PassCode|人が変わっても、やることは変わらない 作り話みたいな激動の2021年

関西弁がひどくなりました

──有馬さんは加入後、すぐに3人と馴染めましたか?

 (有馬に)なんか、馴染んでるな。

有馬 (無言でにっこり)

大上 でも最初は、一番歳上の高嶋のことを「楓さん」とか呼んでて(笑)。メンバー内でさん付けは初めてだったんで、「大丈夫かな? 馴染むまでに時間かかるかな?」と思ってたんですけど、わりとすぐ「楓ちゃん」と呼ぶようになったし、口調もタメ口になってきました。今は普通に同年代の女の子としてお互いに接していますね。

高嶋 えみりちゃんとは5歳くらい違うんですけど、私はメンバーのことを年齢で見たことなくて。特に南はめちゃくちゃ精神年齢高いし、どっちが年上とか意識せずに接しているんですよ。だからすごく居心地がいいですね。……あれ? これ私の話やった(笑)。

──(笑)。有馬さんご本人の感覚としてはどうですか?

有馬 PassCodeに入ってから、めっちゃ関西弁がひどくなりました(笑)。4年くらい前に上京してきて、だいぶ標準語になってきてたんですけど、やっぱり関西の子たちとしゃべってると戻りますね。言葉に関してはすごく快適です。

一同 あははは。

──途中加入ということで、曲を覚えたりシンプルにやることが多くて大変だと思いますけど、そのあたりに関しては?

有馬 シャウトは7年間やっていたので、そこに関してはそんなに問題なかったんですけど……ダンスとかはちょっと大変でしたね。

 大変そうやったな。

大上 特に、PassCodeの曲って「1曲の中に何曲分詰め込まれてんねん」というくらい構成が複雑で、振り付けも繰り返す部分があまりないんですよ。振りの種類はもしかしたら普通の曲の何倍もあるんじゃないかと思うくらいなので、「複雑でごめん」と思いながら教えていました(笑)。

高嶋 振りはELEVENPLAYのKOHMEN先生に付けていただいているんですけど、先生の振り付けは体のラインとか手の形、指先までこだわっているんで、余計に難しいやろうなと。私たちも最初、先生のダンスが体に馴染むまですごく苦戦した思い出がありますし。それを1カ月で15曲とか体に入れるわけやから……。

──皆さんから見て、現状の有馬さんのダンスには及第点をあげられる感じですか?

 よくがんばっていると思いますよ、本当に。でも厳密に言うなら、今はまだ振りを覚えて無理やり体を動かしている段階で。単なるモーションとして決まった動きをするんじゃなくて、ダンスとして表現できるようになったら、えみり自身が気持ちよく踊れるようになると思います。今のダンスを見る限りでは、たぶんそうなるのは早いだろうなと思いますね。

大上 思った以上にできているから、こっちも求めるレベルが上がっちゃうところはありますね。

有馬 今はまだ、みんなに付いていってなんとかなっている感じです。

──有馬さんの加入は、PassCodeにいい作用しかおよぼしていないように見えます。必要なパーツがしかるべきところに収まったことで、「安心してアクセルを踏める」みたいな心理状態なんじゃないかなと想像しているんですけども。

 別に、前と変わらんよな。

高嶋 うん。

 よく「変わりましたか?」みたいに聞かれるんですけど、やっていることは変わらないんです。もちろん人は替わったけど、目指すのはいつのときも「PassCodeをよくしていくこと」だけなんで。今が完成形だとも思っていないですし、安心している、というのもちょっと違うような気がしますね。

──なるほど。今回はたまたま有馬さんという適任が見つかったけど、最悪そうならなかったとしても進んでいくことに変わりはなかったと。

 どうにかして3人でもできる方法を考えていたと思います。

──最高から最悪までいろんなパターンがあり得た中で「たまたま一番いい形になっただけ」というような感覚ですかね?

