

リサ その「たこ飯」の曲はどうやって作っていったんですか?

HAYATO そのときは「宮殿」と「たこ飯」がセットやったんですよ。だから「宮殿のごはんがたこ飯なのかな」って想像して(笑)。宮殿の雰囲気を出しつつ、ちょっとたこ飯の匂いがしてきたぞみたいな演奏をしました(笑)。で、最後に客席が「たこたこ」って大合唱になって。

HIRO(Cajon)

HIRO 「Say! たこたこ」ってね。

リサ 面白い(笑)。

──ピアノはメロディでいろんな表現ができると思いますが、カホンの場合はその表現の幅をどうやって広げていくんですか?

HIRO はじめのうちは小物をたくさん用意しましたね。とりあえずどんなお題が来てもいいように、おもちゃでもなんでもいいから準備をしようと思って。たまにね、ムチャ振りが来るんですよ。なんだったかな、「熊」っていうお題が来たんですけど、俺は「鮭を食べる熊」をイメージしてたんです。でもHAYATOの中では「ハチミツが食べたい熊」で「『俺、実はハチミツが食べたいんだけど、仕方なくて鮭を食べてるんだ』みたいなことを、セリフで言って」って(笑)。

リサ あはははは(笑)。

HIRO 「セリフ! セリフ!」「セリフ?」「ハチミツ食べたい、ハチミツ食べたい!」っていうのが目線で伝わってきて、そこで「ハチミツが食べたいなあ」っていうことになったんですけど。

リサ インストユニットの枠を超えてますね(笑)。

HAYATO そこは自由ですよね。熊っていうと鮭のイメージがありますけど、別にプーさんでもいいじゃないですか。そのときパッと出てきたものがたまたまそうやったんで(笑)。

→Pia-no-jaC← ニューアルバム「EAT A CLASSIC 4」 / 2012年12月5日発売 / Peaceful Records
ニューアルバム「EAT A CLASSIC 4」初回限定盤[CD+DVD] 3360円 / COZP-735/6
初回限定盤 [CD+DVD] 2300円 / XQIJ-91005
通常盤 [CD] 1800円 / XQIJ-1008
CD収録曲
  1. 交響詩 禿山の一夜 / ムソルグスキー
  2. 組曲「惑星」から木星 / ホルスト
  3. ハンガリー舞曲 第5番 / ブラームス
  4. 2つのアラベスク 第1番 / ドビュッシー
  5. エリーゼのために / ベートーヴェン
  6. ジムノペディ 第1番 / エリック・サティ
初回限定盤DVD収録内容
  1. エリーゼのために(Music Video)
  2. ジムノペディ 第1番(Music Video)
バニラビーンズ ニューアルバム「バニラビーンズ III」 / 2012年11月7日発売 / T-Palette Records
ニューアルバム「バニラビーンズ III」初回限定盤 [CD] / 2000円 / TPRC-0024
ニューアルバム「バニラビーンズ III」通常盤 [CD] / 2500円 / TPRC-0025
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HAYATO(Piano)、HIRO(Cajon)の2人で構成されるインストゥルメンタルユニット。名前の由来は左から読むとピアノ、右から読むとカホンとなる。鍵盤と打楽器という至ってシンプルな編成ながら、重厚かつ多彩な音を鳴らすのが特徴。その独自の音楽性が各方面から注目を受け、ディズニーやスクウェア・エニックス、ショパンなど多数のトリビュートアルバムに楽曲提供。2010年発売の嵐のアルバム「僕の見ている風景」では、二宮和也から熱いオファーを受けゲストミュージシャンとして参加した。さらに宝塚歌劇団への楽曲提供、ラジオのジングル制作など幅広い活動を展開。ライブではオリジナル楽曲やクラシックなどのカバーを武器に、迫力満点のパフォーマンスを披露し、国内外の幅広い層から絶大な支持を受けている。2012年3月にオリジナルアルバム「暁」、7月には葉加瀬太郎とのコラボレーションアルバム「BATTLE NOTES」を発表。同年12月にクラシックのカバーアルバム「EAT A CLASSIC 4」をリリースした。

バニラビーンズ

バニラビーンズ

庶民派でアイドル研究が趣味のレナ(キノコ頭担当)と、日本で正月を過ごしたことがないセレブのリサ(外はね頭担当)からなる実験型次世代アイドルユニット。北欧の風に乗ってやってきたという設定で2007年に「U ♡ Me」でデビューし、翌2008年に初期メンバー脱退後第2期メンバーとしてリサが加入。現在のメンバー構成となる。スウェディッシュポップを意識したサウンドとレトロなビジュアルで渋谷系ファンなどから高評価を得る一方で、近年では自由奔放なトークや「ガラス張りトラック生活」などの風変わりな活動でも注目を集めている。2010年にロート製薬「メンソレータム リフレア D&D」のCMに出演し、CMソングとして「Def & Def」を提供。同年9月に初のベストアルバム「VaniBest」をリリースした。2011年にはタワーレコードのアイドル専門レーベル「T-Palette Records」にレンタル移籍。2012年11月にニューアルバム「バニラビーンズ III」をリリースした。