ナタリー PowerPush - →Pia-no-jaC←

ピアノ×カホンが生み出す新世界 恒例クラシックカバー集第3弾完成

→Pia-no-jaC←のニューアルバム「EAT A CLASSIC 3」が3月2日にリリースされる。本作は、クラシックの名曲カバーアルバム「EAT A CLASSIC」のシリーズ第3弾。シューズブランド「ピーエフフライヤーズ」のCMソングとしてもおなじみの「ジ・エンターテイナー」をはじめ、「熊蜂の飛行」「結婚行進曲」「威風堂々」など誰もが一度は耳にしたことがある楽曲が、独自のテイストで表現されている。

今回ナタリーではメンバーのHAYATO(Piano)とHIRO(Cajon)にインタビューを実施。2人の出会いからバンド結成の経緯、ユニットのスタンス、そして「EAT A CLASSIC」を始めたきっかけや最新作の魅力などをたっぷり語ってもらった。

取材・文/西廣智一 撮影/中西求

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インストユニットをするなんてまったく考えてなかった

──→Pia-no-jaC←は2005年4月結成ですが、そもそもお2人が出会ったのはいつ頃だったんですか?

インタビュー風景

HIRO さらにその前のことで、俺はそのときシンガーのバックでパーカッションを叩いていて、同じようにHAYATOも全然別のアーティストのバックでピアノを弾いてたんです。で、あるときにレコーディングで一緒になって、そこからいろんな縁があってライブハウスやいろんなところで会うことが増えて。いろいろ話すうちに、アーティストをサポートするユニットとして→Pia-no-jaC←を作ろうっていうことになったんです。

──あ、じゃあ今みたいなインストユニットをやろうというわけじゃなかったんですか?

HIRO そうです。で、2人揃ってリハーサルやライブをすると、本当に楽しくてシンガーそっちのけでいろんなことしてしまうんですよ。ライブ中に目が合ったらブレイクがくるのがわかってバーンって合わすんですけど、ほかの人はついていけなくて慌てて止まったりして。そんなことをやってるうちに、どんどんサポートの依頼が来なくなって(笑)。

──あははは(笑)。

HAYATO それで、だったらいっそのこと2人だけでやっちゃおうよ、って思ったのが今の→Pia-no-jaC←がスタートするきっかけなんです。

HIRO 元々インストユニットをするなんてまったく考えてなかったし。

HAYATO HIROは最初「俺はバンドを組む気がない。ずっとサポートで生きていく」って感じだったけど、いきなり「一緒に組まへんか」って言ったんでびっくりしたんです。

──例えば、ボーカルを加えたスタイルでバンドをやろうとは考えなかった?

HIRO サポートのときにいろんなシンガーと一緒にやったけどHAYATOほどフィーリングが合う人がいなくて。それだったら2人でインストをやってるほうが面白いと思ったんです。

HAYATO インストユニットを始めてみて、その面白さや難しさに気付いて。俺らが伝えたい景色や思いを、ピアノとカホンのみでどうやって伝えるかを考えるのが楽しいんですよ。

──2人組って最小編成で、しかもリズム楽器のカホンとメロディを奏でるピアノのみで、制限も多いと思うんですが?

HIRO 俺らは逆に、制限がないと思ってたんですよ。それはお互いに相手を信頼しているからそう思えるわけで、好き勝手にやっているように見えるけど実際にはピタッと息が合ってる。その感覚がすごく新鮮でしたね。もちろん今もですけど。

HAYATO リズム楽器と音階楽器でまったく別ものなので、メチャクチャなことをしない限りお互い何をしても邪魔になることはないですし。

10日間のツアーに行くのに1000円しかなかった

──今の→Pia-no-jaC←がスタートしたとき、音楽性はどういう方向にしようと考えてましたか?