 そうですね。自分たちもですが、どちらかと言うと見てくれている人にとって一番いい形というか。「PassCodeが続いていくには、それしかなかった」と思ってもらえているんじゃないかな。

作り話みたいですよね

──そして今回、新体制初のシングル「Freely / FLAVOR OF BLUE」が完成しました。新生PassCodeの新たな出発点としてふさわしいシングルになりましたね。

 そうなんですけど、実は「Freely」も「FLAVOR OF BLUE」もこの体制になる前からシングルとして出すことが決まっていた曲で、「新体制のタイミングでこの曲を」という感じで制作したわけでもなかったんですよ。どちらかと言うと「曲に状況がついてきてしまった」という感覚のほうが強くて。特に「Freely」は歌詞がまったく変わっていなくて、状況が変化していくにつれてどんどん意味を持っていったんです。こういう偶然が重なることってあるんだなと思いました。

──そうだったんですか。てっきり「新生PassCode、これで行くぞ!」と宣言するために作られた曲なんだとばかり思っていました。

 ぽいですよね(笑)。

高嶋 今やっているツアーでは、「Freely」を1曲目に歌っているんですよ。結果的にはたまたまなんですけど、まさに「今のPassCodeはこんな感じだよ」ということを表現できる曲になっているので、これが新体制のスタートの曲になってよかったですね。

──曲が以前から決まっていたということは、レコーディングをやったのもけっこう前だったんですか?

 前の体制で録ったのは、5月とか6月とかだったかな。春頃だった気がしますね。

──3人のボーカルトラックは、そのときのものをそのまま使っている?

 「FLAVOR OF BLUE」は歌詞とかにいろいろ変更があったので、えみりが録るタイミングでみんなも録り直したんですけど、「Freely」に関してはそのままですね。だから、ライブでは「今のPassCodeをそのまま表現している曲だ」と感じながら歌っているんですけど、録ったときはそこまで歌詞に強い思い入れがあったわけでもなくて。本当にバックグラウンドがあとからついてきた感覚ですね。

──お話を伺っていると、有馬さんの件も含めていろいろとできすぎていますね(笑)。映画のストーリーを聞いているような感覚になってきます。

 作り話みたいですよね(笑)。

──ここ最近のシングル曲は、「ATLAS」や「STARRY SKY」のように聴きやすいメロディアスな楽曲が続いていましたが、今回はゴリゴリのラウド曲ですよね。これも新体制だからこその原点回帰だろうなと信じて疑わなかったんですけど、そうではないと。

 たまたまです(笑)。最近のPassCodeは、今までやってきたことをブラッシュアップして積み上げていくという流れが強くなってきていたし、その一環というか。耳馴染みのいいメロディを歌ってきたからこそ、今回のサビメロをより印象的に表現できているというところはあると思います。

大上 最初にえみりちゃんが入ると決まったとき、平地さんからは「体制が変わるんやったら、もうちょっと聴きやすい曲のほうがいいんかなあ?」みたいな相談もあったりしたんですけど。

 平地さんは新体制に対してちょっと構えすぎていたところがあって。「ラウド要素がそこまで強くない『Ray』(2018年5月発表のメジャー3rdシングル)っぽい曲のほうがいいんじゃない?」と言われたんで、「いや、違います」と答えました(笑)。ここで聴きやすい曲にして、取って付けたようなメッセージを歌っても、きっとファンの方には響かないから。今後そういう曲が意味を持つタイミングも来るとは思うんですけど、今じゃないと感じたんですよね。「それだったら、えみりが武器としているシャウトを存分に生かせるこの曲を出すべきだと思います」と言ったら、「やっている人間がそう思うんやったら、きっとそれが正解なんやろな」という話になって。

大上 結果、ライブでも今の自分たちに馴染んでいるので、本当にそのままの2曲で出してよかったなと思っています。

──どっちがプロデューサーだかわからないようなエピソードですね(笑)。

 平地さんはそういうふうに、メンバーの意思をすごく尊重してくれるプロデューサーなんですよ。平地さんだけじゃなく、ユニバーサルも事務所もライブ制作のチームも、たぶんほかのグループではあり得ないくらいメンバーに意見を求めてくれる人たちで。

──それこそ前回のインタビューでは、「チーム全体でPassCodeだ」というお話もされていましたしね(参照:PassCode「STRIVE」特集)。

 そうですね。意見を言いやすい環境でやらせてもらえているのは、すごくありがたいなと思っています。

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有馬えみり最強説