三月のパンタシア「四角運命 / アイビーダンス」発売記念|みあ×三原康司(フレデリック)対談+みあ単独インタビューの2本立て特集 (4/4)

“君”がいるから、転んでも立ち上がって走ることができる

──カップリングの「ユアソング」は、シングルの初回限定盤に封入される書き下ろし小説「多分、私たちひとりじゃない」を原案に作られた楽曲です。銀座の商業施設「GINZA SIX」のWeb CMソングに使用されていて、小説とCMの両方にリンクした楽曲になっていますね。

これもデモをずっと温めていた曲で。季節としては新生活が始まって一歩目を踏み出す4月をイメージしています。4月は期待にあふれた毎日が始まると同時に、心細さや未来に対する一抹の不安もある時期だと思うんです。自分の経験を振り返っても、やっぱり新しいことにチャレンジするときはどうしても不安が付いてくるものだなと。そういった不安や寂しさに寄り添えるような楽曲にしたいという思いがまず先にあって、その思いを小説に落とし込んで、さらにそこから歌詞を書いていきました。

──「ピンクレモネード」(2018年11月発表のシングル表題曲)と「ランデヴー」(2020年3月配信の楽曲)の作曲を手がけた、やいりさんの提供曲です。やいりさんらしい、温かみのあるメロディと柔らかいサウンドが印象的でした。

サビのメロディが、さわやかな風を切って走り抜けていく姿を連想させるなと感じて。この楽曲の主人公が逆風の中を走り抜けているような情景が頭の中に浮かんだんです。アレンジによって、よりさわやかで軽やかな楽曲になったなと思います。

──小説、CMとリンクした楽曲でありつつ、三月のパンタシアとリスナーの方々の物語にも重なる曲になっていると感じました。サビの「何度転んだって 私何度も歌うから 君の声 思い出せれば ほら笑えるんだ」という歌詞も、ファンの人へのメッセージのように受け取れて。

もともとは小説の物語を踏まえて書いていった歌詞ではあるんですけど、書いているうちにやっぱり“君”という存在がファンのみんなの姿と重なってくる部分があって。私自身、日々くじけそうになることもあるけど、それでもやっぱりファンの方がいるから、転んでも立ち上がって走ることができる。だから、これからもみんなと一緒に走ることができたらいいなと、そういう気持ちを込めて歌詞を書きました。小説はミュージシャンを目指してる女の子の話なんですけど、あえて自分と同じような境遇にいる少女を小説の主人公にしたところもあるんです。なので、より自分の思いを歌詞にまっすぐ描きたいという気持ちが強くなったのかなという気もします。

みあ

今回は主人公に“みあ”が立っている

──小説の物語を軸としながらも、みあさん自身の思いに重なるような曲が最近増えていますよね。今年の3月にリリースされたアルバム「邂逅少女」の「幸せのありか」や「春に願いを」もそうでしたし(参照:三月のパンタシア「邂逅少女」インタビュー)。

そうですね。作詞を始めた頃、「ランデヴー」で「感じることも伝えたいこともまだうまく言葉にできないけど」という歌詞を書いたんですけど、その後ファンのみんなと一緒にいろんな歴史を積み重ねていくうちに、言いたいことが楽曲の中で確かな言葉として立ち現れることが増えてきたのかなと思います。

──「アイビーダンス」と「ユアソング」がリスナーの方へのメッセージソングと受け取れるからこそ、今回のシングルは、今までの作品と比べて三月のパンタシアの物語やみあさん自身の心が見える作品になっているなという印象を受けました。

いつもは楽曲の主人公像を決めてから歌詞を書き始めるんですけど、今回はその主人公に“みあ”が立っている。「アイビーダンス」と「ユアソング」はそんな楽曲になりました。

──そういった変化に、昨年素顔を解禁したことは影響していますか?

