Tom-H@ckが参加する2つのユニットが立て続けにシングルを発表。OxTが1月に「Number One」「GO CRY GO」をリリースし、MYTH & ROIDの「HYDRA」が2月7日に発売された。
音楽ナタリーではTom-H@ckと、OxTのボーカリストであるオーイシマサヨシ、MYTH & ROIDのボーカリストであるKIHOWの3人を迎え、2グループの合同取材を実施。3人から話を聞きながら両グループの今の立ち位置を明らかにし、それぞれが今後どこに向かうのかを探った。
取材・文 / 須藤輝 撮影 / 竹中圭樹(D-CORD)
ホントに気持ち悪い男だなと
──このたび、OxTとMYTH & ROIDという、いずれもTom-H@ckさんが関わっているユニットが近いタイミングでニューシングルをリリースしました。そこで今回は、Tom-H@ckさんにとっての両ユニットの位置付けや、それぞれの目標とするものなどを軸にお話を伺えればと思います。
Tom-H@ck 今日の僕、どんだけ主役なんですか。
オーイシマサヨシ だってさ、僕がMYTH & ROIDのこと語り始めたらちょっと違うでしょ?
──いや、それも大いにアリです。オーイシさんとKIHOWさんから見たTom-H@ck像についてもお聞きしたくて。
KIHOW ご本人を前にですか。恐れ多いですね。
Tom-H@ck でも、両ユニットの目標みたいな話だったら、一瞬で終わっちゃうかも。と言うのも、僕は「自分と関わってくれた人がみんな幸せになってくれたらいいな」と思っていて。要はそれぞれのボーカリストが人気になればOKっていう。
オーイシ これね、Tomくんは一貫して言ってるんですよ。僕が彼と出会ったのが5年ぐらい前なんですけど、当時からまったく同じこと言っていて、ホントに気持ち悪い男だなと。
一同 ははは(笑)。
オーイシ しかも本気で言ってるんですよ。普通だったら「幸せになってほしい」と言ったとしても、相手がバカ売れしたりしたら「こいつ思った以上に幸せになりやがったな」とか「俺、そこまで幸せになれって言った覚えはないんだけど?」的な嫉妬心が芽生えてもおかしくないじゃないですか。でもTomくんにはそれがないから、ちょっとイラッとするんですよね。
Tom-H@ck なんなのさっきから「気持ち悪い」とか「イラッとする」とか。
KIHOW あはは(笑)。
オーイシ でも、やっぱりそういう部分が彼の求心力につながってるのかなあって。KIHOWちゃんも言われたんじゃない?
KIHOW はい。「人気になってほしいんだよね」って。もちろん“プロデューサーとして”っていう意味合いも含んでいると思うんですけど、正直、直接言われたときは驚きましたね。
──でしょうね。誰かから「幸せになってほしい」とか、少なくとも僕は言われたことはないですし。
オーイシ 言われてみてください。けっこう気持ち悪いっすよ(笑)。
アメリカで「お前、MYTH & ROIDだったのか!?」って
──両ユニットの相方に対する思いは共通しているとは言え、ユニット自体のあり方は明確に違いますよね。まずMYTH & ROIDは、単なる音楽ユニットではなく、総合芸術的な表現を目指してらっしゃる。その中でTomさんの立場はプロデューサーであり、全体を統括するような役割を担われていると思われます。
Tom-H@ck はいはい。
──片やOxTはもっとバンド的と言うか、あえて言うならTomさんは2人編成のバンドの2分の1みたいな位置付けなのかなと。かつ、そこでのお二人の力関係は対等である……という言い方は語弊があるかもしれませんが。
Tom-H@ck でも、わかりやすくいうとそういうことですね。実際、OxTは自分1人で1から10まで作ろうとは思ってないし、オーイシさんの才能に感化されたりして、相互作用で化学反応が起こることもあるので。そういう意味では、オーイシさんと初めてご一緒したのは2013年、「ダイヤのA」というアニメの主題歌「Go EXCEED!!」(当時は「Tom-H@ck featuring 大石昌良」名義)なんですけど、それから現在に至るまでに、OxTのユニット像みたいなものはブレにブレてるんですよ。
オーイシ いい意味でね。
Tom-H@ck そうやってブレた結果着地したのが、オーイシさんの言葉を借りれば“遊び場”なんですよね。要は、そんなに気を張らずに、楽しんで音楽を作れる場所。それが現在のOxTです。そうなることは想定していなかったんですけど、最終的にお互いが気持ちいいところに着地できたのは、やっぱり最初に言った「幸せになればいい」っていう目標があったからだと思うんですよね。そこを目指すための方法はなんでもいい、みたいな。
オーイシ あとOxTはさ、世間的な見え方としては、Tom-H@ckとオーイシマサヨシの連名感が強いというか。お互いのネームバリューを前面に出してた感じだよね。
Tom-H@ck そうですね。正式にOxTとして稼働し始めた当時は、クレジットされるとき「OxT」の後ろにわざわざ「オーイシマサヨシ×Tom-H@ck」って入れてもらってましたからね。
オーイシ カッコ書きでね。片やMYTH & ROIDは、覆面ユニットじゃないけど、中の人のキャラクターを打ち出すことはせずに、ユニットとしてのアーティスト性が認知されてる感じがしますね。
Tom-H@ck 僕がやってるっていうのを知らない人も多いと思う。
オーイシ そうそう。以前、OxTがアメリカのイベントに呼ばれて、現地のプレスから取材を受けたことがあって。そのときにすごく面白かったのが、2人で1時間くらいしゃべったあと、締めにTomくんが「僕はMYTH & ROIDっていうユニットもやってるので、そっちでもアメリカに来たいですね」ってコメントしたら、プレスの方が「You!?」ってめっちゃ驚いてて。
一同 ははは!(笑)
Tom-H@ck 「お前、MYTH & ROIDだったのか!?」ってね(笑)。
ビヨンセの「Listen」で勝ち取らないと意味がない
──KIHOWさんは、MYTH & ROIDの1stアルバム「eYe's」で数曲ボーカルを担当されていましたが、シングル曲を歌うのは今回の「HYDRA」が初。かつ、本作には2代目ボーカリストとしてのKIHOWさんのお披露目的な意味もあるかと思われます。なので音楽的なバックグラウンドについて伺いたいなと。まずベタな質問ですが、音楽を好きになったきっかけは?
