音楽はお金かけずに作るものという精神でやってた

──レコーディングでは必ず平地さんが立ち会っていろいろと指示するんですか？

平地　そうですね。すべてやってます。

南　最初のレコーディングなんて平地さんの汚い部屋でやりましたから。

平地　汚いって（笑）。一応作業部屋ね。

南　最初に行ったときは「ホンマにもうちょっと片付けてくれたらいいのに」ってくらい散らかってて、部屋中にCDとかが散乱してる中でレコーディングしました。

平地　「ALL is VANITY」を録ったときは事務所の作業部屋だったんですけど、まだ録音環境が整ってなくて僕が作業してる後ろにマイクスタンドを立ててやってました。ボーカルトラックだけで聴いたら隣の部屋の雑音が入ってるレベルでレコーディングしたのが「ALL is VANITY」。

一同　あはははは（笑）。

──僕も一度事務所に伺ったことがあるんですけど、あの環境でレコーディングをやっちゃうのはすごいですね……。

南　今考えてもホンマにやばい。

平地　音楽はお金かけずに0円で作るもの、という精神でやってました（笑）。

南　「アスタリスク」とか「XYZ」のMVは、ホンマにどれだけお金かけへんかが勝負でしたよね。平地さんがMVの絵コンテとか小道具も全部作ってた。

平地　なんでもやってました（笑）。

南　全部手作りで小道具に色を塗ったりしてて。「平地さん、何してるんですか？」って聞いたら「次の曲のMVで使うんや」って（笑）。だから作曲もしてるけどそういうレベルの話じゃなくて美術もなんでもやってましたね。

平地　本当になんでもやってました。MVでも僕がカメラを回して編集もやるレベルだったんですけど、だんだんといろんな人が関わってくれるようになって僕は音楽に専念できるように。まあそれが本来あるべき姿なんですけど（笑）。

南　私たちは小さい事務所からできたグループなので、そう考えたら何もないところからスタートしてメジャーデビューもさせてもらって。ホンマに夢があるなって思います。

今より何かを変えたくてラウドロックへ

──初期のPassCodeの楽曲はもっとアイドル寄りなサウンドでしたよね。

平地　そうなんですよ。AKB48さんが売れてるからこういうタイプの楽曲を作ればいいと思ってノリで作ってました。でも「アイドルとはこういうものだ」みたいなことをまったくわかってない状態でしたね。

──それがあまりしっくりこなかったと。その辺のお話は前回のインタビュー（参照：PassCode「VIRTUAL」インタビュー）でも話してもらいましたね。

平地　そのときの方向性だと結果が伴わなかったんですけど、どうしたらいいのかわからずで。

──その後ラウドロック系に方向転換しようと思ったのは何かきっかけがあったんでしょうか？

平地　僕や最初からグループにいた南は、「このままやってても仕方ないな」っていうのは薄々感じていて。どこかのタイミングで方向転換しないといけないと考えてたんですけど、当時いろんなアイドルが熱いライブをやってるのを見て、どうしたらお客さんも一緒になって熱いライブができるんだろうって考えたんです。それで南に相談したんですよ。

南　「どんな曲やりたい？」って聞かれたので、そのときに個人的に好きだったロックバンドとかを平地さんに薦めてみて。でも最初は「ちょっと重すぎる」って言われたんですよ。「重すぎるかな？ まあアイドルやしな」って納得して。それから半年後くらいにラウドな「アスタリスク」ができあがったという（笑）。「もっと重くなってるやん！」って。

平地　南に相談したときは個人的にも方向性に迷ってる最中でいろいろ葛藤があったんです。アイドルですから「ラブラブ」とか言ってるほうがいいんちゃうかなとか。

──確かに。

平地　新メンバーを入れてガラッと方向性も変えていきたいという時期ではあったんですけど、今田、高嶋が入ってきてからもとりあえず以前のアイドル楽曲で練習してもらってました。そんな中でも迷いながら昔バンドでやっていたような方向もありなんじゃないかと思い始めて、振り切ってみようかなと。ただ当時アイドルっぽい方向性で活動してた際に応援してくれてたファンの皆さんが悲しい思いをするんじゃないかというのはすごく心配しました。

──新しい方向性に行くために、いろんなものを断ち切る必要があったわけですね。

平地　ファンが離れてしまう可能性もあったし、いろんなところから嫌われることもあるだろうなという覚悟はありました。でも「今より何かが変わるのであれば」という気持ちがあって。

僕が第一のお客さんにならないとアカン

──大上さんはある程度できあがってる状態のPassCodeに入ってきたわけじゃないですか。シャウトとかするグループのことをどう思いましたか？

大上　私、PassCodeのお話をもらったときに最初に聴いたのが「Nextage」だったんですよ。

南　またかわいらしい曲から聴いたのな。

大上　なんかピコピコして「ちょっと新しい感じでかわいい！」って思ったんですよ。で、いいかもって思って。

平地　それ、罠やねん（笑）。

大上　シャウトしてるのもMVとかで観たんですけど、女の子がやってることがまず信じられなくて。「これ、自分が入ったらどうなってしまうんやろ？」と想像がまるでできなかったです。作曲の方も会ってみたらなんか若くてチャラいし。アイドルグループに入るって話だったはずなのに「これ、あってますか？」みたいな（笑）。

平地　あはははは（笑）。

──紆余曲折ありましたけど、平地さんとしてはこの4人のバランスはどうですか？

平地　結束力が固まってきましたし色が完全に出てきましたよね。普通の女の子たちでしたけどバンドサウンドで激しいものにも対応してくれていて。でも僕はやっぱり激しいだけじゃなくて「オレンジ」みたいな普通の楽曲も用意して、メンバーの等身大の感情が出せる余地を残してます。そういう楽曲を聴いたときに「ああ、やっぱり普通の子らやん」って思ってもらいたいというか。「激しいだけじゃなくて、こういう一面ももちろん持ちあわせてるんやで」って感じてほしいなと。

──メンバーの個性を見て、ライブ中に何をさせるかを考えてるのも平地さんですか？

平地　はい。昔だったら「みんなで歌おうぜ！」みたいなものが多かったんですけど、最近では4人の色が出てきたので曲を作るときにライブを想定して「ここでこんなことやらせたいな」とか考えながら作るようにしてますね。昔はそこまで考えながら曲は作ってなかったです。

──皆さんの特徴を捉えながらパートを決めていくんですね。

平地　ライブで観る分には4人のそれぞれの個性ってわかりやすいと思うんですけど、CDだけで聴いたときにどうやったら個性が出せるかなっていうのはいつも悩んでますね。あと曲作りに関してはやっぱり僕が第一のお客さんにならないとアカンと思っていて。転調で楽しむ要素を入れ込むことに重きを置いてます。