意図して自分の気持ちを見せるような楽曲を作ろうと思っているわけではなく、制作していくうちにそうなったところはあるんですけど、やっぱり素顔を公開するという大きなタイミングを踏まえて、決意というか、より自己表現を追求したいという気持ちが自分の中でより大きくなっていってる気がします。そうしなきゃと思ってそうなっているわけじゃなくて、状況がそうさせている感じはあります。それは自分でも面白い変化だと思いますね。

──「ランデヴー」について「歌詞を書くとき、なんだか恥ずかしくて、『ここまで書いちゃっていいのかな?』と思う気持ちもあった」とおっしゃっていましたが(参照:三月のパンタシア メジャーデビュー5周年&「幸福なわがまま」配信記念インタビュー)、歌詞を書くにつれて、自分の気持ちをさらけ出すことへの恥ずかしさもなくなっていきましたか?

だいぶなくなりましたね。「サイレン」(シングル「ピンクレモネード」カップリング曲)で初めて作詞にチャレンジしたときは、トラックダウンのチェックに参加しても自分で書いた歌詞を歌っているのが恥ずかしすぎてまともに聴けず、「チェックはみんなに任せます!」って言っていたので(笑)。そのくらい最初は自分の胸の内を言葉にして発信するということに対する気恥ずかしさがものすごく強かったんですけど、気付いたらそこを突破していました。

──小説「多分、私たちひとりじゃない」の主人公をあえて自分と同じような境遇にいる少女にしたというのも、そういったみあさんの中での変化に関係しているんですかね?

それもある気がします。そもそも本当はこの小説は公開するつもりじゃなかったんですよね。

──そうだったんですか?

はい。自分で楽しむだけのものとしてつらつらと書いていて(笑)。最終的には、やっぱりこれまでも小説と連動する形で三パシの音楽を楽しんできてもらったので、今回も読んでもらおうと思ってシングルに封入することに決めました。小説の主人公の設定が自分と近しいっていうのは、人に読んでもらうとなるとなんだか気恥ずかしくて。

──そういう未公開の小説ってけっこうあるんですか? 公開されている分だけでも、みあさんはかなり筆が早い人だなと思っていたんですが。

実はあったりします(笑)。取っておいていますね。

みあ

夏以降、ちょっと違った角度から作品作りをしてみたい

──楽曲の話に戻りますが、みあさん自身の思いがこもった曲でありながら、「ユアソング」というタイトルを付けたことには、どういう思いがあるんでしょうか?

本当にストレートな意味合いなんですけど、「これはあなたのことを思って歌ってる歌ですよ」という。私自身の境遇も歌ってるけど、「マイソング」じゃなくて、「ユアソング」だなって。“君に送りたい歌”という気持ちを込めてこのタイトルにしました。

──特に「ユアソング」では1曲を通して、楽曲のストーリーと連動して、みあさんの歌唱表現が移り変わっていくのを感じました。「無機質な日々の端で生きていた」というAメロは繊細でちょっと陰りみたいなものもあって、“君”が現れたBメロは軽快に弾むような感じがあり、そしてサビでふわっと優しく広がっていくような。みあさんとしてはどういうレコーディングプランを立てて歌っていったんでしょうか?

切なさを抱えながら、それでも前に進んでいくという開けた前向きな楽曲なので、ちょっとキラッとした声質が似合うんじゃないかと思って、明るさを意識して歌いました。でも、Dメロに「それでも本当は 不安で仕方がないんだよ」と弱音を吐くシーンがあるので、そこは前向きなだけじゃなくて、強がっていた自分とのギャップというか、「どうしてもくじけることだってあるんだよ」という思いを歌唱で表現できたらなと思っていました。

──Dメロの吐息のような歌声、とても印象的でした。

ありがとうございます。ああいう箇所は自分の声質が生きるところだなと思うので、より丁寧に録っていますね。実はDメロ以降の最後の部分、「GINZA SIX」さんのCMソングに採用していただいてから書き換えたところがあって。

──そうなんですか?