KIHOW 小さい頃から特別たくさん音楽を聴いていたわけではないんですけど、歌うことがとにかく好きで、気が付いたらいつも歌っているような子だったんです。なので、自分で言うのは気恥ずかしいんですけど、音楽を好きになったのは自分の歌が好きだったからです。
オーイシ いいじゃない。いくつぐらいのときに歌手になろうと思ったの?
KIHOW ぼんやりと歌手が素敵な仕事だとは子供のときから感じていましたが、本気で仕事にしたいと思い始めたのは、16歳ぐらいだと思います。
──そのとき目標にしていた、あるいは憧れていた歌手はいました?
KIHOW 発声に関しては、当時はビヨンセの歌に近付きたくて必死になってましたね。私はビヨンセの「Listen」という曲を聴いたことがきっかけで洋楽をしっかりと練習するようになって、ここぞというときは絶対にその曲を歌ってきてるんです。もう「この曲で勝ち取らないと意味がない」と感じるくらい思い入れの強い楽曲で、MYTH & ROIDのオーディションでも歌わせていただきました。
──MYTH & ROIDのことは、どうやって知ったんですか?
KIHOW 実はMYTH & ROIDのオーディションは、ユニット名を伏せて行われていたんです。で、最終審査まで進んでから「やってみないか?」というお話をいただいて、そのときに初めて知りました。オーディションを受けた理由は、まず必須条件として「英語での歌唱」というのがあって、自分の強みを生かせると思ったから。それから、Tomさんが作曲してくださることは知らされていて、Tomさんの音楽と自分の歌が合わさったらどうなるのかっていう興味があったからです。
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タイアップのたびに個性がなくなって、結果売れない
- MYTH & ROID「HYDRA」
- 2018年2月7日発売 / KADOKAWA メディアファクトリー
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初回限定盤 [CD+Blu-ray]
1944円 / ZMCZ-11852 -
通常盤 [CD]
1296円 / ZMCZ-11853
- CD収録曲
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- HYDRA(アニメ「オーバーロードⅡ」エンディングテーマ)
- Stormy Glory
- HYDRA(instrumental)
- Stormy Glory(instrumental)
- 初回限定盤Blu-ray収録内容
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- 「HYDRA」Music Clip
- OxT「GO CRY GO」
- 2018年1月24日発売 / KADOKAWA メディアファクトリー
-
初回限定盤 [CD+Blu-ray]
1944円 / ZMCZ-11850 -
通常盤 [CD]
1296円 / ZMCZ-11851
- CD収録曲
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- GO CRY GO(アニメ「オーバーロードII」オープニングテーマ)
- THE SAILER
- GO CRY GO(instrumental)
- THE SAILER(instrumental)
- 初回限定盤Blu-ray収録内容
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- 「GO CRY GO」Music Clip&オフショット映像
- OxT「Number One」
- 2018年1月17日発売 / ポニーキャニオン
-
[CD]
1300円 /PCCG-70415
- 収録曲
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- Number One(舞台「ダイヤのA The LIVE V」主題歌)
- HOME GROUND(舞台「ダイヤのA The LIVE V」挿入歌)
- Number One(KARAOKE)
- HOME GROUND(KARAOKE)
- OxT(オクト)
- Sound Scheduleのボーカル&ギター・大石昌良ことオーイシマサヨシと、サウンドプロデューサーのTom-H@ckによる2人組ユニット。2013年にアニメ「ダイヤのA」のオープニングテーマ「Go EXCEED!!」を“Tom-H@ck featuring 大石昌良”名義でリリースしたのを契機に2人での活動をスタートさせ、2015年にOxTの名で正式にユニットとなった。同年8月にはアニメ「オーバーロード」のオープニングテーマとして「Clattanoia」を発表。2018年には1月17日に「Number One」、1月24日に「GO CRY GO」と2週連続でシングルをリリースした。
- MYTH & ROID(ミスアンドロイド)
- プロデューサー&コンポーザーのTom-H@ckを中心にしたクリエイターユニット。2015年8月発売の1stシングル「L.L.L」がテレビアニメ「オーバーロード」のエンディングテーマとして話題を呼んだのを皮切りに、「ブブキ・ブランキ」のエンディングテーマ「ANGER/ANGER」、「Re:ゼロから始める異世界生活」のエンディングテーマ「STYX HELIX」、同オープニングテーマ「Paradisus-Paradoxum」、「幼女戦記」のオープニングテーマ「JINGO JUNGLE」と次々にアニメソングをヒットさせる。活動当初は女性シンガーのMayuがボーカルを務めていたが、2017年4月発売の1stアルバム「eYe's」以降、複数のボーカリストを含む多ジャンルのクリエイターが参加するプロジェクトへと進化。2018年2月にはKIHOWがボーカルを担当したシングル「HYDRA」をリリースした。