ナタリー PowerPush - →Pia-no-jaC←

第2章アルバム「暁」インタビュー&全都道府県ツアー回想

→Pia-no-jaC←がニューアルバム「暁」を3月7日にリリースする。昨年9月に初のベストアルバム「First Best」を発表し、それまでの活動に一区切りをつけた彼ら。第2章の幕開けを飾る新作「暁」は、昨年後半に行われた全47都道府県ツアー「EAT A JAPAN TOUR 2011」で先行披露された「PEACE」や「Paradiso」といった楽曲、ヴィレッジヴァンガード盤のみに収録されるHIRO(Cajon)のカホンソロ「眞」など、バラエティに富んだ内容となっている。

今回のインタビューではHAYATO(Piano)とHIROが新作に込めた思いと、前回のPower Pushで披露したスタジオセッションから完成した「Paradiso」について訊いている。そして後半では、昨年9月から12月末まで行った初の全47都道府県ツアー「EAT A JAPAN TOUR 2011」を振り返るトークを展開。自ら用意した日本地図とダーツの矢を使い、各地で体験した面白エピソードを明かしてくれた。

取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 中西求

音楽の力でみんなに笑顔が届けられる作品「暁」

──「暁」は、オリジナルアルバムとしては昨年3月の「EAT A CLASSIC 3」以来1年ぶりなんですよね。今作は具体的にどういった内容にしようと考えてましたか?

インタビュー風景

HAYATO(Piano) そうですね。この1年はツアーが多かったけど、僕らとしては通常運転っていうか、ライブの合間に曲作りをしてたんですよ。

──「暁」の制作準備は昨年9月に行った前回のインタビューの頃から始めてたんでしょうか。

HAYATO あのときスタジオでちょっと披露した曲も入ってますしね。あの頃もまだ曲作りの最中だったんです。今回のアルバムはベスト盤の後ということで、→Pia-no-jaC←にとっても第2章の幕開けにふさわしい1枚にしようと。昨年3月に「EAT A CLASSIC 3」をリリースした後に東日本大震災が起こって、東北でのインストアライブが全部中止になってしまって。音楽をやりたいっていう気持ちはあったんですけどそういう場合ではなく、被災地のために何かしようと思うものの日々状況が変わっていって、結局何もできなかったんですよ。で、スタッフも含めて全員で話し合った結果、やっぱり僕たちには音楽しかないし、音楽の力でみんなに笑顔が届けられると信じているので、そういう思いの詰まった作品にしようと決めたんです。

──震災をきっかけに、改めて自分たちの原点を見つめ直すことができたわけですね。

HAYATO はい。今作のタイトル「暁」は、→Pia-no-jaC←の第2章の夜明けを意味するものでもありつつ、震災で落ち込んでる被災地の方や元気のない日本人に向けて「必ず夜明けは来るんだよ」っていうことを伝えたくてこのタイトルにしたんです。ハッピーな曲ばかりじゃなくて、闘志をかき立てられる曲や、下を向いている人の背中を押す曲も入っていて、聴いてると「がんばらなアカン」っていう気持ちになって、最終的に「ピース」な気持ちになってもらいたいって思いで作りました。

──文字どおり「PEACE」というタイトルの楽曲もアルバムの最後に収められています。この曲は昨年の47都道府県ツアーで先行披露されてましたよね。

HAYATO はい。この曲は47都道府県の全会場で、アンコールに演奏してました。新曲なので初めてライブに来た人はもちろんのこと、何度も来てくれてる人もこのツアーで初めて聴いたわけですが、曲が終わるといつもステージから見えたのがお客さんのピースフルな笑顔なんです。それで、会場の大小は関係なく、この曲をどんどん演奏し続けていったら、本当に日本中がピースになるんじゃないかなと。そういう思いを込めて、これからも演奏していきたいです。

HIRO(Cajon) 震災に限ったことじゃないですけど、特に最近の日本は不況だとかいろんなことで元気がないなと思っていて。日本各地に大変な思いをしてる人、落ち込んでいる人がたくさんいると思うんですけど、そういう人たちを突き動かすきっかけを作れたらいいなと思ってます。