HAYATO とにかく2人でできることを最大限に生かして、今までに誰もやってなかった音楽をやろうってことかな。結成した当時はピアノとカホンって組み合わせってそんなに珍しいと思ってなかったんですけど、周りからすると違ったようで。しかもピアノとカホンだけでアグレッシブな曲を演奏するのも新しかったし。

HIRO 当時はひたすらがむしゃらで、ライブができる場所があったらどこでもやってましたね。

インタビュー風景

HAYATO 1カ月に23本くらいやってました。1日に5カ所でやったこともあるし。

──そうか、普通のバンドと比べれば移動も楽ですもんね。

HAYATO そうなんですよ。カホンは生で鳴るし、ピアノは電子ピアノでOKだし。僕ら、ストリートでの設営と撤収は早いですよ(笑)。

HIRO 1分かからずに音出しできて、3分かからずに片付けできる。2~3曲やったら撤収して次の場所へ移動して。

HAYATO いろんなところでストリートライブをやってきたので、そういうのだけが身に付きました(笑)。一度、無茶なツアーをしたことがあって。

HIRO その頃は大阪に住んでたんですけど、九州まで行って、四国を経由して、大阪に戻る10日間ぐらいのツアーで。ノープランで行って、そのときにたどり着いたところでストリートライブをやるか、現地でいろんな人に「演奏できる場所ないですかね?」って聞いてバーに飛び入りでライブしてたんです。その頃はお互いバイトする暇もなかったので、本当に金がなくて。

HAYATO 10日間のツアーに行くのに、1000円しかなかったし。

HIRO 俺も2~3万ぐらいで。

HAYATO 神戸から出発したんですけど、10日後の神戸でのライブを決めておいたんです。10日後の18:00までに戻れなければ本番に間に合わないっていう。で、ライブをしてCDが売れたら次の場所に行こうって。

HIRO ほとんど駐車場代とかフェリー代とかの交通費。これがけっこうバカにならなくて。

HAYATO 高速にも乗れなくてずっと一般道。しかもHIRO、免許持ってないんですよ!(笑)

HIRO 9日目にフェリーに乗って四国に着いた時点で、2人合わせて残金2000円。このままだと明石海峡も渡れないってことで、ストリートで1日中ライブして。

HAYATO それこそ3曲やってCD売って、3曲やってCD売ってを繰り返したら、無事帰れました(笑)。そういう経験で、たくましくなりましたね。

ミニアルバム「EAT A CLASSIC 3」 / 2011年3月2日発売 [CD] 1800円(税込) / ピースプロダクション / XQIJ-1004

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CD収録曲
  1. スコット・ジョプリン / ジ・エンターテイナー
  2. リムスキー=コルサコフ / 熊蜂の飛行
  3. メンデルスゾーン / 結婚行進曲
  4. ワーグナー / ワルキューレの騎行
  5. エルガー / 威風堂々
  6. ショパン / 幻想即興曲
→Pia-no-jaC←(ぴあのじゃっく)

アーティスト写真

ピアノのHAYATO、カホンのHIROにより2005年4月に結成されたインストゥルメンタルユニット。鍵盤を中心にしたシンプルな楽器編成ながら、ジャズともクラシックとも異なるエネルギッシュでオリエンタルなサウンドが、リスナーに強烈なインパクトを与えている。2008年の1stアルバム「First Contact」を皮切りに2年間で5枚のアルバムを立て続けに発表し、合計で40万枚のセールスを突破。国内外のフェス出演を含む、年間250本以上のライブを精力的に敢行している。2010年夏にはDAISHI DANCEとのコラボアルバム「PIANO project.」をリリース。さらに、同年8月発売の嵐のアルバム「僕の見ている風景」では、二宮和也から熱いオファーを受けゲストミュージシャンとして参加した。2011年1月からは、CMクリエイター箭内道彦が手掛けるシューズブランド「ピーエフフライヤーズ」のCMソングに、アルバム「EAT A CLASSIC 3」の収録曲「ジ・エンターテイナー」を提供。現在、着実に知名度を高めているインストユニットのひとつだ。なおユニット名は、左からピアノ、右からカホンと読むことができる。