osage「マイダイアリー / 透明な夏」インタビュー|変わり続けることで見える、さらなる未来 (2/2)

今しか歌えない曲を歌いたい

──2曲目の「透明な夏」はどのように生まれた曲ですか?

山口 5月に行った山中湖での制作合宿で生まれた曲です。2泊3日の期間中にフリースタイルでセッションをしたりしたんですよ。テーマを決めずにとりあえずみんなで音を鳴らしてみる、みたいな。この曲はわりとそのときの空気感がパッケージされていて……たぶんほとんど変わってないよね?

金廣 うん、変わってない。

──こういう作り方をしたことは、今までにもありましたか?

田中 意外となかったですね。うちの場合、山口からデモをもらったあと、メンバーそれぞれ自分のパートを練っていくんですよ。だけどこの曲は合宿でなんとなく録った仮音源からフレーズを大幅に変えていない。5月の時点での手癖とか、自分から無意識に出てくるものがそのまま音源化されたような感じなんですよね。

クサマ あまり手を加えすぎてしまうと人工物っぽくなっちゃう気がしたので、現場の生々しさをなるべく残すことを意識しました。

田中 瞬発的に出したものがそのまま音源にできるくらいクオリティの高いものであるということは、成長したということなのかもしれない。

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金廣 昔の自分だったら、4人でパッとセッションしても何も弾けなかったと思うんですよ。だけどこの曲は、すごく納得のいく仕上がりになって。サビのアルペジオのリフレインとか、パワー系だけど切なさもあるソロのフレージングとか、自分の根底にあるアプローチが入れられた手応えがあります。

クサマ 歴を重ねて各々のスキルが上がったのと、お互いの考えていることがだいぶわかるようになってきたからこそ、こういう作り方ができるようになったのかもしれないです。

田中 確かに。前は「ここはもっとこうしたほうがいいんじゃない?」「ああ、なるほどね」みたいなやりとりがメンバー間であったんですよ。だけど今は「やっぱりそうくるよね」という感じだから、レコーディング中もそんなにしゃべらなかったような……。録って、「いいね」って言い合ってたら終わっちゃった、という感じでスムーズでした。

──歌詞はどのようなことを考えながら書きましたか?

山口 思い出を過去に“置き忘れる”のではなく、“あえて置いていく”ことについて歌いたいなと思いました。初めて行った花火大会のデートで、2人で見上げた花火の美しさって、その先どんなに美しいものを見ても超えられないと思うんですよ。花火がきれいに見えたのは、あのときの自分だからこそであって、同じ花火を今の自分が見たとしても、きれいだと思えるかはわからない。同じように「花火がきれいだった」という思い出が美しく感じられるのは、その思い出が今の自分に必要だからで、必要がなくなったら思い出すことさえもなくなっていく。自分自身はどんどん変わっていくわけだから、「あの頃の気持ちを思い出したい」「あの日に置いてきた思い出を取り戻したい」と思っても、それが叶うことはないんじゃないかと思うんですよね。

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──そうですね。

山口 だけどそれはネガティブなことじゃない。こちらが変わっていくというだけで、あのとききれいに見えたものはちゃんときれいなまま、そこにあり続けるんだと思うんです。メジャーデビューすれば、僕らがどれだけ「変わらないでいよう」と思っていても、必ず、どこかしら変わっていってしまうと思っています。過去に置いていくものがきっとあると思う。だけどその美しさは変わらないというか。そう信じられているからこそ、これからもっと変わっていけるんじゃないかという今の心境を歌詞に忍ばせたかったんです。レコーディングのタイミングではこの曲がメジャーデビューシングルに収録されると決まっていたので、だったら今しか歌えない曲を歌いたいなと。

──この曲がosageにとっての“美しい花火”なのかもしれないですね。バンドで鳴らす音楽も、1人ひとりの価値観や考え方も変わっていくだろうけど、今のバンドの状態や心境をパッケージしたこの曲を、今の自分たちは確かに美しいと感じている。そしてこの曲は音源としてずっと残る。

山口 今書きたいことを書いたので、10年後の自分たちが聴いたら恥ずかしく思うかもしれません。変化=成長とは限らなくて、例えば感性が鈍くなってしまうようなこともあると思います。だけど自分の変化をできるだけ悲しいと思わないように、寂しいと思わないように、いろいろな経験をしていきたい。その時々の感覚をちゃんと言葉にしていくこと、この4人で揉んで形にしていくことをあきらめずにやっていきたいです。そういう決意表明の歌ですね。

「仲間が増えた」という感覚が強い

──メジャーレーベルでの活動を始めてみて、どんなことを感じてますか?

クサマ 「仲間が増えた」という感覚が強いです。意見を言いづらいということも一切なく、いい雰囲気でやれていて。僕らはすごく幸せだなと感じています。今回「君恋」と一緒に「マイダイアリー」を作ったのがすごく新鮮だったんですよ。自分たちだけで作りたいように作るのもいいけど、違う作品のことを思ったり考えたりしながら作ることで、自分たちにはない引き出しを出せた感覚があったので。これから先もこういうことができたら楽しそうだし、バンドの可能性も広がりそうだなと。

田中 タイアップもそうだけど、アレンジャーさんと一緒に作品作りをするのも楽しくて。自分たちの勉強のために、いろいろなアレンジャーさんたちとの制作を経験してみたいですね。

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──10月から東名阪ワンマンツアー「Brand New AGE 2024」が開催されます。最後に、ツアーへの意気込みを聞かせてください。

クサマ 音源とライブのギャップはosageの強みの1つなんじゃないかと僕は思っていて。ライブハウスじゃないと感じ取れないものをぜひ体感してほしいです。

田中 前回の「ENSEMBLE TOUR 2024」で成長できたので、このツアーでさらに成長できる気がしています。ツアーファイナルはWWW Xということで7月と同じ会場だけど、また全然違うワンマンになるんじゃないかなと。

金廣 メジャーデビュー後一発目のツアーなので、全カ所ソールドアウトさせたいです。いや、させます!

クサマ いいね。大きく出たね!

山口 カッコいいライブをするので、安心して来てください!

ツアー情報

osage東名阪ワンマンツアー“Brand New AGE 2024”

  • 2024年10月19日(土)愛知県 ell.SIZE
  • 2024年10月20日(日)大阪府 Music Club JANUS
  • 2024年11月3日(日・祝)東京都 WWW X

プロフィール

osage(オサゲ)

山口ケンタ(Vo, G)、金廣洸輝(G)、ヒロクサマ(B)、田中優希(Dr)からなる4ピースバンド。下北沢で結成され、2017年春より精力的に活動を始めた。2018年10月にmurffin discsによる新人オーディション「murffin discs audition 2018」でグランプリを受賞。2019年4月に初の全国流通盤「ニュートラルe.p」をタワーレコード限定でリリースした。2023年2月に初のフルアルバム「23=」を発表。9月にドラマ「君となら恋をしてみても」のエンディングテーマ「夜煩い(feat. 石野理子)」を配信リリースした。2024年2月にミニアルバム「ENSEMBLE CAST」を発表し、6月から全国ツアーを開催。8月にシングル「マイダイアリー / 透明な夏」でソニー・ミュージックレーベルズからメジャーデビューを果たした。10月より東名阪ワンマンツアー「Brand New AGE 2024」を行う。