ラストのサビは、「強くなんてない。でも、君も私も1人じゃない」というようなことを書いていたんです。みんな強くないけど、強がったりしながら日々を生き抜いている。だからこそ生じる寂しさもあると思うけど、孤独であっても私たちは1人じゃないんだよということを伝えたくて。楽曲の根底にはそういう気持ちがあります。

──みあさんとしてはこのシングル、どういう1枚になったと感じていますか?

私はこのシングルを「三パシお得セット」と言っていて(笑)。

──お得セット(笑)。

「四角運命」はロックでソリッドな三パシ。「アイビーダンス」は突き抜けたポップチューンを歌う三パシ。「ユアソング」はこれまでの三パシの文脈を踏まえた、さわやかで出会いと別れの季節を歌った定番の三パシ。三パシのよさを3曲で十分に楽しんで知ってもらえるような1枚になりました。

みあ

──2019年3月にリリースされた2ndアルバム「ガールズブルー・ハッピーサッド」のインタビューで「みあの色というものをもっと深いところまで作品全体に落としていきたいし、三月のパンタシアの中でみあが心臓になって、血を通わせていかないといけない」とおっしゃっていたのが印象的だったんですが(参照:三月のパンタシア「ガールズブルー・ハッピーサッド」インタビュー)、まさにそういう状況になってきているのでは? みあさん自身の思い、メッセージが軸になっている1枚だと感じました。

「ガールズブルー・ハッピーサッド」は自分で書き下ろした小説を軸に楽曲制作をしていくというスタイルを始めた頃で、その頃は「自分の思いはあるけど、これをどう言葉にすればいいんだろう?」ってアウトプットの仕方がわかっていなかったんですよね。試行錯誤する中で小説を書くというのは1つのアプローチだったんですけど、そうやって経験を積み重ねて行く中で、みあの色というのが確立されていったのかなと思います。

──2022年夏以降、デビュー7年目の三月のパンタシアはこれからどうなっていきますか?

今年は3月にアルバムを発表して、それからすぐにこのシングルをリリースしたりと充実した日々を送っているんですけど、夏以降、またちょっと違った角度から作品作りをしてみたいなと考えていて。三月のパンタシアの新しいスタイルというか。試行錯誤しつつになるとは思うんですけど、実のある作品作りにチャレンジしていきたいです。いろんなチャレンジを続けていくというのは、1つの物事を続けていくうえで、やっぱりすごく大事なこと。そこで得られる刺激や発見を、いい作品として昇華していきたいなと。新しい物語を紡いでいく三月のパンタシアの姿を、ぜひ見ていてもらえたらうれしいです。

プロフィール

三月のパンタシア(サンガツノパンタシア)

「終わりと始まりの物語を空想する」をコンセプトに、ボーカルのみあを中心に結成されたプロジェクト。2015年8月に活動を開始し、2016年6月にシングル「はじまりの速度」でメジャーデビュー。2018年8月にはみあが書き下ろした小説とイラストレーターのダイスケリチャードが手がけたイラスト、クリエイター陣による楽曲を連動させたプロジェクト「ガールズブルー」が始動した。2019年3月に「ガールズブルー」を軸に思春期の女の子の感情を描いた2ndアルバム「ガールズブルー・ハッピーサッド」をリリース。その後も小説、イラスト、楽曲を掛け合わせて独自の世界観を築き上げ、2020年9月に3rdアルバム「ブルーポップは鳴りやまない」をリリースした。7月に両A面シングル「101 / 夜光」と、みあによる初の長編小説「さよならの空はあの青い花の輝きとよく似ていた」を発表。11月に東京・チームスマイル・豊洲PITで行ったワンマンライブ「三月のパンタシア LIVE2021『物語はまだまだ続いていく』」で素顔を解禁した。2022年3月に4thアルバム「邂逅少女」をリリースし、大阪・なんばHatchと東京・Zepp Haneda(TOKYO)でワンマンライブを開催。6月にシングル「四角運命 / アイビーダンス」をリリースした。