先の読めない展開をたくさん詰め込みたいと考えていた

──アルバムを聴いたとき、確かにこれまでの→Pia-no-jaC←サウンドを一歩前進させた、「新たなスタート」を強く感じさせる内容だと思いました。具体的にはよりプログレッシブロック的で、複雑な展開を持つ長い曲が増えた印象があります。

HAYATO 今回はどの曲もすごく濃いんですよ。確かに、最初の段階で「次に何が起こるんだろう?」っていう展開をたくさん詰め込んでいきたいって話はしてました。だからプログレッシブロックっぽく聴こえたのかもしれないですね。

──前回のインタビューの際に行ったセッションから生まれた「Paradiso」も、無事完成版が収録されてますね。あのときのピアノのフレーズが、こうなるんだっていう新たな驚きもありました。

インタビュー風景

HAYATO 正直僕らは「ちゃんと曲として仕上げなきゃ」って、ちょっとプレッシャーでしたけどね。あそこでセッションしたのに、曲になれへんかったらどうしようみたいな(笑)。あのセッションのとき以上に樫原さん(※→Pia-no-jaC←のサウンドプロデューサー樫原伸彦)からのムチャ振りもありましたし、僕らもとにかくいろんな展開を増やしたいっていうイメージもあったので、どんどん作業を進めてやっと完成した感じです。

──「あの日に聴かせてもらったフレーズの断片が、ここに使われてるのか」と思うと、改めて曲作りって面白いなと思いました。

HIRO こうやってステップアップを重ねているっていう裏側を見せることができたという意味では、前回のインタビューは本当に貴重な機会でしたね。

HAYATO 今までそんな裏側を見せたこと、1回もなかったですし。よく「どうやって曲を作ってるんですか?」って訊かれるんですけど、どう答えればいいのかわからなくて。楽譜上で曲を作るんじゃなくて、毎回セッションしながら曲がどんどんできあがっていくってことを、「Paradiso」でひとつ形にできたと思うし、僕らとしてもホッとしてます。

ニューアルバム「暁」 / 2012年3月7日発売 / Peaceful Records

  • 初回限定盤 [CD+DVD] 2500円(税込) / XQIJ-91003 / Amazon.co.jp
  • 通常盤 [CD] 2000円(税込) / XQIJ-1007 / Amazon.co.jp
  • ヴィレッジヴァンガード盤 [CD+DVD] 2500円(税込) / XQIJ-91004
CD収録曲
  1. Paradiso
  2. Fairy Dolce
  3. Fantasista
  4. 雪月花
  5. 獅子奮迅
  6. PEACE
  7. [ヴィレッジヴァンガード盤のみ収録]
DVD収録内容
  • 「Paradiso」ビデオクリップ
  • 「雪月花」ビデオクリップ
→Pia-no-jaC←(ぴあのじゃっく)

HAYATO(Piano)、HIRO(Cajon)の2人で構成されるインストゥルメンタルユニット。名前の由来は左から読むとピアノ、右から読むとカホンとなる。鍵盤と打楽器という至ってシンプルな編成ながら、重厚かつ多彩な音を鳴らすのが特徴。デビューから3年でベストアルバム含めアルバム8枚をリリースし、累計は50万枚を突破。その独自の音楽性が各方面から注目を受け、ディズニーやスクウェア・エニックス、ショパンなど多数のトリビュートアルバムに楽曲提供。2010年発売の嵐のアルバム「僕の見ている風景」では、二宮和也から熱いオファーを受けゲストミュージシャンとして参加した。さらに宝塚歌劇団への楽曲提供、ラジオのジングル制作など幅広い活動を展開。ライブではオリジナル楽曲やクラシックなどのカバーを武器に、迫力満点のパフォーマンスを披露。国内外の幅広い層から絶大な支持を受けている。2012年3月7日にはニューアルバム「暁」をリリース。本作を引っさげ、4月より全国ツアー「→Pia-no-jaC← First Light Tour 2012」を開催する。